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 81年以来43年ぶりに実現するドジャースヤンキースのワールドシリーズ(日本時間26日開幕、7回戦制)を前に、両軍で監督経験があるジョー・トーリ氏(84)が本紙の取材に応じた。ヤ軍で世界一4度の名将は、大谷翔平投手(30)の活躍を絶賛。一方でまだ届かなく、目の前にある究極の勲章として、愛弟子である松井秀喜氏(50)が09年に獲得したワールドシリーズMVPを掲げた。 (取材・杉浦大介通信員)

 全米が興奮を隠せない。頂上決戦まであと4日。特に注目は大谷(54本)VSジャッジ(58本)で、50本塁打以上のワールドシリーズ(WS)での対戦は史上初。両リーグ本塁打王の対決も、56年のミッキー・マントル(52本、ヤンキース)VSデューク・スナイダー(43本、ドジャース)以来68年ぶり6度目で、所属チームの顔合わせも同じだ。56年はヤ軍が4勝3敗で制した。

 「多くの野球ファンにとって夢のようなシリーズになる。私が子供の頃はこの2チームがよくワールドシリーズで対戦していた」

 両軍のWS決戦は過去11度で、ヤ軍が8度制覇。ド軍の移転前、ブルックリン時代の40〜50年代に集中し、地元出身のトーリ少年を夢中にさせた。それでも84歳の名将は、今季の大谷からかつてない衝撃を受けた。

 「毎年とてつもないが、私の人生で見たことない活躍だ。パワーだけでなく59盗塁もするスピード。その上でピッチャーとしてまで抜群で、5ツールプレーヤーの概念をも超越した存在となった」

 ヤ軍で12年、ド軍で3年監督を務め、日本選手も多く指揮したが、中でも特別な存在が松井氏。今季、大谷は松井氏の通算175本塁打や、シーズン116打点など多くの日本選手記録を破った。

 「素晴らしいことだ。チームへの献身的姿勢と常にハードにプレーする姿には、松井と共通点があると思う。松井は4年目にケガするまで全試合出場を継続した。どんなサインでも出してくれて構わないと、起用法もいとわない。大谷同様、松井も私にとってはスーパースターだった」

 大谷が唯一届いていないのが目の前に迫るワールドチャンピオンであり、その座に導いた際に手にできるMVPという勲章だ。

 「松井の素晴らしさを示す勲章があるとすれば、09年に彼が受賞したワールドシリーズのMVPだ。いかに優れたプレーヤーかを示していた」

 松井氏は優勝を決めた第6戦の6打点など、打率・615、3本塁打の活躍で世界一をつかんだ。ヤ軍はその時以来のWS進出だ。

 「MLBにとって大谷の重要度は100%だ。現在、メジャーで最もエキサイティングな選手。そんな選手が米国でプレーすることに誇りすら感じる」

 大リーグ機構(MLB)副会長として野球の国際化に尽力した経験もあるトーリ氏らしく期待を寄せた。伝説のシーズンを締めくくる大団円、誰もが信じずにはいられない。

 ◇ジョー・トーリ 1940年7月18日生まれ、米ニューヨーク州ブルックリン出身の84歳。ブレーブス、カージナルス、メッツで主に捕手としてプレーし、カ軍時代の71年に打率.363、137打点で2冠王に輝きリーグMVP。通算2342安打、252本塁打。77年からメッツ、ブレーブス、カージナルス、ヤンキースドジャースで監督を歴任。最優秀監督に2度選ばれ、歴代5位の通算2326勝をマーク。14年野球殿堂入り。背番号6はヤ軍の永久欠番。

 ≪両軍対決「スター・ウォーズ」と表現≫ニューヨーク・ポスト紙は両軍の対決を人気映画の「スター・ウォーズ」と表現した。「MLBの重役も喜ぶ最高の顔合わせ」と興行としての魅力を強調した。90年代後半からの黄金時代のヤ軍は、金満補強ぶりに同映画で悪役側である「悪の帝国」とやゆされることがあった。一方でヤンキースタジアムではスタメン紹介の際、敵軍は帝国のテーマが流れ、自軍は主人公側であるジェダイのテーマが流されている。また、現在ヤ軍抑えのウィーバーは名前が同作の主人公ルークであることにちなみ、登板中にダース・ベイダーの呼吸音が流される。