当事者が語る「ADHDの自分が社会にどう適合するか」の前に、もっとも考えるべき「大切なこと」
チャンネル登録者数110万人(2チャンネル合計)の動画クリエーター、ナカモトフウフが、それぞれの視点から、夫・ダイスケさんのADHDについて綴った『ADHDの旦那って意外と面白いんよ 本気で発達障害に向き合った夫婦の物語』。
夫の理解不能な行動に振り回された妻・ちゃんまりさんとADHD当事者ダイスケさんの日常から、ADHDとの向き合い方のひとつの例が見えてくる。ADHD当事者は何を考え、どう向き合っているのか。
悩み続けるがまんの日々から抜け出すための僕の常識
僕の親の口癖でもあるのだが、重要なのはまず常識を疑うことからだと僕は考える。
本当に一般社会や組織の中で生きていくしか道はないのか?
本当に友達が多い方が幸せなのか?
本当にみんな人に迷惑をかけないで生きているのか?
本当に自分はポンコツなのか?
本当はもっと自分に合う生き方があるんじゃないか?
こんな些細な疑問からでいいです。まず、疑問を持たないことには何も始まらない。疑問を持って開き直れば、あとは自分の理屈をこねくり回すだけだ。
例えば、僕のこねくり回した理屈で一般社会で生きるとこうなる。
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上司:「お前、今日もミスしてるぞ! 何度も言わせるな!」
自分:「すいません(広い間口で雇用してるんだから俺みたいな特性のやつも何人かは入ってるよ、そりゃ。仮に全員健常者だったとしても、人的ミスのリスクがある部分はシステム化した方が総合的にミスは減るし、長い目で見ればその方が会社としても高効率じゃないか?)」
上司:「お前また同じところミスしてるぞ! 何度も同じこと言わせんな!」
自分:「すいません(今月で辞めよ。ここに僕の居場所はない。職は失うけど、自分に合わない業種はよくわかったから、別のトライをしてみよう)」
一般的に考えれば屁理屈だが、僕にとっては根拠ある理屈だ。多くの人は、「あなたは特別なバイタリティを持っている人だからそういう考え方ができるんだよ」と言うが、それは違う。
障害が原因でミスをする事象をごく当たり前のことと捉え、常に一般常識に疑問を持つ習慣をつけることで、出す答えが変わっただけだ。
自分に都合の良い考え方だが、まずはそれくらい開き直って考えないと、発達障害でずっと悩み続けるがまんの日々になってしまう。
もちろん、こういった捉え方と選択には職や友達を失うリスクも伴う。
僕の場合は職場でのトラブルで毎回のようにクビになり、20代に入ってからは徐々に日雇いや派遣の仕事、新薬の治験アルバイトとして体を売ることしかなくなっていった。見事に社会不適合者を体現する人生となったわけだ。
ラッキーだった僕の選択
日雇いの仕事や新薬の治験アルバイトは人と長期的な関わりを持つ必要がないので、まさにADHD患者が苦手な長期的人間関係の構築や、自分に向いていいない仕事を覚える時間が減ったのだ。
いわゆる、親や教師から習った一般社会でリスクとされている「不安定な生活」「貧困」などは、僕にとってはゴミクズほどに小さなリスクだ。
社会に合わせて苦しみながら人生を浪費する方が大きなリスクだ。
そう悟ってから、今まで悩みに費やされていた時間は未来を考える時間へと変わった。
ADHDの自分は何をやっても続かないと悩んでいる人も多いと思うが、そういうわけではないことを理解して欲しい。「ADHDの自分が社会にどう適合するか」そこにフォーカスする当事者は多いが、本当にフォーカスすべきは自分という人間を理解し、自分の居場所をみつける、もしくはつくること。
僕の場合は失敗の数だけ自分を知ることができ、最終的に30歳を超えてやっと自分に向いている動画クリエーターという道をみつけることができた。
付き合うのが難しいADHDとの接し方
ADHD患者との接し方について僕の持論を述べます。
まず大前提として、ADHDの人とは基本的に距離を置いた方がお互いにストレスが少なく済むので、必要以上にかかわらないことをお勧めします。
当事者が言うのもアレですが、ADHDは、遠くから見る分には魅力的に映る部分も多々あるが、近付けば、近付くほど付き合い方が難しくなる発達障害。
半端な気持ちで仲良くすると、時間やお金にルーズだったり、自分ルールを優先する気質に対して不義理に感じる人も多く、お互いが関係性に苦しみ嫌いになる傾向が強い。
そして、本人も心の底ではそれを理解して、常にそのループの中で生きています。
ADHDをいい方向に向かわせるためには、本人の気付きが必要。友人や同僚としてADHD患者に関わる場面がある人は、ADHDに向かない仕事を振らないとか、やれることはその程度かなと。
家族や恋人であれば、最大限に障害を理解する姿勢を見せ、ADHD当事者が自発的に何か気付きを得るまで忍耐強く待つことしかないと思う。
自分がいくら理解を示しても、ADHDの相手がいい方向に向かわないケースもあります。そのときは、第一に自分のことを考えてください。
二人揃って壊れてしまっては、もう修復はできないので、時には理解を諦めて自分が壊れる前に逃げる覚悟も必要です。
…つづく「ナカモトフウフ」夫のダイスケさんの記事は「風俗街の高校に進学、社会になじめずホームレスへ…35歳のADHD男性が告白する「思春期の過酷」…僕は恥ずべき人間だった」でもどうぞ。
交際から合わせて約7年の間に起きたことや学んだことをADHDの当事者(夫)とパートナー(妻)それぞれの目線で激白。ADHDという障害に悩み、向き合い、乗り越えるまでのリアルな日常をマンガとともに紹介している。