政治空白、許されぬ…政治部長・小川聡

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 長期政権のぬるま湯につかり、有権者の意識とかけ離れた「党の論理」を捨てきれない自民党に、厳しい審判が下った。

 これまでの自民党政治家と違う感覚で政権を運営するのではとの石破首相への期待は、瞬く間に失望に変わった。予算委員会なしでの衆院解散や、政治資金問題に関わった前議員らの公認問題と2000万円の活動費支給を巡る対応などで、総裁選で掲げた「国民の納得と共感」よりも自民党の事情と都合を優先する姿勢が露呈し、国民の怒りの火に油を注いだ。

 立憲民主党は、3年前の衆院選を教訓に、自民党にお灸(きゅう)を据えようと考える中道保守層の投票の受け皿になった。野田代表が、「原発ゼロ」をはじめとした非現実的な安全保障・エネルギー政策を封印し、共産党との連携に距離を置いたことが奏功したと言えよう。

 立民は選挙戦で、「政治とカネ」問題への批判に注力し、景気対策や社会保障などの具体策を論じる機会は少なかった。「敵失」で議席を伸ばした面が大きく、自らの政策・主張が全面的に支持を集めたという過信は禁物だ。

 日本を取り巻く環境は国内外で厳しさを増しており、一刻の猶予も許されない。経済停滞や社会保障・財政の不安、自然災害への対応などを急がなくてはならない。北朝鮮や中国による軍事的威圧や威嚇、一方的な現状変更や侵略の脅威に直面し、日本の主権や平和、繁栄を維持できるかどうかの岐路にある。

 与党の過半数割れにより、当面、政権が弱体化することは避けられまい。各党は、政局を優先して分断を加速させるのではなく、真摯(しんし)な議論を通じて現実的に答えを出していくことが不可欠だ。

 内外の有事を前に、政治空白を作ってはならない。