『チェンソーマン レゼ篇』 ©藤本タツキ/集英社・MAPPA

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「じゃあ、どうすればよかったの?」

参考:上田麗奈と河瀬茉希がたどり着いた“幸せな世界線” 「私たちって息が合うのね!」

 『タコピーの原罪』にて、しずか役を演じた上田麗奈。しずかは複雑な家庭環境で育ち、学校ではクラスメイトであるまりなからノートを隠されたり、暴力を振るわれたりするなど、壮絶ないじめを受けていた。そして、最終回にてタコピーと再会するシーンで、しずかがおさえきれない怒りをあらわにしながら口にしたのが、冒頭のセリフだ。

 「パパと好きな時に会えなくなったらどうすればいいの?」「授業参観誰も来なくなったらどうすればいいの?」「『おうちの人呼んで』っておうちに誰もいなかったら……どうしたらいいの?」しずかは、これまで彼女が受けてきたどうしようもない“理不尽”をタコピーにぶつける。タコピーを踏みつけ、石で何度も殴りつける。涙をぼろぼろこぼしながら、声を震わせて叫ぶ。

 筆者は、このシーンを観て思わず涙があふれた。上田の演技は、怒りや悲しみ、寂しさ、諦めといった複雑に絡み合うしずかの感情をありのままに表現していた。その迫真の演技に、心を激しく揺さぶられたのだ。

 加えて、「ねえこういうこと誰に言えばよかったの?」というセリフには、頼る友達や大人がいないしずかの孤独が表れており、上田の小声ですがるような芝居がさらに胸を締めつける。最終回で見せた上田の芝居は、心をえぐるような『タコピーの原罪』の“真骨頂”と言っても過言ではない。

 上田の演技の特徴として、人を惹きつける“引力”が挙げられる。出演作である『アオのハコ』のヒロインである鹿野千夏役では、マイペースで掴みどころのない性格がチャーミングな、みんなの憧れの先輩を演じた。また、『SSSS.GRIDMAN』の新条アカネ役では、クラスのアイドル的な存在であり、かわいらしい表の顔を持つキャラクターも演じている。

 『タコピーの原罪』では、自分に期待してくれるしずかに母を重ねた東が、殺人の隠ぺいに協力してしまう姿が描かれた。「これ持って自首してくれないかな」としずかが凶器であるハッピーカメラを渡し、犯罪の肩代わりを頼んだときも、東は断れなかった。上田が演じるキャラクターには、人を正気ではいられなくするような魔性の魅力があるのだ。それは、しずか役にも生きている。

 だが、上田がしずか役で発揮したのは、人を惹きつける魅力だけではない。しずかが泣き叫びながらタコピーに怒りをぶつけるシーンで、小学生の彼女が抱えるには大きすぎる“激情”と“悲痛な思い”を、上田は見事に表現した。思わず耳をふさぎたくなってしまうが、受け止めなければならないと感じさせるような叫びだった。

 「どうすればよかったの?」という一連のセリフは、しずかの抱えていた感情が鋭利な刃物になったかのごとく、私たちの心にぐさりと刺さって抜けない。『タコピーの原罪』屈指の名シーンであり、「しずか役が上田でよかった」と思わずにはいられないのだ。

 9月19日より公開される劇場版『チェンソーマン レゼ篇』では、レゼ役を演じる上田。原作では、雨宿りのために入った公衆電話ボックスの中で、初めてレゼとデンジは出会う。レゼはデンジにボディタッチしたり、楽しそうに笑いかけたりする。その様子を見たデンジは、レゼは自分のことが好きだと考え、あっという間に彼女に惹かれ始めるのだ。

 デンジは、恋愛に関してちょろい男だ。マキマも好きだが、レゼも好きになってしまうデンジは、欲望にじつに正直だといえる。レゼに惹かれたのも彼のちょろさのせいに見えるが、そうではない。「デンジ君みたいな面白い人、はじめて」魅力的な女性にこう言われたら、きっと誰だってうれしくて舞い上がってしまうだろう。

 一方レゼは、とある目的のためにデンジに近づいていた。かわいらしい笑顔や言動の裏には、隠された別の顔があり、二面性のギャップも楽しめるキャラクターなのだ。そんなレゼ役に上田が抜擢されたのは、彼女の出演作を振り返るとしっくりくる。

 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の本予告では、レゼの登場シーンを少しだけ観ることができる。上田が演じるレゼは、明るくて軽やかな笑い方ひとつとっても可愛らしい。レゼはもともと人気の高いキャラクターだが、上田が演じることによって、きっとさらにファンが増えるだろう。そして、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』を観終わった後、「レゼ役が上田でよかった」と思わせてくれる予感がするのだ。(文=まわる まがり)