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 (上)からの続き

 【川藤幸三氏(下) 球児にYELL】球児とは甲子園歴史館に行ったことがある。かつてのスター選手、歴代監督の展示を見ながら「カワ(川藤)さんとは村山さんの展示の前で話をしたかった。会いたかった人がいっぱいいますね」としみじみ話していた。40代のOBで、タイガースの歴史の重みを一番理解しているのは球児やと思う。

 藤村富美男さん、藤本定義さん、村山実さんの話は、特に真剣に聞いていたな。阪神でプロ入りした投手では、その村山さん以来の監督就任。これも何かの縁やと思う。

 ワシもタイガースの語り部として、歴史を伝えることが役目やと思っていた。球児は言いよった。「本当の阪神ファンは歴史をよく知っている。僕はまだ浅い。でもカワさんの後は僕に任せてください」。任せることのできる男や。

 球児との共通点は高卒入団というところやな。阪神というところはいろいろあるんよ。高卒、大卒、社会人というところでな。岡田前監督でも分かるように、大卒の人間の人脈は凄い。とてもかなわない。高卒としては有無を言わせない実績を積むしかない。球児はそれを知って、ここまで来た。並大抵の根性じゃないぞ。球児という男は。

 歴史館で球児は言っていた。「これは選手が知らなければいけない。歴史館では新人の見学会があるけど、本当はメインの選手が来て、自分が今、何合目にいるか。歴史から現在地を知ってほしい」と言っていた。球児監督は、それをするやろ。近本、大山、佐藤輝を歴史館にもう一度、連れて行くはずや。

 歴史を知っているからこそ、歴代の監督に天国と地獄があることを球児は知っている。いい時ばかりじゃない。批判されたり、足を引っ張られたり。勝ち続けた監督はいない。覚悟の上での就任。あとは応援するしかない。

 これから、どんなチームをつくるのか。どう勝たせるか。それは球児監督の仕事。来年は球団90周年。100周年に向けた流れを球児にはつくってほしい。それだけが願いや。今年でOB会長は退くが、来年も試合前はベンチに座って、球児がやろうとしていることを、じっと見ているつもりや。 (タイガースOB会会長)