『アニメ大先生』第4回八木美佐子/書:八木美佐子

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人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいはただ日常を忘れて泣きたくなるとき――そのような瞬間にそっと寄り添う存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。

第4回も、アニメ愛が止まらないアナウンサー・八木美佐子氏が担当! 「アニメ大先生」が八木氏に教えてくれたこととは――。

◆タコピーの原罪はただの鬱アニメではない!「原罪」が一体何か考察

「誰か助けてください」--そんなふうに思ったことはありませんか?
私はあります。それは「世界の中心」では無く、日常の中です。借りられるなら猫の手でも嬉しいし、ネコ型ロボットの手ならもっと嬉しい。欲張って言えば、タコの手(足?)でもいいかもしれません。足の数だけ、八倍速で一気に片付くはずです。

そんな甘い妄想を抱かせてくれるのが『タコピーの原罪』です。タコピーはハッピー星の宇宙人で、どこかで見たような土管のある広場で子どもたちの『おはなし』に首を突っ込み、道具を次々と出す存在。声優は”とっとこ走るハムスター”と同じく間宮くるみさん。アラサー世代には親しみのある声です。

しかし、ほんわかした見た目やかわいさとは裏腹に、物語は決してハートフルではありません。登場人物の子どもたちは、ネグレクトや虐待、家族内格差などで心に深い傷を抱えています。あまりに高すぎる解像度で、各家庭の現実が描かれているのです。

私はそのリアリティを、自身の経験と重ねながら観ていました。両親がすれ違う家庭の不協和音。子どもながらに、辛かったことを思い出しました。ただ、逃げ場がアニメだったおかげで今に繋がっているので、悪いことばかりではありません。家族を羨ましく思うこともありました。弟は「男性は大学に行くべき」とされる一方で、私の進学は期待されていませんでした。親からの援助を受けず、特待制度を利用して大学に進学しましたが、学業とバイトの両立は容易ではありませんでした。

薄暗い倉庫でボーダーTシャツの柄を延々数える検品作業では、「一生分のボーダーを見た」と思いました。大人になって動物園でシマウマを見たとき、その感覚が蘇って少し嫌な気持ちになりました。シマウマでトラウマ--シマウマだって驚いたかもしれません。

家庭内の傷はブラックボックスで、本人以外には見えないのです。

ここからは、あくまで私の考察です。
タイトルの「原罪」とは何でしょうか。聖書では、人類の祖先であるアダムとイヴが犯した最初の罪、いわゆる「原罪」によって、すべての人間は罪と無縁ではないとされています。この罪に傾きやすい性質は、すべての人に受け継がれているのです。(私はエヴァにハマった勢いで、聖書を読み漁ったことがあります)
※28日18時修正

タコピーはハッピー星から来た無垢な存在ですが、人間社会に関わることで、悪意なく罪を背負うことになります。むしろ、悪意がないことが罪なのです。
主人公たちを含め、誰もが無意識に罪や業を背負っている--このタイトルには、そんなメッセージが込められていると感じました。

傷つけられながら、誰かを傷つけてしまう立場に、私たちも立っているのかもしれません。
タコピーは「おはなしをすること」の大切さを繰り返し伝えますが、人の苦しみに触れることは、いつだって怖くて難しい。なぜなら、痛みのかたちも温度も、それぞれ違うからです。
それでも、例え異なる痛みを抱えていても、ふと心が通じ合う瞬間があるのではないでしょうか。
そのとき、本当に必要なのはネコ型ロボットの手なのか、タコの手なのか--迷いどころです。

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『タコピーの原罪』は、万能の道具が存在しなくても、自ら前を向こうとする子どもたちから、生きるヒントをもらえる作品です。