英南西部から大量に見つかったノルマン征服時代の銀貨に、8億円を超える値がついた/The British Museum

ロンドン(CNN)5年前に英イングランド南西部で出土したノルマン時代の銀貨が、これまで英国で発見された中で最も高価な財宝となった。歴史遺産の保護に取り組む地元の慈善団体がこのほど、埋蔵されていたこれらの銀貨を430万ポンド(約8億4700万円)で購入した。

2584枚の銀貨は、趣味で金属探知を行うグループ7人が、ブリストルの南約18キロに位置するチュー渓谷周辺で発見した。購入金額の半分は同グループが、残りの半分は銀貨が出土した土地の所有者が受け取る予定だ。

銀貨を購入した団体、サウスウェスト・ヘリテージ・トラストによると、銀貨の起源は1066〜68年前後。ノルマン人の征服と重なるこの年は、イングランド史の中で最も波乱に満ちた時期の一つに当たるという。

年代の最も古い銀貨1枚には、エドワード証聖王が表現されている。同王が跡継ぎを残さず66年1月に死亡したため、以後の時代は不安定化した。同王は3人の人物にイングランド王位を約束していた。ウェセックス伯ハロルド・ゴドウィンソン、 ノルウェー王ハーラル3世、ノルマンディー公ウィリアムの3人だ。

エドワードは死の床でハロルド・ゴドウィンソンを後継者に指名したが、新たに即位したハロルド2世は、王位を求める他の2人からの挑戦を受け、最終的に66年10月のヘースティングスの戦いでウィリアムに敗れた。

埋蔵された銀貨の意匠にも、当時の混乱が見て取れる。最古の1枚を除く銀貨の半数弱にはハロルド2世が、残りには次のイングランド王ウィリアム1世(=ウィリアム征服王)が描かれている。

サウスウェスト・ヘリテージ・トラストの考古学担当学芸員は団体のサイト上の動画で、「銀貨はイングランド史の分岐点にその起源を有し、サクソン人からノルマン人への支配層の変化を物語る」と指摘する。銀貨が埋蔵されたのは67年から68年にかけてで、ウィリアムに対する反乱が起きた時期に地元の司教が保管のため埋めたと考えられるという。

1000年近く前に使用されていた硬貨が見つかるのは極めて珍しい。今回発見された銀貨の数は、以前見つかったハロルド2世治世の硬貨の倍に上る。

銀貨は来月26日からロンドンの大英博物館で一般に展示された後、イングランド南西部の博物館に戻ってくる予定。