国民は『勝った、勝った』の戦勝気分だが、勝ったのは日本海海戦だけであって、当時のロシア帝国相手に大陸で再び会戦すれば、勝利できるかどうか日本には不安があったと言われる。

 そうした事を踏まえて、日本側は樺太(今のサハリン)の南半分を獲得するが、大方の国民は「不十分」として、猛反発。これが日比谷焼打事件にまで発展し、小村の自宅も焼かれてしまう。

 時の政界の実力者、伊藤博文はポーツマスに出かける小村に、「小村君、苦労をかけるな」とねぎらったそうだが、小村はリーダーの一人として、その労苦に耐え、仕事を成し遂げてきた。

 世間に自分の仕事や成果を認められなくとも、「やるべき事をやる」という覚悟がリーダーには求められる。

 本人が生きている間には認められなくとも、死後、その事績が認められる。歴史がその事を証明するという事例は少なくない。

 そうした試練にも耐えられる構想力、ビジョンを国民に示し得るかどうかもリーダーの条件の一つで、決断力と、実行力が問われる。


人の力を掘り起こす!

 日本の国力をどう掘り起こしていくかという命題を今、わたしたちは抱えている。

 さいわい、企業人の士気はすこぶる高い。ゲーム、ネット広告で大企業に成長した50代のトップは、「若い人の力をどんどん掘り起こしていきたい」と後継者づくりに入った。時代はどんどん変化していく。

 創業者の域を越えるのは容易ではないが、「会社を持続させられる人を選びたい」と本人は語る。

 経済のソフト化、デジタル化が進む中で、経営のあり方もどんどん変わっていく。時代の変化にどう対応していくかで、企業の命題も変わる。事業の中身は変化していくわけだが、経営のカジ取りの基本は変わらない。「はい。基本軸はしっかりしていかないと」と件の創業者は語る。

 基本軸のある企業ほど強い。


日航社長・鳥取さんの対話

「経営と現場の対話を大切にしたい」─。日本航空社長・鳥取三津子さん(1964年12月生まれ)の社長就任時の第一声。

 鳥取さんは、同社初の女性社長。客室乗務員(キャビンアテンダント)の出身。旧東亜国内航空に入社し、その後、同社は日本エアシステムになり、2002年、同社は日本航空と合併。航空再編の嵐の中を生き抜いてきた人だけに、「芯の強い人」という評価もある。

「本当に、現場で働いている時は幸せでした」と鳥取さん。顧客への対応も大変な仕事だと思うが、「本当に楽しかったです」と振り返る。

 再編成の時も、とかく摩擦が懸念されるが、「対話を徹底してきました」と鳥取さん。経営の基本軸も、経営陣と現場の対話にあるとするのも、この時の体験が大きいのだと思う。価値観や信条の違いを乗り越えて、前へ進むことの大事さである。