なんと「人類史上2番目」に読まれてきた…多くの人が知っている「史上最高の数学バイブル」が示す、じつにシンプルな数学の「神髄」
東大や京大ほか、難関大学が出題した入試問題には、「数学の本質」がいっぱい詰まっている!
「よりすぐりの良問」を格好の素材として活用する新しい学習法を紹介した『中学数学で解く大学入試問題』が話題になっています。
中学数学の限られた知識や技術で、大学入試問題がなぜ解けるのか? どう解くのか?
思考過程を重視した素朴な解法を通して、有名大学の問題が「わかる喜び」「考える楽しさ」を体感すれば、「数学的思考力」が驚くほど身につく!
*本記事は、『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
聖書に次いで読まれてきた本は「数学書」だった
聖書に次いで読まれてきたともいわれる「数学書」をご存じですか?
一説には、ユークリッド(紀元前300年頃に活躍したとされる古代ギリシャの数学者)の『原論』が聖書の次に読まれてきたといわれています。
人類史上2番目に読まれてきた本が、数学の本(かもしれない)とは驚きませんか?
『原論』は、書かれたのが紀元前3世紀頃と考えられていますので、歴史の長い本だから、ということも理由の一つではあるでしょう。しかし、『原論』は現在まで影響を及ぼす数学的内容を含んでおり、「数学とはどうあるべきか」を決定づけた一冊なのです。
平面図形に関する内容が有名な『原論』ではありますが、その影響は平面図形に限りません。紀元前から、あらゆるレベルで数学を学ぶ人の教科書であり、バイブルであり続けていることが、人類史上2番目に読まれてきた理由だと考えられます。
『原論』の内容は、それ以前から体系化されていた情報を、ユークリッドが「公理と定義をスタート地点」として、再纂編(さいへんさん)したものだと考えられています。
『原論』に書かれている公理の1つに、「2点が与えられたとき、その2点を通るような直線を引くことができる」があります。そして、この公理という大前提のうえで、定義を定めます。
続いて、定義の例を1つ挙げれば、「円は、1つの線に囲まれた平面図形で、その図形の内部にある1点から、それへ引かれたすべての線分が互いに等しいもの」という具合です。
数学の〈神髄〉とは
このように、『原論』以降の数学は、スタート地点を(公理と)定義という形ではっきりとさせ、そこから次々に定理を証明することが〈神髄〉になりました。神髄の「解像度を上げる」ことが、『中学数学で解く大学入試問題』の大きな目的の1つです。
現時点では、数学を学ぶときには「より基礎的な事柄から積み上げる」ことが大切だと理解してください(ただし、中学数学を超えているとはいえ、高校数学レベルでは一から十まで定義からスタート、とはいきません。たとえば、高校の微分積分は、厳密な証明抜きで「無限」を扱っています)。
それでは、「より基礎的な事柄から積み上げる」手始めとして、次の問題を考えてみましょう。
問題
1 +(-1)=0 をスタート地点として、
(-1)・(-1)=1
であることを説明せよ。
ヒント :「・」(積の記号)
「・」は積の記号です。すなわち、この(-1)・(-1)は(-1)×(-1)と同じです。
「基礎から積み上げる」ことの大切さ
1+(-1)=0の両辺に-1 をかけると、
1・(-1)+(-1)・(-1)=0・(-1)……A
1・〇=〇なので、
1・(-1)=-1
です。
式Aの右辺において、0・△=0なので、
0・(-1)…=0
です。よって、Aは、
(-1)+(-1)・(-1)=0
この両辺に1を加えると、
1+(-1)+(-1)・(-1)=1+0……B
式Bの第1項と第2項において、□+(-□)=0 なので、
1+(-1)=0
です。式Bの右辺において、◇+0=◇ なので、
1+0=1
です。よって、式Bは、
0+(-1)・(-1)=1
この左辺において、0+◇=◇ だったので、この式から、
(-1)・(-1)=1
「あたりまえ」だと思っても
スタート地点とした「1+(-1)=0」は、符号だけが異なる2数の和は0(の特別な場合)であることを示しています。
それに、
1・〇=〇……1にある数をかけても変化しない
0・△= 0……0にある数をかけると0
□ +(-□)=0……符号だけが異なる2数の和は0(1+(-1)=0 もこの一例です)
◇ +0=◇ ……ある数◇に0を加えても変化しない
といった、負の数どうしのかけ算よりもさらに「基礎的な事柄から積み上げる」ことにより、(-1)・(-1)=1を導くことができました。
基礎的な事柄から積み上げる
(-1)・(-1)=1
↑
1・〇=〇 0・△=0 □+(-□)=0 ◇+0=◇
このように、数学においては「基礎から積み上げる」ことが大切です。
さらに、この問題の場合に限らず、何かを学ぶときには、結果をただ記憶するだけではいけません。
知識が「点」でとどまることなく、「線」、さらには「面」へと広がっていくことを意識してください。
続いては、知識が「線」となった状態とはどのようなものかを確認するための問いに挑戦してみましょう。
問題
「正三角形は、二等辺三角形ですか?」
中学数学で解く大学入試問題
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