【レビュー】「これで良いじゃん」が進化、アンカー“究極の音質と静寂”Liberty 4 Pro使ってみた
「Soundcore Liberty 4 Pro」
アンカーが10月3日に発売した完全ワイヤレスイヤフォンの最新モデル「Soundcore Liberty 4 Pro」を使ったのでレビューをお届けする。アンカーの謳い文句どおり、音質とノイズキャンセリングのパフォーマンスが高く、コストパフォーマンスも優秀なモデルに仕上がっていた。
Liberty 4 Proは、グローバル販売数で累計200万台以上の販売を記録しているという完全ワイヤレスイヤフォン「Soundcore Liberty 4」のバリエーションモデルで、「音質とノイズキャンセリング(NC)性能の両軸でSoundcore史上最高のクオリティを追求し、究極の音質と静寂をもたらす最上位モデル」と位置づけられている。価格は19,990円。
カラーバリエーションはミッドナイトブラック、パールホワイト、スカイブルー、ディープグリーンの4色で、今回はミッドナイトブラックモデルの提供を受けている。
音質面では、2基のダイナミックドライバーをひとつのモジュールに統合して同軸配置する「A.C.A.A」が最新の4.0に進化。2基のドライバーそれぞれに最適な信号を送るデジタルクロスオーバーテクノロジーを初搭載し、「高音は繊細ながらマイルドに、低音は力強くてリッチながら明瞭に、あらゆる音域で歪みの少ないバランスの撮れた音質を実現」したという。搭載するドライバーは10.5mm径と4.6mm径の組み合わせ。
ノイズキャンセリング面では、アンカー独自のノイズキャンセリング最新バージョンとなる「ウルトラノイズキャンセリング 3.5」も搭載された。内蔵のセンサーが毎分180回、周囲の騒音レベルと装着状態を検知し、つねに理想的なノイズキャンセリング強度を保つように自動調整される。
新たに気圧センサーを使って、飛行機内などの気圧に対してもノイズキャンセリング強度を最適化できる飛行機モードも利用できるようになっている。
Bluetooth 5.3準拠で、コーデックはSBCとAAC、LDACをサポート。ヘッドトラッキングに対応した独自のマルチモード3Dオーディオ(音楽/ムービー/Podcast/ゲームモード)も利用できる。連続再生時間はイヤフォン単体で最大7.5時間、ケースが約30時間(ともにNC ONの場合)。IP55の防水防塵仕様。
充電ケースにスクリーンを搭載。バッテリー残量やANC/外音取り込み量を確認・調整できる
ANC/外音取り込み量の調整はケースのタッチバーで行なう
充電ケースも大きく進化した。初めてスクリーンとタッチバーを搭載し、別途スマホアプリを立ち上げることなく、ノイズキャンセリングや外音取り込みの強度調整、バッテリー残量の確認などが行なえる。アプリから設定すれば、ANC強度以外にも3Dオーディオや飛行機モードの設定もできるほか、スマホカメラのリモートシャッターとして使うこともできる。
Liberty 4 Proを使ってみた
Liberty 4シリーズ。左からLiberty 4、Liberty 4 NC、Liberty 4 Pro
実機を手にして、まず気がついたのがケースのサイズ感。改めて兄弟機のSoundcore Liberty 4/Liberty 4 NCと並べてみると、新モデルのLiberty 4 Proはケースが一回り大きくなっていることが分かる。ケースの蓋はスライドして開ける仕組みで、筆者の場合はサイズが大きくなっても片手で開け閉めできたが、手の小さな人は少し戸惑うかもしれない。
アプリ「Soundcore」からはケースのディスプレイに表示する項目を変更できる
またメディア向け発表イベントの際は、その操作感に少し“クセ”を感じたケースのタッチバーだが、改めて触ってみると特に違和感もなくノイズキャンセリング/外音取り込みの度合いを操作することができた。実は10月3日夜にスマートフォンとペアリングしてアプリを立ち上げたところ、イヤフォン/ケースのファームウェアアップデートが提供されていたので、ここで操作性が改善されたのかもしれない。
2週間の試用中、2度のファームウェアアップデートがあった。画像は2度目のアップデート「3.20」の概要
ちなみに、イヤフォン側は10月15日に確認したところ追加のファームウェア「3.20」も提供されており、カスタムEQのバグ修正や外音取り込みモードの最適化などが行なわれている。発売直後ということで、短期間でファームウェアが更新されているため、しばらくはこまめにアプリをチェックしたほうが良いかもしれない。
Liberty 4シリーズのイヤフォン。どれもスティック型で長さもほぼ同じだが、仕上げが異なる
イヤフォンは従来のLiberty 4シリーズと同じスティック型。ただし操作方法は感圧+スワイプ式になっており、1回押し込みで再生/停止、長押しでノイズキャンセリング/外音取り込みのモード切り替え、上にスライドで音量アップ、下にスライドで音量ダウンといった操作ができる。
この操作のうち、1/2/3回押し込み時と長押し時の動作についてはアプリから好みのものに変更可能。イヤフォンの左右で別の動作を割り当てることもできる。スワイプ時の動作についてはカスタマイズできない。
iPhone 16 Proとペアリングして、さまざまな楽曲を聴いてみた
さっそく音楽を聴いてみた。今回は私物のiPhone 16 Proとペアリングして、Apple Musicを音源にしている。
「Mrs.GREEN APPLE/ライラック」ではクリアなボーカルと適度に沈み込みつつタイトさもある低音が相まって、小気味よく音楽を楽しめる。このクリアな高域と迫力ある低域という“現代的なドンシャリ”とも呼べる音のバランスは、Liberty 4シリーズに共通する特徴とも言える。
ただ高域は少しピーキーな印象で、大森元貴のボーカルが全体的に金属質に感じられ、サ行などが耳に刺さるような印象があった。このあたりはドライバーのエージングが進んでいけば変化するポイントだが、それまで高域の刺さりが気になる場合はアプリ「Soundcore」のイコライザー(EQ)調整機能を活用して、高域を抑えめにしても良いかもしれない。
同じくMrs.GREEN APPLEの「青と夏」では、バックで流れるシンバルの音にピーキーさが残るものの、ボーカルの固い印象は薄くなり、大森の歌声と迫力ある低音がマッチして、思わず身体を動かしたくなる。「米津玄師/がらくた - JUNK」ではボーカルの固さは一切なく、腰の座ったどっしりとした歌声と、量感がしっかりあるドラム・ベースの音色で、楽曲の厚みがしっかりと感じられた。
女性ボーカルの楽曲として「tuki./晩餐歌」を聴いてみると、クリアなボーカルとズンッと迫力ある低音が心地良いが、ブレスやサ行などで少し高域にピーキーさを感じる部分もある。ただ、こちらもEQで微調整すればピーキーさを抑えられる印象だった。
最終的に筆者が落ち着いたEQ設定。ピーキーな高域を下げつつ、楽曲によっては低域も“マシマシ”すぎることがあったのを削っている
ほかにも「Ado/ドライフラワー」や「櫻坂46/I want tomorrow to come」、「三浦大知/Horizon Dreamer」など、さまざまな楽曲を聴いてみたが、楽曲やアーティストによっては高域が刺々しく感じるものもあった。最初はふだんよく聴く楽曲で自分好みのEQを作っておいたほうが良いかもしれない。
通勤中などにも使ってみた
“ウルトラノイキャン 3.5”に進化したノイズキャンセリングも、通勤や外出時の電車内で試してみると、ノイズキャンセリング強度マックスの状態で音楽を聴いていると、カーブなど特に騒音が大きくなる場面を除けば、走行ノイズはほとんど気にならない。
カーブの騒音も「キーッ」という金属が擦れる音が少し遠くで聞こえる程度に感じられた。アップルやソニー、ボーズなどノイズキャンセリングに定評のある他社製品と比べれば効きは弱いが、日常使いなら必要十分な性能に感じられた。
兄弟機との違いは?
左からLiberty 4、Liberty 4 NC、Liberty 4 Pro
このLiberty 4 Proが登場したことで、Liberty 4は全3モデル展開となったので、改めて各モデルの特徴を簡単に整理しておこう。
2022年10月発売に登場した「Soundcore Liberty 4」は心拍計測などヘルスモニタリング機能も備えた“欲しい機能全部入り”のモデルで、価格は14,990円。ドライバーは9.2mm+6mmダイナミックドライバーを組み合わせた「A.C.A.A 3.0」を採用し、ノイズキャンセリングは周囲環境に合わせて自動で強度調整される“ウルトラノイキャン 2.0”を採用する。NC ON時の再生可能時間はイヤフォン単体最大7時間、ケースが24時間。イヤフォンの操作は感圧式で、IPX4の防水仕様。
2023年7月に登場した「Liberty 4 NC」は長時間再生とノイズキャンセリング機能に特化したモデルで、価格は12,990円。ドライバーはA.C.A.Aではなく、11mm径ダイナミックドライバー1基のみで、ノイズキャンセリングは周囲環境と装着状態に合わせて最適化される“ウルトラノイキャン 3.0”を採用する。NC ON時の再生可能時間はイヤフォン単体最大8時間、ケースが約40時間。イヤフォンの操作はタッチ式で、IPX4の防水仕様。
そして今回のLiberty 4 Proは上述のとおり音質とノイズキャンセリングの“究極”を追求したモデルという位置づけで、A.C.A.A 4.0や“ウルトラノイキャン 3.5”など、兄弟機種を上回る機能を搭載した。イヤフォンの操作も感圧+スワイプ式となっている。
3モデルもあれば、音質やノイズキャンセリング性能の違いも気になるところ。どちらも提供された実機が手元にあるので使い比べてみた。
発売当初は「これでいいじゃん」と唸らされたLiberty 4だったが、最新モデルを使ったあとに音を聴いてみると、高域と低域が極端に盛られている“ドンシャリ”傾向が強く感じられる
たとえば「Mrs.GREEN APPLE/ライラック」はLiberty 4 Proよりもさらに一歩高域がシャープで、その“シャリシャリ感”に耳が痛く感じるほど。Liberty 4 Proは「好みでEQ調整したほうがいい」と感じたが、無印のLiberty 4は「EQ調整しないと厳しい」という印象に変わっており、最新モデルの進化度合いを強く感じた。
ノイズキャンセリングについても、Liberty 4 Proより効果は抑えめな印象で、電車内では車体がレールの連結部分を乗り越える“ゴトッゴトッ”という音が耳に届く感覚だった。
Liberty 4 NCは、唯一ドライバー構成が異なるのも影響しているのか、高域のシャープさはほとんど感じられない。「Mrs.GREEN APPLE/ライラック」も大森のボーカルに金属質な固さはなく、ストレスなく楽しめる。その一方で低音の沈み込みはシリーズでもっとも深く、よりベースやドラムの迫力を味わえる。
肝心のノイズキャンセリング性能はLiberty 4 Proに肉薄している印象で、電車では「コーッ」という車体の風切り音がうっすらと聞こえる程度で、走行ノイズなどの低音成分はほぼ消えていた。
5,000円値上がっても最上位モデルにふさわしい1台
「究極の音質と静寂をもたらす最上位モデル」として登場したLibrary 4 Pro。充電ケースにディスプレイとタッチバーを搭載するなど“飛び道具”的な進化に目が行きがちだが、音質・ノイズキャンセリングともに最上位モデルにふさわしい進化が感じられた。
音質もLiberty 4シリーズの特徴である“現代的なドンシャリ”という傾向は変わっていないが、高域・低域の強調感が抑えられ、よりバランスが整ったサウンドに近づいた印象がある。
また充電ケースのディスプレイ、タッチバーも機能が必要最低限に絞られているため、想像以上に便利。特にこれまではアプリを立ち上げなければ分からなかったバッテリー残量がひと目で確認できるのは、特に使い勝手が良く感じるポイントだった。初めての1台はもちろん、いざというときのバックアップ用として備えておく際にも活用できる進化だ。
性能がアップした分、価格も初代モデルから5,000円高い19,990円になっているのは気になるところだが、それでも他社の上位モデルよりはかなりリーズナブル。アンカー製品は、Amazonなどで不定期にセール対象となっているので、そのタイミングを逃さないよう、“欲しいものリスト”に入れておいて損はないモデルだろう。