現代の東京で生きるホスト・玲央(神木/一人二役)はどうやって鉄平につながる?
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 神木隆之介が一人二役で主演を務める日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系・毎週日曜よる9時〜)の新井順子プロデューサーが、物語に仕掛けられた謎やキャストの魅力について語った。

 本作は、新井プロデューサーが、ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」、映画『ラストマイル』に続いて、脚本・野木亜紀子、監督・塚原あゆ子と手掛ける初の日曜劇場。舞台は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と現代の東京。戦後の復興から高度経済成長を迎える端島に生きる主人公・鉄平(神木)と、現代の東京で夢もなく生きるホスト・玲央(神木/一人二役)を通して、過去から現代へ通じる希望を描き出すヒューマンラブストーリー。

“没入型”俳優・神木隆之介の魅力

 先日放送された第1話では、これまでのイメージを覆すような、神木のホスト役も話題に。明るく真っ直ぐに生きる鉄平と違い、無気力で死んだような日々を送る玲央役について「見たことのない神木さん像を作ろうとなった」と明かす新井は、神木の役づくりを絶賛する。

 「最初にドラマの企画書をお渡しして、初めてお会いした時にはホストの動画を研究されていました。“この人知ってますか?”とこちらに教えてくれるくらい(笑)。ロケ先のホストクラブの方にも、お話を聞かせてもらって、聞いたことをすぐ実践されていて、上手いなと感じました」

 もちろん、正反対の役を時代を越えて演じることに苦労を告白することもあるというが、新井は「非常に生っぽいというか、(ホスト役も)リアルなんです。ご本人も言っていたのですが、没入型の俳優さんで、よーい、ハイ! と声がかかると一瞬で役に切り替わる」と神木の演技を絶賛する。「ある時、夕方まで鉄平の撮影をしていて、夜に玲央のシーンを撮る日があったのですが、夕方まで前向きな気持ちで生きる鉄平だったのに、夜なると全てがダルいと思って生きている玲央になるんです。その死んだような目が本当にすごくて。切り替えるのは簡単ではないようですが、そんな玲央の変化にも注目していただきたいですね」

いづみは誰?鍵は三人のキャラクター

 端島パートには、鉄平を中心に、鉄平に思いを寄せる食堂の看板娘・朝子(杉咲花)、どこからか逃げるように端島へやってきた謎の女性・リナ(池田エライザ)、そして、同じ大学を卒業した幼馴染の百合子(土屋太鳳)という3人のキャラクターが登場。それぞれのキャスティングについて、新井は「神木さんを中心に、海外の方が見ても3人の個性の違いがはっきりとわかるような方にお願いしたいと考えていました」と明かす。

 「リナは、お芝居に加えて歌も披露するということもあり、池田さんにお願いしました。受けていただけるか不安もあったのですが、お父さまが端島の隣の高島出身で、おじいさまが炭鉱員ということから運命的なものを感じてくださったようで、すぐに快諾いただけました。杉咲さんと土屋さんは、それこそお二人が学生の頃から……杉咲さんは中学生の頃、土屋さんは高校生の頃からずっとお仕事をしてきたので、また一緒にやりたいという思いがあり、お願いしました」

 そして、現代パートで重要となるのが、玲央を端島へと導く謎の婦人・いづみを演じる宮本信子だ。「どうしても宮本さんにお願いしたいと思い、思いをしたためた手紙を送らせていただき、念願かなっての出演になりました」と明かす新井。第1話の放送時には、いづみが、3人のキャラクターの現代の姿なのではないかと視聴者の間でも話題に。彼女の正体をめぐってX(旧Twitter)でも考察が飛び交ったが、新井は「もちろん、いずれわかってくることになります」とニヤリ。

 神木が一人二役を務めていることにも意味があるといい「いろいろと推測していただきたいです。ただ、答えにたどり着くのはかなり難しいです。脚本を読んだ時、スタッフみんなで『え〜!』となりましたから(笑)」。第1話の時点で、謎につながるヒントが登場しているといい「きっと最終話まで観ていただいた後で1話に戻っていただくと、“ああ、そこか!”となっていただけると思います」と語る。

端島を映像化!映画規模の撮影

 連続ドラマでは初となる、在りし日の端島の映像化も話題を呼んでいる。実際の端島でのロケは難しいため、製作陣は、ロケとセット、VFXを多用して島の映像化に挑んだ。第1話でリナが端島音頭を歌う階段が印象的な“端島銀座”と呼ばれる道は、セットで再現されている。

 新井は「セットを建てる場所を探すだけでもかなりの時間がかかりました。撮影が長期にわたるので、しっかりとしたものを作るのが本当に大変で。リナが端島音頭を歌うシーンでは、300人ぐらいのエキストラに集まっていただいたのですが、その方々の着替えだけでも2時間くらいかかっています。また、端島には緑がないのですが、そんなロケ場所を探すのも不可能に近い(笑)。VFX も多用していて、みんなに“映画並みだね”と言われます」と苦労を明かす。

 端島に存在した映画館やビリヤード場、美容院なども登場。「最初は写真だけのイメージカットで紹介するという考えもあったのですが、塚原監督が実写で撮りたいとこだわられて、ワンカットのために装飾をして再現しました。美術スタッフの皆さんも、毎日数台のトラックでやってきて作業してくれていて。本当に頭がさがります」(新井)

 11月3日に放送される第2話では、端島を襲う台風のシーンも見どころ。「これも本当に大変でした(笑)。まる一日かけてシャワーのような降雨機を設置して、セット横に雨を降らすための水を溜めておくプールも設置して。とにかくすごい水の量なので、撮影の合間に(体を)乾かすこともできないんです。撮影は夏でしたが、キャストの皆さんもすごく寒かったみたいで、足湯につかりながらやっていただきました。その苦労の甲斐があって映像は迫力満点です!」

グラデーションのように変化する物語

 いづみと玲央の謎も気になるが、本作の見どころは、激動の時代のなかで変化していく、端島に生きる鉄平たちの青春や恋愛模様、そして現代とのつながりをめぐる多彩なドラマだ。新井は「神木さんがよく言っているのですが、それこそ、“ちゃんぽん”のようなドラマになっています。本当にたくさんの要素が含まれていますし、(登場人物の)誰もが主役になれるストーリーになっているので、誰かに共感して観ていただければ」と語る。

 エピソードを重ねるごとに、物語もグラデーションのように変化していくといい「前半はハッピーな青春感あふれる雰囲気ですが、これからさまざまなことが起きて、鉄平たちの人生が思いもよらぬ方向へと向かっていく。中盤に差し掛かるにつれて違うドラマが始まったかのような、激動の人生と人間模様を描いていきます」という新井は「考察をしながらでも、気にしないで観ていただいてもいいんです。ラブストーリーに興味を持っていただける方もいるでしょうし、鉄平と(父親の)一平の関係に興味がある人もいると思います。自分の共感できるポイントで、お一人でも、家族みんなで見ても楽しんでいただける作品になっています」と自信をのぞかせた。(編集部・入倉功一)