延長後半終了間際、決勝ゴールを決めて喜ぶG大阪・坂本(カメラ・馬場 秀則)

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◆天皇杯▽準決勝 G大阪3―2横浜FM(27日・パナスタ)

 G大阪は延長戦の末に横浜Mを3―2で破り、2015年度大会以来となるタイトル獲得に王手をかけた。2―2で迎えた延長後半アディショナルタイム(AT)にFW坂本一彩(いさ、21)が劇的な決勝点を挙げ、鹿島、浦和に次ぐ主要タイトル通算10冠まであと1勝とした。神戸は京都に2―1で競り勝ち、5大会ぶりに決勝に進んだ。関西勢同士の決勝は1993年のJリーグ開幕以降初で、全関学と大阪クラブが対戦した第33回大会以来71大会ぶり。決勝は11月23日に東京・国立競技場で行われる。

 スルーパスに抜け出したG大阪FW坂本の足は限界に近かった。2―2で迎えた延長後半AT5分、坂本の前には相手DFが1人。「(足が)つりそうだったけど…相手を左右に振ったらいけるかなと」。スピードが出せない分、横に揺さぶった。DFに尻餅をつかせた。倒れ込みながら放ったシュートがネットを揺らした。

 歓喜に沸くスタンドへ駆け出すと同時に、足がつった。足を引きずりながら仲間にもみくちゃにされた。「何かを起こしたいと思っていた。自分の良さが出たかな」。1―1の後半43分に勝ち越し点を奪われたが、同ATにDF中谷が頭で劇的同点弾。延長戦30分間は無得点が続いたが、またもATにドラマが待っていた。下部組織出身の21歳が主役になった。

 15年度の天皇杯を最後に、タイトルから遠ざかる。21年以降のリーグ戦順位は、13、15、16位。優勝争いが当たり前だったクラブは、近年は残留争いが“主戦場”となっていた。代名詞だった攻撃的なサッカースタイルは、川崎や横浜Mにお株を奪われた。

 しかし今季はベテランと若手、坂本ら下部組織出身組と中谷ら移籍加入組が融合。2年目のポヤトス監督(46)の戦術も浸透し、今大会は3回戦以降、全て1点差で勝ち上がってきた。しぶとさに加え、この日は全盛期を支えた「取られたら取り返す」の精神を発揮し、決勝進出をつかんだ。強かった時代を思い出させるような勝利への執念で、120分間の激闘を制した。

 G大阪のユニホームの左胸部分には、通算9冠を意味する9個の星が並んでいる。主将・宇佐美は「10個目の星をつけられるチャンスが来た」と決勝を待ち望んだ。強いG大阪を取り戻すまで、あと1勝だ。(岡島 智哉)

●横浜M・ハッチンソン暫定監督(1―1の後半43分に勝ち越しも守り切れず。無冠が確定)「全て消滅してしまった」