アダストリアは10月23日、自社ECの「.st(ドットエスティ)」の名称を「and ST(アンドエスティ)」に変更し、新たに「ファッショントータルプラットフォーム」として進化させる。それにともない、株式会社アンドエスティを完全子会社として設立し、12月1日に、自社EC事業を運営するアンドエスティ事業を吸収分割により移管すると発表した。23日に開催されたアンドエスティの事業戦略説明会では、アンドエスティの代表取締役社長に新たに就任した木村治氏のほか、アンドエスティの取締役に就任したアダストリアの執行役員を含む4人が登壇。アダストリアグループ全体としても、ファッショントータルプラットフォーム戦略を推進し、2030年には流通総額1000億円を目指すことを発表した。ブランドの開発から商品企画から販売までをグループ内で行うという同社のバリューチェーンの強みを最大限に活かし、B2Bのプロデュース事業や、ソリューション事業においても、アンドエスティ参画企業とのシナジーを追求する。

商品カテゴリーと体験価値の拡大

まず、アンドエスティの取締役CMOに就任した田中順一氏は、ECモール事業について説明した。商品カテゴリーの拡大と体験価値を向上していくことを1年間でさらにアップデートしていくと話している。

取締役CMO 田中順一氏

同社が会員を対象に実施したアンケートでは、扱っていない商品やブランドへの要望が多く寄せられたため、コスメや下着などをはじめとする新規パートナー企業として、17社、20ブランドが出店している。来春には、「ディーン アンド デルーカ(DEAN & DELUCA)」の出店が決まっており、これまでにない食品領域にも挑戦していく。また、リアル店舗の体験価値を高めるため、OMO型店舗「and STストア」の新規出店数を増やす。さらに、旗艦店を一等地にオープンし、ECをリアルに体験できるような店舗にすることで、新たな顧客誘致でOMOを加速させる方針だ。さらに、会員への特典として、3つのポイントシステムを開始する。現在ドコモと連携しており、すでにIDは270万を突破しているが、今後新たに楽天と連携し「and STポイント」「dポイント」「楽天ポイント」のトリプルポイントを実現していこうとしている。このシステムでは、3種類のポイントを同時に貯め、利用することが可能だ。

プロデュース事業とテクノロジー活用

次に、同社取締役CBOに就任した小林千晃氏は、事業やブランドの拡大を支援するプロデュース事業について、クリエイティブ面や販売促進などでの協業を通じて、クライアントの持つ可能性を最大化することを強調。ピーチ・ジョンとの協業では、アンドエスティを通して出店だけにとどまらず、アパレルのプロデュースや、販売促進も強めている。さらに、取締役CTOに就任した櫻井裕也氏はソリューション事業において、「テクノロジーを活用してアンドエスティを、より魅力的なプラットフォームに進化させることに注力する」と話す。たとえば、and STポイントの利用範囲を他社の店舗やECでも利用できるようにすることや、ブランドと商品と消費者をマッチングしパーソナライズできるようにする。データ連携や、物流倉庫の連携などのマーケットプレイス機能の提供や、クライアントがアンドエスティにさらに参画しやすくするなど、テクノロジーを活用し、B2C、B2Bともに新たなつながりを創出していくという。

取締役CTO 櫻井裕也氏

今回同社は、「みんなの銀行」との協働による口座決済サービス、ウォレット機能の提供により、ポイントの現金化や還元率の向上を図る。「今後は世の中にないような楽しいアンドエスティ経済圏を作っていきたい」と櫻井氏は話した。「多様なコンテンツ、サービス、企業、スタッフ、消費者などのコミュニティをアンドエスティでつなぎ、社員を含めたすべての人のファッショントータルプラットフォームになることで、アンドエスティを進化させていくことを目指している」と代表取締役社長の木村治氏は述べた。

代表取締役CEO 木村治氏

取材・文・撮影/坂本凪沙トップ画像/アダストリア