「子の死体を物のように扱う冷酷な犯行」乳児殺害などの罪問われた25歳の女の裁判員裁判 検察は懲役6年求刑=静岡地裁沼津支部
2023年5月、出産したばかりの子どもを殺害して海岸で焼き、遺棄した罪に問われている女の裁判員裁判が2024年10月31日、審理を終えました。検察側は「自ら産んだ子の死体を物のように扱う態度が表れた冷酷な犯行」などとして懲役6年を求刑しました。
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殺人、死体損壊、死体遺棄の罪に問われているのは、住居不定・無職の女(25)です。
起訴状などによりますと、女は2023年5月、静岡県沼津市内のインターネットカフェの女子トイレで、出産したばかりの子どもを窒息させて殺害し、沼津市の千本浜海岸で遺体をたき火の中に入れて焼き損壊、遺棄した罪に問われています。
静岡地裁沼津支部で10月28日に開かれた初公判で、女は起訴内容を認めていて、裁判ではどの程度の刑を科すべきかという「量刑」が争われています。争点の1つが、女の注意欠陥・多動性障害「ADHD」の特性などが、どの程度犯行に影響を与えたかということです。
10月31日の裁判で検察側は、強固な殺意に基づく残虐な犯行であると主張し「特性が与えた影響は限定的であり、自ら産んだ子の死体を物のように扱う態度が表れた冷酷な犯行」などとして懲役6年を求刑しました。
一方、弁護側は、殺意は突発的で、強固なものではなく「犯行に至った経緯や動機の形成過程には特性による思考力や理解力の低さが大きく影響している」などとして懲役3年が妥当であるとしました。
これまでの裁判で、検察側・弁護側双方の鑑定人医師は、女について「ADHD」の特性があるという共通の認識を示していますが、犯行への影響については意見が割れています。検察側の鑑定人医師は「子どもを殺すしかないという動機形成には直接、影響を及ぼしていない」と指摘した一方、弁護側の鑑定人医師は「孤立出産により心身に大きなダメージが加わり、特性による衝動性が高まったことで総合的な状況判断ができなかった」などと分析していました。
10月30日に行なわれた被告人質問で、女は妊娠中にスマホで「赤ちゃんポスト」を調べたものの、静岡県から距離が遠く、お金がなかったために諦めたなどと供述していました。
10月31日の裁判では、女が「最終意見陳述」のため、改めて証言台に立ちました。
「今回の事件では私の身勝手な行動により、たくさんの人を傷つけてしまいました。家族はもちろんのこと、子どもを持つ家庭、子どもに恵まれず悩んでいる家庭、今回の事件を知って不快な思いをした人たち」
「私が今回一番傷つけ、苦しめ、たったひとつの命を奪ってしまった娘に対しては、私が唯一守れる立場でありながらも、生まれたばかりの娘に対し、本当に酷いことをしてしまったと反省しています。娘にこんな酷いことをしたのが母親である私自身だと思うと、自分を責めても責め足りず、一生悔やみ続けていくと思います」
「娘のことを忘れることなく、反省し続け、毎日供養をし、娘の冥福を祈り続けることを約束します」などと、女は約6分間にわたって述べ、中盤と最後に「本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げました。