(左から)茺尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、山下敦弘(監督)、中田夢花(原作)、直井卓俊(企画)(写真=林直幸)

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 映画『水深ゼロメートルから』のBlu-ray&DVDが発売中。初回限定生産の音声特典となるオーディオコメンタリー収録には、メインキャストの茺尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、山下敦弘監督、脚本・原作の中田夢花、企画の直井卓俊が参加した。本稿ではその収録の一部模様をお届けする。

参考:山下敦弘×枝優花『水深ゼロメートルから』対談 “キラキラ映画”ではない物語が捉えたもの

 本作は、中田が徳島市立高等学校在籍時に脚本を手掛けた同名舞台を映画化した一作。夏休み、特別補習としてプール掃除を指示された高校生たちのさまざまな思いが交錯していく模様が描かれる。

 劇中は夏真っ只中の7月の設定。が、意外にも撮影は10月だったという裏話が飛び出す形で収録はスタート。「雲の感じも夏っぽいし、まったく10月だなんて分からないですよね」と原作者の中田がコメントすると、キャスト陣は「なつかしい~」と撮影時の記憶を思い出している様子に。

 ココロ(茺尾咲綺)、ミク(仲吉玲亜)、チヅル(清田みくり)、ユイ(花岡すみれ)とともに劇中の重要人物となるのが、さとうほなみが演じる体育教師の山本。山下監督からの「こんな先生いた?」の質問に、「いました。高校のときの一番恐かった生活指導の先生と同じ空気をまとっていて。見つめられると緊張感が走りました(笑)」と茺尾。「怖いねー(笑)」と仲吉も続き、さとうの“恐い”教師ぶりを一同は絶賛した。

 仲吉が「リアルだったら意味わからない(笑)」と語ったのは、チヅルがオフィスなどにあるキャスター付きの椅子を使って疑似水泳をするシーン。水泳部のチヅルが水のないプールの中で、椅子を利用してクロールの動きをしていく。清田は「一回やったらやりたくなるよ(笑)!」と楽しいシーンだったと振り返り、「タイヤに油を塗って滑りやすくしているんです」と細かい工夫をしていたことも明かした。

 ユイ役の花岡が登場すると一同から「来た!!」の声が。花岡は「やっと登場しました(笑)」と喜ぶと、山下監督からは「ユイは本当にいい先輩だよね」の声が。ユイはチヅルの水泳部の先輩で、ミク、ココロとはまた異なる立ち位置の人物。舞台版からキャラクターも少し変化しているようで、花岡は「舞台版はもう少しふざけている感じでしたが、映画ではもう少しフラットにすることを意識しました」と映像ならではの微調整をしていたことを明かした。

 先輩・後輩のユイとチヅルが二人きりのシーンでは、花岡は「気まずい~」と当時の役の心境を思い出しながら、「チヅルには後ろ姿にしか話しかけてなくて。こっちは合わせようとしてたんですけど……」と語ると、清田は「いかに目を合わせないか! ガン無視です(笑)」と笑いながら撮影時の心境を振り返った。

 プールを掃除するということで、メインキャラクターの4人は常にホウキを持っている。これは演じる上でも大きな助けになった部分があったそうで、「何か言いたいときは強く握ったり、気まずいときはホウキで遊んでいたり」と仲吉。山下監督も「確かに今の心理状態が表れていて注目してみると面白いね」と続けた。

 物語が後半に進むと各キャラクターの秘めた思いが少しずつ明らかになっていく。それぞれが心の内を打ち明けるシーンには、山下監督の「見入っちゃうね」の言葉にキャスト陣も全面同意。自身の渾身の芝居をうれしそうに眺めていた。

 他にもコメンタリー収録では、撮影時間が異なることから同じシーンでも影の位置が微妙に異なっている点や、中田がキャラクターのモデルとなった人物とのエピソードを明かすなど、ファンにはたまらない制作裏話が次々飛び出した。

 オーディオコメンタリーの収録を終えて、「この映画が撮れたことがすごく嬉しくて、初心に帰ったような真っさらな気持ちで作れました」と胸を張る山下監督をはじめ、キャスト陣も「お家でお友達や家族とこうやっておしゃべりをしながら楽しんでいただけたら嬉しい」(花岡)、「このパッケージは私の手元にずっと宝物として残したいと思います」(清田)、「すごく幸せでしたし、楽しかったですし、この作品が本当に大好きです」(仲吉)、「何度でも、何十年後かにも観たいなと思っています。ぜひ皆さんもBlu-rayで何度でも観てくださると嬉しいです」(茺尾)と思い思いにコメント。

 原作者の中田は「高校の演劇部から始まった物語がこうしてたくさんの方に愛してもらえて、このように映画化していただけたことを改めてすごく嬉しく思います。登場人物のひとりであるココロの言葉を借りて、ここからは自分の力で頑張っていけるように精一杯努力していきたいと思っています」と締めくくった。

(文=石井達也)