1000人と婚活し、結婚した著者がルポ。どうしても結婚したい、どこで探す?どう選ぶ?
『結婚』と聞くと、どのようなことを思い浮かべますか?「憧れ」「玉の輿」「新しい家族」といったポジティブなものから、「人生の墓場」といったネガティブな印象を持つ人もいるでしょう。令和の今は、人生を謳歌しながら生涯独身、同性のパートナーと暮らす、子どもは欲しいが籍は入れないなど、自由な選択ができる時代です。とはいえ「やっぱり私は結婚したい」と思う場合、どんなふうに将来のパートナーを選び、どうやって結婚するのでしょうか? 実際に1000人と婚活し結婚した体験を綴った著書を上梓した筆者が、結婚を選んだ女性やサポートした人たちをルポします。(文・かわむら あみり)
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人生の描きかたが大きく影響する出来事
「人生100年時代」といわれて久しいですが、現時点で人生を振り返ると、あなたにとってはどんな出来事が一番印象深いものだったでしょうか? 現在の年齢によっても挙げるものは違ってくるはず。これが“人生の三大イベント”となると、“離婚”“出産”“受験や就職”“病気”や“親しい人との死別”なども入ることがあるかもしれません。とくに結婚は、どちらかが苗字を変えたり、場合によっては仕事を辞めたり、引っ越しをしたり。今後の人生の描きかたが大きく影響する出来事でしょう。
内閣府の令和4年版「男女共同参画白書」の「特集 人生100年時代における結婚と家族〜家族の姿の変化と課題にどう向き合うか〜」内の報告を抜粋すると、50歳時点で「未婚」「離別」「死別」により配偶者のいない人の割合は、令和2年時点では男女ともに約3割という結果が発表されています(※1)。
積極的に結婚したいと思わない理由について、独身の男女で比較すると、女性の場合は「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」などの理由が5割前後でした。もっとも、女性側のさらなる理由として「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」といったものも。男性の場合は「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」といったものが理由として高いものでした。
とはいっても、「結婚したい」と考える女性は未だ多いもの。巷ではどんな女性が、どんな思いで結婚しようと思っているのでしょうか。住まいも職業も年齢もさまざまな女性の話を聞くことで、「結婚したい」と思った時に進むべき道のヒントが見つかることもあるはずです。そこで今回から、実際に結婚を決めたかたやサポートしたかたに取材を実施。今回は、滋賀県出身で京都府に住む、ケイさん(仮名、35歳)が教えてくれました。
さほど結婚願望は強くなかった
ケイさんは、両親と弟の4人家族。いつでも地元の滋賀県にすぐ行ける関西圏に根付いた暮らしをしていて、事務職をしている会社のある京都で一人暮らしをする自立した女性です。帰省した際、「孫と早く遊びたい」と母親から言われることもあったようですが、それはごく稀。家族から結婚について急かされることはありません。30代へと年齢を重ねていく際、とりあえず婚活を始めたものの、さほど結婚願望は強くなかったそうです。
「30歳になる前ぐらいから、婚活を始めました。出会うためのアプリなどもありますが、どんな男性が登録しているのかもわからないですし、ちょっと怖いなと。だから、まずは京都府の自治体がやっている、相手の身元も信用できる婚活事業を見つけて、参加しました。安全だし費用もあまりかからないので、もしも自分に合わなくても、損はしないから」
ケイさんの住む京都府は少子化対策に力を入れていて、結婚を希望する独身者の婚活を応援し、前向きに取り組める社会的気運を醸成するため、総合的な婚活支援拠点として「きょうと婚活応援センター」を平成27年10月に開設(※2)。京都府が開催している婚活イベントとマッチングシステムという二つのサービスを展開しています。利用するにはホームページから事前登録し、対面またはオンラインで面談、マッチングシステムを利用する場合の利用料3000円(登録料、会費、成婚料は無料)、独身証明書ほか必要書類を提出すると会員登録が完了し、婚活をスタートできます。
そうしてゆるく婚活していたケイさんが33歳になった頃、自治体の相談員のかたから、出会いの場が広がるので民間で運営する婚活パーティーにも参加してみたらというアドバイスを受け、偶然見つけた日本最大級の結婚相談所ネットワーク〈IBJ〉が運営する婚活パーティー「PARTY☆PARTY」のイベントに参加。そこで結婚相談所〈IBJメンバーズ〉に入会しました。
「そんなに結婚願望はなかったですが、まったく何もしないでいて、後悔したくなかったんです。私にとっての理想の結婚相手は、滋賀県に住んでいる人や将来的に住むであろう人だといいなと思い、そういったかたを中心に会っていきました。だから、年収や趣味といったところはそこまで重視しませんでした。あとは内面。夫婦になると会話する機会が増えるので、お互いに思っていることを言いやすい関係を築けそうな相手がいいなと」
運命の相手との出会い
地元を大事にするケイさんにとって、夫婦になってからの住まいはもっとも重要なポイント。さらには、対等でいられる関係性を重視と、慎重な印象のケイさんだからこその譲れない条件でした。そして運命の相手に出会います。当初、お相手を「真面目オーラがあふれでている人」だと感じたのだとか。ケイさんより5歳年上の、現在40歳の公務員の男性です。
「出身地が同じなんです。初めて会った時から、会話の内容に困らないし、安心感がありました。真面目なかたなんですけれども、思っていることをハッキリと言ってくれる。それも私のことをちゃんと考えてくれていることが、会うたびに伝わってきて。そこに惹かれたのかな」
照れながらそう話してくれました。すでに結婚相談所は退会し、二人で入籍の時期を相談しているところだそうです。独身時代から、婚活しての、結婚。それぞれの時期の印象を聞いてみると、「独身時代は自由で気楽でしたね。婚活時期は迷走する自分がいた人生の岐路。結婚はこれからですが、新しい人生だと思っています」と語るケイさんの笑顔は輝いていました。
イメージ(写真提供◎Photo AC)
ちなみに夫となる男性から見たケイさんの印象や、どんな男性なのかと聞いたところ、シャイなケイさんの代わりに、取材に立ち会った結婚相談所の担当カウンセラー畑さんが「お相手の男性は、とても誠実で、堅実なかたです。早い段階からケイさんのことを好きになってくださっていました」と応えてくれました。
出会うタイミングは大事
イメージ(写真提供◎Photo AC)
さらに、「ケイさんも活動の中でいろいろな男性を見てこられたので、それまでの男性と比べることで、この素敵な男性の良さを判断できて決断できたのだと思います」と言うと、ケイさんは「婚活を始めたばかりの頃に会っていたら、もう少し他の人とも会ってみようと見過ごしていたかもしれません」と振り返りました。“今”だからこそ結ばれたご縁を実感。
確かに、出会うタイミングって、大事です。“まだ次がある”と思っていると、今、目の前にいる人の良いところに気づきにくくなることもあるでしょうし、そもそも“次”が来ないことだってある。そうしてどんどん会っていくうちに、自分に合う男性がどんなタイプなのか、なんとなくわかってくるものです。
ケイさんのように結婚相談所に入会している場合は、男女の性格や条件を客観的に見てくれるカウンセラーが意外な相手を推薦することもあるので、新たな発見もあるはず。それに住まいのある自治体で何かしらの婚活支援を行なっている場合もありますし、出会いがない時は、まずは身近なところから、出会いの方法を探してみるのも手だといえます。
私自身は予想外に約1,000人もの男性と婚活で対面してきましたが、正直なところ、結婚適齢期といわれる年齢になっても、ほとんど結婚に興味がありませんでした。ただ、一人っ子ということもあって、私が血縁を絶やしてしまうとあとが無い状態。なので、結婚したいというよりも子どもが欲しいな、と考えたんです。となると、ひとりで育てるよりはやっぱり、結婚したほうがいいのかなと思うようになり、まわりもどんどん結婚し始めた35歳を過ぎてから、やっと重い腰をあげて婚活を開始。合コン、人の紹介、婚活パーティー、結婚相談所その他、とにかく出会いのありそうなあらゆるところに勇んでいったものの、最終的に婚姻届を出したのは40歳になる前日。長い時間がかかりました。
なんとも不思議なご縁
今ではこうして婚活や結婚について人前で話したり、執筆したり、ましてや自らの婚活体験に関する本を出すことがあるなんて、考えもしませんでした。なぜなら、小さい頃から、ものすごく人見知り。彼氏ができても親に紹介したこともなければ、恋愛相談なんてもちろんしたこともありません。コミュニケーションをとるのも下手だし、身近な友達ならまだしも、結婚願望の有る無しをまったくの他人に話すなんて、恥ずかしさの極み……。というくらいに思っていたんです。
私の場合、どうやって出会いを探せばいいのかわからなくて、当初は決死の思いで信頼できる友達に「いい人がいたら紹介してほしい」と頼むことから始まりました。友達に頼む利点としては、こちらの性格や状況をわかっている上で相手を考えてくれるから、リアルに好みに近い人を考えてくれること。そうして連れてきてくれた男性は、(当時)イケメン好きだった私の好みにピッタリすぎるぐらいの素敵な人! だったのですが……。
小さい頃からお笑いや音楽をはじめとしたエンタメが好きで、当時あった心斎橋筋2丁目劇場などの劇場へ足を運んだり、全国各地のライブ遠征のためにせっせとアルバイトをしてお金を貯めてあちこち出かけたりしていた、今では市民権を得ている“オタク”と呼ばれる(推し活ともいうようになりましたよね)層にいた私。遠い存在を追いかけることが大好きでも、いざ自分が大人になって、実際にカッコイイ男性を目の前にすると、どう対応していいのかパニックになりました。だけどお酒は飲める年齢なものだから、とにかくビールをぐびぐび飲んで、さらにおかしなテンションになって舞い上がりすぎてしまったのです。
せっかく友達が紹介してくれた男性でしたが、きっと初対面で酔っ払うハイテンション女を目の前にして、ドン引きしたに違いありません。「今は仕事が忙しいので……」という、表面上は優しさをまとっているお断りの言葉をもらい、私の紹介話は終わりました。とほほ。
結婚相手にすぐ出会う人もいれば、そうではない人もいる。なんとも不思議なご縁にますます興味がわく秋麗です。
(Information)
取材協力:結婚相談所IBJメンバーズ
(参考HP)
※1 内閣府 男女共同参画付
※2 きょうと婚活応援センター