【鉄道会社は辞めるな君】現役鉄道マンも「さすがにうんざりです」《面倒な乗客ワースト10》…5位「時計を設置しろ」、2位「人身事故でタクシー代を請求」を押さえ、1位だった「やりがちな行為」…!

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鉄道会社で働く職員は、その利用者の多さからやっかいな客に遭遇する頻度が高い。やりたい放題、わがまま放題の利用客に現場はひどく疲弊している。

では、彼らは一体どんな被害を被っているのか。

前編記事『現役鉄道マンが明かす「面倒な乗客ワースト10」…「交通系ICカードの残高不足で駄々をこねる」「駅をキャバクラと勘違いしている」の〈まさかの順位〉』に引き続き、鉄道会社の現役社員である「鉄道会社は辞めるな君」がランキング形式で現場の窮状を紹介する。

「俺の言う通りにしろ」

6位は「自分のルールを押し付けてくる乗客です。

特に多いのが60代以上の男性。ルールや規定が定められているため対応できない旨を伝えても、「そんなことどうでもいいから俺のいうとおり対応しろ」と無理難題を押し付けてくるケースがとにかく多いです。

例えば、領収書の宛名を「上様」で発行できない旨を伝えても、宛名を「上様」で発行しろと主張を変えようとしません。

いくら乗客にルールを説明しても一方的な主張を延々と話されるので、改札前に人が滞留してしまい、他の乗客の迷惑になるどころか、駅係員の通常業務にも支障をきたします。正直、とてもやっかいです。また、別の乗客もストレスが溜まるため、旅客同士のトラブルが発生する確率も上がります。負の連鎖が続き、良いことは何一つありません。

「どうにか再設置するように」

ここでワーストランキングも折り返し地点。5位は「時計を設置しろと迫ってくる乗客です。

昨今、本社の指示で駅備え付けの時計が続々と撤去されていますが、乗客から「時計がなくなり非常に不便している」とご意見をもらうことがちらほらあります。

「現場判断では対応できかねますので、上司には申し伝えておきます」と伝えても、「そんな言い訳は聞きたくない。とりあえず明日までに設置するように。なんとかしろ!」とヒートアップすることも。

つい最近も管理職に取り次いだ後、2時間ほど揉めていました。結局このケースでは、本社に意見として伝達はするが、すぐに設置することは不可能である旨を粘り強く話してどうにか事なきを得ました。

そもそもスマートフォンが普及している現代、本当に駅構内に時計の設置が必要なのか疑問です。それなのに、時計を再設置する、しないという馬鹿げた話のために、管理職は2時間も説得活動を行い、さらに本社への報告書も作成する。はっきり言って、無駄です。

この時計のケースに限らず、本社は利便性と合理性のバランスを考えながら駅の設計をしています。それにも関わらず、一部の乗客は駅を自分だけに都合の良い「我が家」にしようと働きかけてきます。

そのたび徒労を強いられるのが管理職です。若手もその姿を身近で見ており、駅の管理職になりたくないと考える職員が増えています。本社の人事労務も非常に危機感を持っています。

運転士の盗撮映像がインフラを壊す

4位は「駅構内で選挙演説している立候補者」です。

これは非常に悪質で、私たち職員も頭を抱えています。何度注意してもやめず、改札付近で演説を続けるのです。

これは特定の政党に偏っているというよりかは、個人の特性が強いと思っています。鉄道営業法第35条に演説の禁止が規定されている旨を伝えても、「あなたの会社には許可を得ている」と平気で嘘をつき、そのまま演説を続ける立候補者も少なくありません。

このように他の鉄道利用者の迷惑をかえりみない人間が国民の負託を受けた地方議員・国会議員になってしまっている現状を私は憂いています。「こいつは法律を守らない何でもありの候補者だ!」と有権者へ周知したいくらいです。苛立ちと悲しさ、両方を感じます。

さて、ここからはいよいよワースト3の紹介。3位は「居眠りなどを盗撮してネットにあげる乗客です。

居眠り運転をする乗務員の盗撮映像を、SNSでご覧になったことのある方は多いのではないでしょうか。ただ、この行為はとても問題のある行為だと考えています。注意喚起でもなんでもなく、投稿者が自身の承認欲求を満たしているだけとしか思えないからです。

もちろん乗客の安全を預かる運転士の居眠りは、批判されても仕方ありません。ただ、本当に危険だと思うのであれば、まず運転室の窓ガラスを叩いて起こすというのが正しいアクションではないでしょうか。その後、好きなだけ文句を言ってください。

今般、鉄道業界も人手不足です。運転士養成には約800万円がかかり、養成期間も約1年と長期にわたります。1人の運転士を養成するには莫大な費用と時間がかかるのです。乗客からの過度な監視を苦にして運転士を志望しない若者が増えてしまえば、それこそ乗客および鉄道会社の大きな損失になると考えております。

すでに運転士は不足しています。なり手がこれ以上減るようなことがないように盗撮をするのではなく、居眠りをしている運転士がいたらまず声をかけるなりしてもらえないでしょうか。

「前はやってくれたんだけど!」

2位は「人身事故後にタクシー代を請求してくる乗客です。終電間際に人身事故が発生した場合によくトラブルになることが多いのがこの事案です。

終電になるはずの電車が人身事故でなくなったため、「自宅に帰れないからタクシー代が欲しい」と迫ってくる乗客が多くいます。この行為の恐ろしいところは、同じ境遇の乗客もここぞとばかりに一致団結して迫って来ることです。はっきり言って暴徒に近く、恐怖を感じます。

タクシー券の発行は各社によって対応が大きく異なります。そもそもそういった対応をしない鉄道会社もあれば、対応する鉄道会社もあります。ただ、後者の場合でもケースバイケース。必ず発行してもらえるわけではありません。

しかし、こうした乗客はJRも私鉄も同様の取り扱いだと考えており、そのような制度はないと説明しても「前はやってくれたんだけど!」と聞く耳を持とうとしません。

乗客からすると終電がなく、自腹を切りたくないため必死です。ときにはタクシー代をもらうまで何時間も粘ってくる乗客もいて、運が悪いと対応に時間を取られてそのまま朝を迎えることもあります。仮眠時間が十分に取れなかったとしても、駅係員などはそのまま通常業務が待っています。

身も蓋もないことを言えば、人身事故は鉄道会社の責任で発生しているわけではありません。その上で、鉄道会社それぞれに対応ルールがあります。ご自身のわがままを押し通そうとするのはやめていただきたいです。

さらなる大事故が起こる可能性も

そして不名誉なワースト1位は「人身事故発生時に急かす乗客です。

人身事故が起こった際、早く電車を動かすように乗務員に野次を飛ばす乗客はとにかくやっかいです。過去には、乗客に詰め寄られた結果、逃げ場を失った乗務員が高架駅のホームから約7m下の道路に飛び降りるという騒動もありました。先ほどの2位の乗客同様、完全に暴徒です。

事故が起こった場合は警察の現場検証が必要です。これはある程度の時間を要し、最短でも1時間はかかります。

また、過去の事故事例では、乗務員の心理的不安による大事故も発生しています。乗務員を急かしてもよいことは一切ないということです。むしろ焦らせることにより、確認不足が生じ、より大きな事故を起こすリスクさえあるのです。

だから人身事故が発生しても絶対に乗務員を急かさないでください。日頃から乗務員は安全確保と運行時間にかなり神経質になっており、乗客以上に早急に動かしたいと考えています。本当に早く運転再開を行って欲しいのであれば、乗務員の指示に従い、野次を飛ばさないことが大切です。

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