息子も夫も逝き、1人の大晦日を覚悟。そこに娘夫婦の招きがあり、おむつをリュックにいざ出発。娘の不味い雑煮を食べながら思い出すことは…【2023編集部セレクション】
2023年下半期(7月〜12月)に配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をご紹介します。(初公開日 2023年4月9日)******時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは東京都の70代の方からのお便り。息子も夫も逝き、大晦日は一人かと寂しく思っていたTTさん。娘から声がかかり、娘のところで正月を過ごすこととなりましたが――。
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娘夫婦と過ごす正月
息子も夫も逝って、大晦日は一人で過ごすのかとあきらめていた。すると娘から電話があり、「正月は私のところにおいで」と誘われ、本当にうれしかった。着替えや下着、おむつをリュックに入れ、どっこいしょと背負って娘の家へ出発。ムコ殿が優しく迎え入れてくれた。
元日の朝。お年玉を娘夫婦や孫娘に渡すと、思ったより喜んでくれる。孫娘はお返しにと素敵なハンカチをくれた。ちょうど新調しようとしていたのでうれしい。
孫娘は恋人と同棲を始めたというので、なにかコーヒーセットでも、とお祝い金3万円を渡す。当然、大変な喜びよう。
すると娘があわてて飛んできて「そんなことしなくてもいいのに」と言ったが、もっと素直に「ありがとうお母さん」と言えないものかと思う。
元日のお墓参りで
娘の手製の雑煮を食べたが、ちっともおいしくなかった。でもそんなことを言おうものなら、烈火のごとく怒るに決まっているので、生煮えの餅を黙々と食す。そして、みんなで支度をして、息子と夫の墓参りへ。
墓前では「昨年は仲よくお雑煮を食べたね、お父さん」と涙があふれてきた。すると娘がしみじみ言う。「私、あまりお父さんのこと好きじゃなかった」。驚いて娘を見る。「お母さんだってそうでしょ。昔のことをグダグダ言ってさ」。
ちゃんと私と夫のやりとりを見ていたとは。なんだか恥ずかしい。じつは、夫からチクチク言われなくなってホッとした自分がいたのだ。「でも、お父さん、さびしいよ」と手を合わせた。
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