家電に眠る宝!金が3倍に高騰で加速する日本の「都市鉱山」ビジネス:ガイアの夜明け

写真拡大 (全14枚)


11月28日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは「家電に眠る“宝”を狙え」。

金の価格は過去5年で3倍以上に高騰。まさに“令和のゴールドラッシュ”の様相を呈している。そんな中、金をはじめ銀や銅など貴重な天然資源を輸入に頼ってきた日本が、新たな「資源大国」に生まれ変わろうとしている。家電などに使用される電子部品に含まれる金・銀・銅などの資源=「都市鉱山」を掘り起こす動きが加速しているのだ。
金だけでも、世界の埋蔵量の10%に匹敵する都市鉱山が日本に眠っているという。
パナソニックと三菱マテリアルが、都市鉱山の回収・循環の新たな流れを作るためにタッグを結成。他社も巻き込む、オールジャパンの資源循環プロジェクトを追った。
一方世界では、都市鉱山を含む家電ごみが違法に持ち込まれているという問題も。
その実態を知るために、マレーシアで緊急取材を敢行した。

【動画】家電に眠る宝!金が3倍に高騰で加速する日本の「都市鉱山」ビジネス

異色のタッグで都市鉱山を掘り起こせ!




香川・直島にある三菱マテリアル「直島製錬所」。広さは東京ドーム38個分で、島の4分の1近くを占めている。
鉱石から金・銀・銅を生み出す日本でトップクラスの製錬工場で、創業は1917年(大正6年)。当時工業化を進めていた日本では大規模な製錬所が必要となり、九州や関西の工業地帯にも近い直島が選ばれた。


そんな“宝”を生み出す島にやって来たのは、「三菱マテリアル」資源循環事業部の古賀沙織さん。古賀さんが見せてくれたのは冷蔵庫やテレビなど使用済み家電から回収した電子基板で、これらは「都市鉱山」とも呼ばれ、この中には金属が含まれている。
実は直島では、鉱石だけでなく都市鉱山からも金属を取り出している。
例えば金はさびないため、ICチップの中の配線に使われており、その量はチップ1枚で0.1mgほど。
「炉に入れる時は粉々に。ここから手間をかけて、製品に仕上げる」(古賀さん)。
三菱マテリアルは、1990年代からこのリサイクル事業を進めてきた。現在は、全世界で年間に廃棄される電子基板の約20%、約16万トンを処理。
古賀さんは、都市鉱山の掘り起こしに大きな価値を感じていた。


「子どもたちの時代、もっと先の時代の人たちが、気軽に電子機器を手に取って生活を豊かにするためには、資源を枯渇させてはいけない。その代わりになるものがEスクラップ(電子基板)の山」(古賀さん)。


近年の金価格高騰も、都市鉱山の重要性が増している理由の1つ。金の価格は、現在1g2万2000円台。5年で3倍以上も跳ね上がった。


「三菱マテリアル」(東京・丸の内)は、日本有数の金属製錬と加工を行うメーカー。
金属が高騰したことから、金属事業の売り上げは、この5年で約2倍に増加している。
入社17年の古賀さんは、技術士(資源工学)の国家資格を取得。リサイクルに興味があるメーカーを回り、一緒に事業を進められないか提案している。


この日、古賀さんが向かったのは、「パナソニックETソリューションズ」(大阪市 中央区 従業員:29人)。パナソニックグループの資源循環を推進する会社だ。
古賀さんが頼りにしている基板集めのキーマンが、顧問の田島章男さん(67)。
田島さんは、パナソニックで20年以上資源循環事業に取り組む業界の大先輩で、古賀さんとは10年来の付き合いだ。

1981年にパナソニックに入社した田島さんは、カーエアコンなどの開発に関わってきた、
根っからの技術者。人生の転機となったのが、使わなくなった家電をメーカーが引き取る家電リサイクル法の施行で、2004年、リサイクル事業推進室に異動する。
「環境事業を専任でやれと。正直10人もいない部署で、自分は何をやれるのだろうと思った」。

畑違いの部署に異動した田島さん、最初は戸惑ったものの、初めて訪れたリサイクル工場で価値観が大きく変わったという。
「家電の組み立てのところしか知らなかったが、作るのと壊すのでは全然違う世界だった。こういう風に資源を戻しているのかと驚いたし、リサイクルもすごく大事だと思った」。
今や、誰よりも基板の素材的価値を知る人に。さらに田島さん、新たな仕組みを考えつく。

「金属は地下資源、鉱物からとっていくが、将来的にその資源は有限で、それをどんどん消費するのではなく、新たに鉱物資源を買ってこなくても済むようなスキーム(仕組み)になるのではないか」。


そのカギとなるのが「製錬委託」。家電メーカーが原材料を製錬会社に預け、再生された金属を返してもらうシステムだ。
製錬委託を実現するため、パナソニックと三菱マテリアルは手を組むことになったが、そこに高い壁が立ちはだかる。

それまで三菱マテリアルは、家電メーカーから原材料を買い取っていた。しかし製錬委託になると、金属をメーカーに返すため、取り出した量を正確に測るという手間が発生する。
「どういう仕組みにすれば、三菱マテリアルも事業的に成り立って、パナソニックも一定の利益を得られるのか、相当打ち合わせをした」(田島さん)。
田島さんがパナソニックグループの大量発注を取りまとめることで、契約は成立。
交渉に費やした期間は4年…田島さんの執念が実った。

「我々製造業としては、原料を安定的に確保できるかは非常に大きな課題。原料の安定確保の1つの手段として、委託はありなのではないかと。田島さんは、自分がやりたいと思うことを前に押し進めるパワーが強い」(古賀さん)。

こうして、パナソニックが持ち込んだ基板を、三菱マテリアルが製錬して加工。再生した金属は再びパナソニックに戻され、使われるという循環が出来上がった。
この仕組みは「プロダクト・マテリアル・プロダクト(PMPループ)」と名付けられ、これまでに、金1.1t、銀33t、銅8100tを回収している。

「日本だけじゃなく、グローバルに貢献できるスキームになる」。

田島さんは今、2社だけで取り組んでいるPMPループに他社を巻き込もうと奔走している。そしてそんな田島さんに、大きなチャンスが訪れた――。



海を渡る家電ごみを監視せよ




太平洋とインド洋を結ぶマラッカ海峡。古くから海上交通の要衝で、今も多くの船が行き交う。
海峡に面したマレーシア最大の貿易港、ポート・クラン。この港を通じて、マレーシアに海外からの家電ごみが違法に持ち込まれているという。


11月上旬。廃棄物の不正な輸出入を監視する国際的NGO「バーゼル・アクション・ネットワーク」の調査員、ウォン・プイ・イーさんが見せてくれたのは、ポート・クラン周辺の地図。
プイ・イーさんが6年間にわたって調べ上げた、電子廃棄物の投棄場所や処理工場の位置がマーキングされている。
「ホットスポットと呼んでいる。貨物船が到着すると、港のすぐ近くで廃棄物を処理する」(プイ・イーさん)。


ここは、プイ・イーさんが教えてくれたホットスポットの1つ。塀で囲まれた作業場で、電子廃棄物から金などを取り出す処理が違法に行われているという。
「違法に操業する工場から、真っ黒な水が流れ出ているのを目にする。電子廃棄物の不法投棄と不法処理はマレーシアの社会問題であり、怒りを覚える」。

プイ・イーさんは、マレーシアの最難関校、マラヤ大学で経営学を専攻。卒業後は、国内の少数民族の自立を支援してきたが、活動する中で、多くの人々が環境汚染にさらされているのを目の当たりにした。「誰かが立ち向かわなければこの状況は続き、事態はもっと悪くなっていく」と話す。

クラン市環境局。プイ・イーさんは、多くのホットスポットを抱えるこの地域の実態を調査することに。
迎えてくれた局長のリザールさんは「クラン市には、違法工場がざっと3000はある。でも私たちには権限が与えられていないため、工場を取り締まったり、解体したりすることができない」と話す。

そもそもなぜマレーシアで、違法に持ち込まれる電子廃棄物が増えているのか。
「中国が2018年に廃棄物の輸入禁止措置をとったことが原因だと思う。多くの処理業者が東南アジアにやって来た」(プイ・イーさん)。
マレーシアはバーゼル条約(1992年発効)の加盟国で、有害廃棄物の国境を越える移動、及びその処分を規制。しかし、電子基板に含まれる貴金属を狙った廃棄物の密輸は後を絶たない。


次にプイ・イーさんが訪れたのは、クラン市の郊外。クラン市環境局の職員が案内したのは廃棄物の不法投棄場で、捨てられていたのは、電子廃棄物から基板などを抜き取った後のプラスチックの残骸。辺りには異臭も漂っている。
そしてその被害は、不法投棄場から5km離れた農家にまで及んでいた――。

この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!