三角形の辺の長さが25cm、24cmの場合、もう一辺の長さは…実は5秒で解ける、意外な方法

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突然ですが皆さん、この図の問題を解いてみてください。

いかがでしょうか。突然三角形の辺の長さを求めろと言われ、何をすれば良いか分からないという人も多かったのではないでしょうか。もしかしたら、なんとなく解き方は覚えているけど、数字が大きくて暗算では難しい、とお思いかもしれません。

しかしこの問題も、実は東大生は5秒で即答できてしまうのです。

筆算を使わないとなかなかできなさそうな問題を、どのように暗算でこなすのか。今回も東大生の思考回路を覗いてみましょう。

三平方の定理とは

皆さんは、「三平方の定理」という数学の公式を覚えていますか?別名「ピタゴラスの定理」とも呼ばれるため、その名前で記憶しているという人もいるかもしれません。この公式は中学3年生の数学で学習するものであり、数学の中で最も有名な公式のうちの一つと言えるでしょう。

「三平方の定理」とは、三角形の辺の長さの関係を表す公式です。直角三角形であれば必ず成り立つ関係式となります。直角三角形の中で一番長い辺である「斜辺」の2乗が、他の2つの辺それぞれの長さの2乗の和に等しくなるという式であり、これを用いると未知の辺の長さを求めることができます。

この「三平方の定理」は、古代ギリシアの数学者・哲学者であるピタゴラスが発見したものとされており、その名前も付けられています。しかし、古代バビロニアや古代インドでもこの定理は発見されていたという説も提唱されています。どれも今から2000年以上前の紀元前の話になるので、さまざまな説が唱えられているようですね。

紀元前からこの定理は長きにわたって、建築や測量、天文観測などの幅広い分野で用いられてきました。日常生活でも度々登場するシンプルな図形である「三角形」に関する定理だからこそ、数学という学問以外の場所でも活躍の場が多いようですね。

ちなみに、日本では「三平方」の定理と呼ばれるのが一般的ですが、この名前は末綱恕一という日本の数学者によって名付けられたものです。この命名がされたのが第二次世界大戦中であったため、文部省(現:文部科学省)から「敵性語を用いない名前をつける」という依頼がされたのです。

「平方メートル」「平方根」などもあるように、とある数字の2乗のことを「平方」と言うため、3つの辺の長さの平方についての関係式ということで「三平方の定理」という名前となりました。多くの人が何気なく使っている公式の名前にも、こんな意外な背景があったのですね。

三角形の辺の長さの比

さて、話を戻しましょう。辺の長さの比を表す「三平方の定理」の公式ですが、よく出てくる辺の長さの組み合わせがいくつか存在します。その中で一番メジャーなものが、このような「3:4:5」の三角形です。

この図形は見覚えのある人も多いと思いますが、計算してみれば分かる通り、3の2乗が「9」、4の2乗が「16」、5の2乗が「25」となるため、

3²+4²=5²

という式が成立し、三平方の定理が成り立っていることがわかります。この組み合わせは非常に多く出てくるため、覚えておくとパッと答えが出せるようになるでしょう。

5:12:13の三角形

実は、有名な辺の長さの比は他にもいくつか存在します。例えば、「5:12:13」の三角形です。

こちらはパッと見て成立しているかが分かりにくいので、一つ一つ計算してみましょう。

5²=5×5=25

12²=12×12=144

13²=13×13=169

25+144=169 より

5²+12²=13²

このようになるため、これも同じく三平方の定理が成り立っていることがわかります。

実は東大生をはじめとした多くの受験生はこのような受験でよく出る辺の長さの組み合わせを覚えているのです。

小学生で「九九」を覚える勉強の延長線のような感じで、よく使う計算を覚えています。もちろん記憶の容量は限られているので、どんなものでも覚えられるわけではありません。だからこそ、「この公式はどれくらい使うんだろう」「この計算って何回くらい出題されるんだろう」などと考え、必要なものから順に優先順位をつけて覚えているのです。これはなかなか賢い記憶の方法ですよね。

そのため、今回の冒頭で出題した問題に関しても、辺の長さの比をあらかじめ覚えていたという人もいるかもしれません。

計算のコツ

ここまでこの記事を読んで、このように思った人もいるでしょう。

「なんだ、結局覚えないといけないのか」

「記憶力が良い人が勝つってことね」

しかし、全くもってそんなことはありません。1から計算をする上でも、テクニックがいくつも隠されているのです。

この求め方を知ることで、覚えた内容、理解した内容を忘れずに定着させることにもつながります。

ここからは、どのようにこの辺の長さを素早く求めるのかを説明します。

この問題では、斜辺の長さが25cmであることと、残りの2つの辺のうちの片方が24cmであることが分かっています。この2つの情報と「三平方の定理」の式を用いて、残り1つの辺の長さを求めれば良いのです。今回は、求めたい辺の長さをX cmとしてみましょう。

ここまでの情報を式で表すと次のようになります。

X²+24²=25²

移項して

X²=25²-24²

つまり、「25²-24²」がどんな値か計算できれば、その平方根をとることで「?」の値が求められます。

しかし、24、25といった大きな数字の2乗はそんな簡単には計算することはできません。そのまま計算してももちろん良いのですが、時間がかかってしまったり、計算ミスをしてしまったりする可能性が高まります。

ここで効果的なのが、同じく中学3年生で学習する「因数分解」です。

a²-b²=(a+b)(a-b)

このように、2つの数字の2乗の差は、その2つの数字の足し算と引き算の結果をかけたものになります。この公式を利用すると、

X²=25²-24²=(25+24)(25-24)=49×1=49

となり、あとは「七七=49」という九九の一つを使えばXの値が7であることが簡単に求められるのです。

冒頭の問題の答え:「?=7」

いかがでしょうか。この問題を「5秒」で解くと言われると、とんでもない暗算方法が出てくるのか、と思った人もいたかもしれませんが、実はこのように問題を簡単に解けるように分解するテクニックを用いていたのです。

難しい計算を、いかに簡単な計算の組み合わせにするか、という考え方はこの問題に限らず数学において非常に重要になります。

おわりに(身近に役立つピタゴラスの定理)

この「三平方の定理」は、冒頭でも述べた通り主に建築や測量といった分野で用いられています。例えば皆さんが一度は使ったことがあるであろう「カーナビ」にも、この式が使われているのです。

カーナビ(カーナビゲーション)は人工衛星を用いて車の現在地を観測しています。簡単に言えば、「人工衛星の位置」「人工衛星の地面上での位置」「車の位置」の3点で直角三角形を作り、電波受信のタイミングなどの情報と、三平方の定理から分かる関係式を使って車の位置をリアルタイムで割り出しているのです。この計算はコンピュータで行われるため、もちろん我々では到底できないスピードで演算をしているのですが、行っている計算は今回この記事で紹介したものと同じなのです。

中学生で習うような数学でも、このように世の中に大いに役立っている公式などは数多く存在します。もしこの事実が面白いなと思った人は、ぜひ周りの人に話してみてください!皆さんが楽しく数学に触れられることを祈っております。

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