リーグ優勝が決まり、胴上げされる巨人の阿部監督(上)=28日、マツダスタジアム

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 プロ野球セ・リーグは巨人が4年ぶり39度目の優勝を決めた。

 就任1年目で栄冠をつかんだ阿部監督は、若手に成長を促し、主力選手には競争意識を植え付けることで、新旧融合のチームをつくり上げた。

 ◇失敗も成長の糧に

 巨人は若手が要所で活躍し、リーグ優勝に大きく貢献。ただ、シーズンを通して好調が維持できたわけではない。阿部監督は失敗も成長の糧になると信じ、温かい目で見守ってきた。

 4月26日のDeNA戦。10試合連続ホールド中だったドラフト1位新人の西舘が打たれ、チームは完敗した。それでも「悔しい思いをして、プロは甘くないというのは分かっただろう」と責めなかった。

 試合に勝ちながら若手を育てていくのは、監督の重要な仕事。成功に導くだけでなく、時には「満塁ホームランを打たれてほしかった」と言うなど、教訓になる経験を期待することもあった。

 積極的な姿勢でのミスはとがめないが、覇気の感じられないプレーは許さない。ベースカバーに何度も遅れた先発投手の井上を厳しく叱責。2軍監督時代から若手に接してきた分、親心のような感情もある。9月16日。なかなか勝てなかった赤星について、杉内投手チーフコーチに「何とか1勝させてやりたい」と漏らした。思いは通じ、その日に赤星は20試合目の登板で今季初勝利をつかんだ。

 腹をくくった起用もあった。2年目の浅野は8月の再昇格直後は打撃が好調だったが、徐々に停滞。守備のミスも繰り返した。それでも「スターになってほしい」と将来性を見込み、右翼で辛抱強く使った。優勝争いの経験は、貴重な財産になるからだ。

 試練を乗り越えた若手は目覚ましく成長した。優勝決定までに自己最多の8勝をマークした井上は「来年に生かしてこその経験。来年絶対に、今年以上の成績を残したい」。早くも連覇が懸かる来季を意識するほど、プロとしての自覚が芽生えている。