中国製EVが猛烈に台頭、独自動車メーカーに「ノキア化」の危機―シンガポール華字紙
2024年10月31日、シンガポールメディア・聯合早報は、中国製の電気自動車(EV)が世界の自動車市場で急速に台頭する中、自動車大国ドイツのメーカーが「ノキア化」の危機を迎えていると報じた。
記事は、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツといったドイツの大手自動車メーカーが9月に相次いで業績予想を下方修正し、フォルクスワーゲンは10月末にドイツ国内の少なくとも三つの工場を閉鎖し、創業以来初めて数万人の従業員を解雇する可能性があることを明らかにしたと紹介。100年にわたり世界の内燃機関自動車産業をリードしてきたドイツの自動車メーカーが、中国の新エネルギー車の力強い台頭を前に弱体化し、かつて世界最大のシェアを獲得しつつもiPhoneやAndroidスマートフォンの急成長で凋落していったノキアのようになりつつあると伝えた。
その上で「もちろんドイツメーカーもこのまま黙っているわけではない」とし、メルセデス・ベンツが2030年にEVのみを販売する方針を示すなど、各メーカーが次々とEV路線を打ち出していると伝える一方で「それはいばらの道だ」と指摘。その理由について専門家が、ドイツメーカーは価格設定や新製品開発のスピードで中国のライバルに及ばないこと、代替エネルギー源の利用、効率的な制御システム、人工知能(AI)などの未来のEVでますます重要となる高度なソフトウェアシステム技術について中国が優位性を確保していること、さらに欧米に比べてなおも人件費が安いことなどを挙げて解説したことを紹介した。
また、中国製EVの猛攻を前に、欧米が追加輸入関税発動という保護主義的な手段に出ていることついて、専門家からは「欧米メーカーが中国のEVに追いつくための時間稼ぎにはなるが、長期的な解決策にはならない。中国のEV技術と生産規模は関税の障壁に対応可能な上、中国メーカーは障壁を回避するために積極的に海外工場を設立している」といった指摘が聞かれると伝えた。
記事は、厳しい状況にあるドイツメーカーがメンツを捨てて中国企業とパートナーシップを構築する動きも見せており、フォルクスワーゲンは国軒高科と電池技術を獲得し、メルセデス・ベンツは吉利と組んで「スマートEV」の生産に乗り出したと紹介。シンガポール経営大学リー・コン・チアン商学院のフー・ファンジエン副教授が「従来型のメーカーが自前の技術と高いコストで中国に対抗するのは困難と判断し、投資、合併・買収(M&A)、資本参加を通じてウィンウィンの結果を得るよう戦略調整する可能性がある。彼らが長期間積み上げてきた経験や、エンジン、車のデザイン、シートなどにおける優位性は、新興のEVメーカーにとって、提携して学ぶメリットになる」と解説したことを伝えた。
そして、シンガポール国立大学機械工学部のリー・バオション副教授が「ドイツメーカーは保護主義的な手段に頼るのではなく、競争力を維持するために技術革新、コスト削減、効率化に重点を置くべきだ」と指摘したことを併せて紹介した。(編集・翻訳/川尻)