この記事をまとめると

■スバル・レヴォーグレイバックの新車販売が堅調な数値を見せている

■1990年代にブームになったステーションワゴンだがミニバンやSUVにすっかり食われてしまった

■根強いニーズが期待できるステーションワゴンは完成度の高いクルマが多くねらい目

レオーネやレガシィから続くスバルのステーションワゴンの歴史

 最近街なかを歩いていると、スバル車のなかで、結構な頻度でレヴォーグ派生のクロスオーバーSUVとなる「レヴォーグレイバック(以下レイバック)」を見かけることに気がついた。レイバックは2023年10月25日に正式発表されている。そこで2023暦年締め下半期(2023年6〜12月)と、2024暦年締め上半期(2024年1〜6月)のレヴォーグ全体の新車販売台数を自販連(日本自動車販売協会連合会)統計で確認した。

 2023暦年締め下半期の累計販売台数は7459台(月販平均約1243台)、2024暦年締め上半期の累計販売台数は1万3737台(月販平均約2289台)となった。レイバックの販売計画は月販1300台となっており、また本格的なレイバッグのデリバリー開始が2024年1月以降になっていることを考えると、統計を見る限りは標準車のレヴォーグもレイバックに食われることはなく堅調な販売を続けながら、新規需要としてレイバックが販売台数に上積みされているように見える。

 フォレスターがすでに海外で6代目新型車がデビューしているなか、日本国内ではいまだ末期モデルを継続販売中なので、フォレスター購入希望者がレイバックに流れてきているのかとも考えてフォレスターの販売統計を見たが、2024暦年締め上半期累計台数でも2023暦年締め上半期比で92.6%となっており、大きく台数を落としていなかったので、世界的にはレガシィ・アウトバックの人気が高いなか、日本でもステーションワゴンにクロスオーバーSUVのテイストを加えたモデルというのは魅力的に映る人が意外なほど多くいるといえるのかもしれない。

 日本でも1990年代前期にはステーションワゴンの人気が高まり、各メーカーが豊富なラインアップを揃えていた。日本でのモータリゼーション初期のころには、「貨客兼用」ということで、ライトバンがもてはやされた。モデルによっては商用車版を先にデビューさせたあとに乗用車版を追加発売するケースもあった。

 その名残りもあるのか、その後もステーションワゴンは「貨客兼用車」という視点をメインにラインアップされてきた。そして1990年代に入り、キャンプなどアウトドアレジャーブームが沸き起こると、当時は「クロカン」などとも呼ばれたSUVと並ぶほど、乗用ユースメインでステーションワゴンの需要が拡大していった。

 しかし、その後にミニバンブームが巻きおこる。令和のいまでも日本では「ファミリーカーの定番」として需要が定着していくなか、ステーションワゴンは姿を消していき、いまでは日本国内で日本車でステーションワゴンといえば、トヨタ・カローラツーリング、同カローラフィールダー、そしてスバル・レガシィ アウトバック、同レヴォーグ(レイバック含む)ぐらいになってしまっている。

 カローラ系のステーションワゴンについては、とくに5ナンバーサイズのカローラフィールダーはビジネスユースも目立っている。事実、トヨタのウェブサイトでは、フィールダーがビジネスカーのコーナーにも掲載されている。

根強いニーズがステーションワゴンの需要を支える

 また、ツーリングについては、海外仕様と比べると全長が短くなっており、ステーションワゴンとして考えると荷室スペースも含め使い勝手が悪く、結果的に短期間で乗り換える人も多いと聞く。

 筆者の私見でいえば、過去にスバルがラインアップしていた「インプレッサ・スポーツワゴン」のようなキャラクターと捉えたほうがいいだろう。つまり、「荷物が多く積めるハッチバック」である。

 日本のカローラツーリングのボディサイズは全長4495×全幅1745×全高1460mmとなっている。一方でたとえばイギリスでラインアップされている、ツーリングスポーツのボディサイズをみると、全長4650×全幅1790×全高1460mmとなっており、全幅が45mm拡大、全長が155mm延長されている。全長に関してはグローバル仕様のセダン(イギリスはラインアップされていないのでタイ仕様のカローラ・アルティス比)より20mm長くなっている。

「欧州での販売はステーションワゴンがメインとなるようです。かつて欧州でラインアップされ、日本でも欧州から輸入して販売していたアベンシスのポジションを補完する意味もあり、サイズアップしているようです」とは事情通。

 ドイツ国内のタクシーといえば、かつてはメルセデス・ベンツEクラスセダンやステーションワゴンばかりであったが、いまではカローラツーリング スポーツも大活躍している。イギリスでも「カローラ コマーシャル」というツーリング スポーツベースのモデルをラインアップしており、ライドシェア車両などとして活躍しているようである。HEV(ハイブリッド車)でもあるし、実用性の高いステーションワゴンとして欧州市場では重宝されているようだ。

 全体的には世界に目を向けてもクロスオーバーSUVに押され気味に見えるのがステーションワゴン。しかし、東南アジアなどの新興国では、自動車市場の成長とともにステーションワゴンに注目が集まっている。中国・上海汽車が東南アジアではMGブランドとしておもに乗用向けのESやビジネスユースをメインとしたEPといったBEV(バッテリー電気自動車)ステーションワゴンをラインアップしている。

 とくにEPは、モデル自体も古いので完全にビジネスユースメインかなと思いきや、街なかではプライベートユースでも結構乗られている様子がうかがえる。モーターショー会場に展示しても、目新しさはないのだが、ステーションワゴン自体が珍しいこともあるのか、来場者の多くが立ち止まって展示車をチェックしていることが多い。

 また、BMWのMパフォーマンスやアウディRSといった、ハイパフォーマンスなステーションワゴンのモーターショー会場への出品も、タイやインドネシアのオートショーへ出かけると目立ってきている。

 ただし、前述した中国MGのような新規参入例はかなり珍しいものともいえ、ステーションワゴンをラインアップするブランドは世界的に見ても少ない。そのなか、スバルは古くはレオーネ、そしてレガシィツーリングワゴンでノウハウを培い「スバルのステーションワゴン」というものを確立させており、それが世界でも認められているといえよう。

 トヨタもいまはカローラ系のみとなってはいるものの、かつては幅広いラインアップを構築していたこともあり、いまのカローラツーリングのように、仕向け地に合わせたボディサイズを用意するなど、手慣れた様子を見て取れる。

 市場規模は、今後も爆発的な回復を見せることはまず期待できないものの、根強いニーズが期待できるステーションワゴン市場(新興国の一部では注目されてきているし)は、まさに「継続は力なり」ではないが、ラインアップを続けてきたブランドが大切にしてきたカテゴリーともいえるので、完成度が高く、もっともねらい目のボディタイプといえるかもしれない。