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忘年会をやるべきか、やらないべきか――。メーカー勤務の 竹内直樹さん(40歳・仮名) は、10人の部下を抱える中間管理職。忙しい業務の合間に準備を進めつつ、家では妻から「お気楽でいいわね」と嫌味を言われ、心が折れかけていました。「もう来年はやらなくてもいいのかな」と思い始めた矢先、ある女性社員の言葉、そして若手社員からの感謝のひと言で、竹内さんは“働く人それぞれの事情”に気づいていきます。

忘年会をやるべきか、やらないべきか? 揺れ続けた去年の秋

メーカー勤務の 竹内直樹さん(40歳・仮名) は、10人の部下・後輩を率いるチーム長です。年収700万円。上の期待も部下の本音も受け止めながら働く、まさに“板挟み世代”の真ん中にいます。

そんな竹内さんが、今年の忘年会をどうするか考えていたとき、ふと 去年の今頃に起きた出来事 を思い返したといいます。

昨年の秋、竹内さんの頭を悩ませていたのは「忘年会を本当に開催すべきか」 という問題でした。

「今どき忘年会ってどうなんだろう……。若手も増えてきたけれど、みんなが喜ぶわけじゃないと思うと悩んでしまって」

「ホットペッパーグルメ外食総研」が20代〜60代の男女1,035人を対象に「忘年会」についてアンケート調査をしたところ、会社の忘年会に「参加したい」人は全体の36.9%でした。ただ、若手のほうが参加意欲が高い傾向に。
 

会社からの補助も出ることと、竹内さんの上司から「今年はどうするんだ? 楽しみにしてるぞ。ガハハ」と声を掛けられたこともあったので、あくまでも希望者のみということで開催することになりました。

業務の合間の手配は「本業以上に疲れた」

忘年会準備は、毎日の隙間時間で進めました。

・メンバーのアレルギー調査
・料理の希望の回収
・18時開始〜21時解散で店を選定
・会社補助の申請
・出欠確認
・お店の確保

「ただでさえ忙しいのに業務の隙間で調整するので、正直……本業より疲れました。幹事ってこんなにやることあるのか、と痛感しましたね」

そこへ、妻の優子さん(38歳・仮名)が言ったひと言。

「あなたはそれが仕事になるなんていいわね。飲み会の準備で“忙しい”なんて言われても……お気楽でいいわね」

心に刺さる嫌みでした。

妻の視点は?

優子さんは事務職として働きながら、帰宅後は夕食づくり・洗濯・子どもの宿題チェック……と“第二のシフト”が待っています。

「夫は良い人だけど、家のことは“言わないとやらない”タイプ。私が仕事と育児でいっぱいいっぱいなのに、『忘年会で忙しい』と言われたら……でも夫もいっぱいいっぱいなのはわかっていたので、あれでも抑えたつもりです」

妻にも妻の“積み重なる疲れ”があったのです。

「来年はもう、やらなくてもいいのかな」と思ったものの…

理解されない疲労に揺れた気持ち。妻に嫌みを言われた夜、竹内さんはふと考えました。

「来年はもう、やらなくてもいいのかな」

忘年会文化は薄れつつあり、ランチ会も増えています。“正解のないイベント”になりつつあるのを痛感しました。

しかし、忘年会が来週に迫った12月の始め、ある女性社員が静かに言いました。

「随分前から告知してくださっていて、ありがとうございます。普段話せない人とも話せるし、本当はすごく嬉しかったんです。でも夫に『子どもはどうするの?』と言われてしまって……。うちはまだ子供も小さいし、実家も遠いし、シッターさんも迷ったんですが『そこまですること?』と思ってしまって。結局参加は難しいですが、配慮していただけて救われました」

その言葉に竹内さんはハッとしました。

「……そういえば、うちの妻は会社の忘年会に行けているんだろうか?」

迎えた当日、若手のひと言で救われた

忘年会当日。18時開始で会は和やかに始まりました。そんな中、20代の後輩が竹内さんに声をかけます。

「竹内さん、本当にありがとうございます。忙しい部署なので、上司とゆっくり話す機会ってほとんどないんです。こういう場を作ってもらえて、嬉しかったです」

そのひと言で、竹内さんの苦労は一気に報われました。

今回は育児中の社員2人と「用事があるので」と断ってきた社員1人が参加できなかったのですが、竹内さんは事前にこう伝えていました。

「もちろん、強制ではないし、来られなくても評価には一切影響しません。無理しないでくださいね」

欠席しやすい雰囲気をつくることも、チーム長の役割だと感じたからです。

竹内さんは「育児や介護、家の事情で夜はどうしても無理という人もいるので、春頃にランチ会でもやりましょうか」と自然に口にしていました。

帰宅後に妻にかけた言葉

忘年会が終わった帰り道、竹内さんの頭に残っていたのは、忘年会に来れなかったあの女性社員の言葉でした。

家に帰ると、妻に思いきって聞きました。

「優子は……会社の忘年会、どうしているの?」

すると妻は少し驚いたように言いました。

「一応あるよ。でも、あなたは忙しいし、言っても無理だと思って断ってた。でもね、本当はたまには子どもなしで飲んで羽を伸ばしたいよ。会社の飲み会って友人との飲み会ともまた違うしね」

その言葉は、竹内さんの胸に深く響きました。

「事前に言ってくれれば早く帰ってくるし、娘のことももちろん見ていくから行ってきなよ。というか、今まで全く気にしていなくて申し訳なかった」と改めて妻に頭を下げました。

40歳のチーム長が見つけた答え

去年の忘年会を思い返した竹内さんは、静かにこう語ります。

「働く人それぞれの事情や家庭の事情がある。もちろん飲み会が苦手な人もいる。来られなかった人の気持ちも大切にしながら、今年はもっとみんなが参加しやすい形で考えています」

忘年会の形は変わっても、「人とつながる時間を求める気持ち」だけは変わらない。

竹内さんは、昨年の経験を通してその大切さに気づいたのでした。

[参考資料]
ホットペッパーグルメ外食総研「トレンド座談会」