いいクルマってだけじゃ売れない! 日産が利幅の大きいエルグランド&パトロールで狙う高収益化に立ちはだかる「売り方」の壁

この記事をまとめると
■ジャパンモビリティショー2025で日産が新型エルグランドを世界初公開する
■日産は新型エルグランドやパトロールの投入で高収益化を狙う
■高級車が売れなくなった日産販売網に「上級車を売る力」はあるのかが問われる
ジャパンモビリティショー2025で新型エルグランドを初公開予定
メディアでは10月30日から11月9日の会期で開催される「JMS2025(ジャパンモビリティショー2025)」にて、日産自動車が新型エルグランドを世界初公開すると報じている。日産自動車公式ウェブサイト内JMSスペシャルサイトをみると、確かにその姿こそ「Coming soon(本稿執筆段階)」となっているものの、JMS2025内日産ブースにおける展示車両としてエルグランドが紹介されていた。また、同サイトには日産の海外向けフルサイズSUVとなるパトロールも展示予定として紹介されていた。

現状での日産の看板車種、つまりよく売れているモデルはどんなものかと確認するため、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計(登録車のみ)による、2025事業年度(2025年4月〜2026年3月)上半期(2025年4〜9月)締め車名(通称名)別累計新車販売台数ランキングトップ20位以内に入っている日産車を探すと、ノートが10位、セレナが12位に入っていた。そのほかではルークス、デイズといった軽自動車を合わせた2車種&軽自動車が日産の看板車種となっている。
軽自動車は日産に限らず薄利多売がマストであり、手間がかかる割に得られる利益はそれほど期待できず、まさにコスパが悪く、ノートも3ナンバー派生モデルのオーラはエンドユーザーへしっかり販売されているものの、5ナンバーサイズのノートはレンタカーやカーシェアリングでおなじみ、つまりフリート販売も目立っている。まあまあの利益が期待できる看板車種はセレナぐらいとなっている。

一方でトヨタ車はどうかといえば、前述した自販連統計による、2025事業年度締め上半期締め車名(通称名)別新車販売ランキングトップ20でみると、トヨタ車が13車種ランクインしているだけではなく、アルファードが7位、以下ヴォクシー8位、ノア9位、クラウン14位、ハリアー18位、ランドクルーザー19位と、いわゆる高収益車種がゴロゴロランクインしている。
とくに粗利の非常に高いアルファードを半年で3万9849台(月販平均約6641台)、ランドクルーザー(300、70、250)は2万2051台(月販平均約3675台)も販売しており、アルファード1台で得られる粗利を軽自動車ならいったい何台売る必要があるのかと考えると、トヨタは単に数を売るだけではなく、上級車までまんべんなく販売することで、いまさらいうまでもないが高い収益能力も確保しているのである。
日産のJMSの出展概要をみると、とりあえず日本国内における収益体制の改善を進めているように見える。それが新型エルグランドの発表やパトロールの展示だ。かつて日産でもプレジデントやセドリック&グロリア、それこそ初代や2代目エルグランドと数々の高収益車種をラインアップして販売していたのだから、車種さえ再び揃えれば……、と話は簡単にはいかない。

「継続は力なり」。まさに新車販売でもトヨタ車を見ればこれが大切なことがよくわかる。クラウンは初代デビューから70年、カローラは59年目を迎えている。ランドクルーザーも車名だけ追いかければ、初代デビューは1951年までに遡ることができる。歴史があればそれでいいのかというわけではないが、粗利のいい上級車ではそもそも売り方自体もずいぶん変わってくるのである。
かつて日本がバブル経済と呼ばれこの世の春を謳歌していたとき、ちょうどその時代に被っていた8代目クラウンは中小企業経営者をはじめとして飛ぶように売れていた。しかし、そのほとんどは店頭で販売されることはなかった。当時クラウンを専売として扱っていたのは、全国のトヨタ店と一部地域ではトヨペット店との併売となっていた。クラウンを取り扱う全国のトヨタ系ディーラーのなかには「クラウン班」というものが編成され、原則クラウン班以外はクラウンを販売することはできなかった。

当時の新車販売は飛び込みメインの訪問販売となっていた。禁じられていたのは訪問販売であって、担当セールスマンがいる既納済みクラウンユーザーは、その担当セールスマンが専門的にフォローしており、フォローユーザーからの紹介客も担当セールスマンが担当していた。それ以外の新規訪店客にはクラウン班以外のセールスマンでもクラウンを売ってよかったという話を聞いたことがある。つまり、原則クラウンは店頭では販売されていなかったのである。
当時に聞いた話では、得意先の地元企業へ行き「社長クラウンの新型が出ますよ」と案内すると、「そうか、じゃあ最上級グレードにフルオプションでもってこい」、これだけで受注成立となることも多かったそうだ。オプション装備のスイッチ用にダミーカバーとなっているところに「すべてスイッチつけてこい」といわれることもあったそうだ。金銭的交渉が介在しないケースが多いのも、専従班が日ごろから管理顧客と顔を繋げてきたからこそともいえよう。
軽自動車の販売を初めてから日産は変わった!?
日産ももちろん同様の商売を上級車では進めてきたのだが、転換期は日産が軽自動車を扱うようになってからといっていいだろう。売り始めた当初は慎重だったのだが、しばらくすると上級車を売っても軽自動車を売ってもセールスマージンの実績カウントが変わらなくなったそうだ。そうなると軽自動車のほうが圧倒的に売りやすいので、セールスマンの多くは軽自動車ばかりを売るようになったと聞いている。
日産は2002年にブランド初となるスズキからのOEM(相手先ブランド供給)車となる量産軽自動車のモコを発売している。当時はミニバンがいま以上によく売れていた時代でもあり、日産系ディーラーの店内も現役子育て世代向けのファミリームード溢れるものとなっていった。すると、それまでセドリックなど上級車を乗り継いできたユーザーのなかからは、「上級車を買う雰囲気ではない」と感じ、他銘柄(他メーカー/おもにトヨタ)へと流れるようになったのである。

そのようなこともあったのか、エルグランドは3代目となったいま(本稿執筆時点)でも細々と販売継続しているが、セドリック、グロリア、ローレル、セフィーロなど、かつての日産花形モデルが次々と終売となり、いまではプレジデントすらラインアップされていない。3代目エルグランドも自販連統計によると2025年1月から9月の累計販売台数でも1275台(月販平均約212台/ちなみにアルファードは6万5975台[月販平均1万台強])となっている。
もちろん、“日産が新型エルグランドでアルファードに迫る”といった表現もできるのだが、アルファードはモデル自体の魅力以外にも、以前ほどではないものの高い再販価値を維持している。そして、クラウンからアルファードへ管理顧客を誘導し、クラウンには新しいキャラクターを与えて、数タイプ用意してシリーズ化させるなど、時代の変化にも対応させている。もはや、トヨタで売れている上級車に近い車種を投入すればそれでいいというだけではなくなっているのである。

気になるのは日産系正規ディーラーの販売力である。2002年に軽自動車を扱い始めてから日産上級車の販売不振そして終売が相次いだというのをベースとすれば、すでにかなりの経験を積んだベテランでも積極的に上級車を販売した経験がないことになる。
また、すでに日産上級車に乗っているユーザーから販売促進をかけるのも常道となるのだが、そもそも上級車に乗っているユーザーも少ないだろう。セレナユーザーをターゲットにして、エルグランドへのステップアップを勧めるという流れも考えられるが、アルファードでは3代目で残価設定ローンを組んで購入したユーザーあたりは負担が大きすぎて継続ローンが組めないとして、車両を処分してノアやヴォクシーなどへダウンサイズして乗り換えるケースも目立っているようなので、慎重な対応が必要となるだろう。

パトロールに至っては、そもそも日産で過去にはサファリぐらいまで遡らないと国内での同クラス日産車が思い出せない。
ランドクルーザーはまさに年単位というか、納期がいつになるかわからないなかでも、それを待ってでも乗りたいというひとが発注している。そこにはクルマの魅力もあるが、もはや資産と呼んでいいほど日本国内だけではなく世界中で高いステイタスを確立していることも大きいだろう。
エルグランドやパトロールは、一般的な量産車とは少々売り方が異なるカテゴリーとなってくる。華々しくデビューして話題となるだけではなく、どのようなセールスプロモーションで販売していくのか、筆者にはそのほうが大変気になっている。

