まさか「習近平大通り」が出現… 中国に完全支配された「ヤバすぎるカンボジア経済」の現実と、”謎の新興中華系マフィアP”が襲う「恐ろしい悲劇」…!

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第1回記事『元「関東連合」見立真一も合流か…「犯罪者の天国」カンボジアに群がる日本裏社会の住人ら…その腐敗の限りを尽くした闇底』もあわせてお読みください。

カンボジアにいれば安全

アンコールワットが聳え立つシュリムアップ。ここには世界からバックパッカー含め多くの観光客が訪れ、高級ホテルから安宿までが多くの人で賑わっている。今年の7月ここのゲストハウスに滞在する入れ墨姿の二人の日本人がいた。

ゲストハウスの日本人オーナーK氏はカンボジアで美人局事件や恐喝などを繰り返しているいわくつきの人物。彼にこの二人組が「俺たちは関東連合の関係者だ。毎日、見立真一と連絡を取り合っている。奴はいまここに潜伏しているぞ、と酔って自慢げに吹聴したのです。見立真一はここを拠点に近隣のタイやラオスを周回し闇ビジネスを展開しています」こう指摘するのはカンボジア在住40数年の日本人・依田氏(65歳・仮名)だ。

彼は元日系企業の駐在員でいまは飲食店を経営しながら毎日朝から晩までネットでカンボジア在住の日本人反社グループの動きを追っている。見立に関する情報も逐一大使館には報告しているという。

「彼らはカンボジアにいれば安全だ、と思って何ら警戒心なく自分たちの行動をSNSで毎日アップしているんですよ」という。それらを細かくチェックするといかにカンボジア社会に日本の反社グループたちが自由に根付いているかよくわかる、という。

依田氏によると、彼らは特殊詐欺のような犯罪も行っているが,一見まともな飲食店や企業も経営している。前回紹介した悪徳警察官チャンらと組んで不動産会社や同じく日本に向けた研修生などの人材派遣業も行っている。

犯罪王国と謳われた国

昨年、ハワイで入国禁止になった日本人女子のような海外出稼ぎ風俗嬢たちもカンボジアを拠点にしてアジア各国に斡旋しているらしい。プノンペンでの高級ソープランドの募集や「ラオスに行けば最低保証300万円」などとカンボジア発でアジアやドバイなどへの日本人出稼ぎ嬢募集を堂々とSNSで発信しているのは暴力団N川会の幹部と言われるXのサイトだ。もちろん、カンボジアもラオスも売春は違法である。

これだけ荒稼ぎをしている彼らにとって判決を金で買える「犯罪王国・カンボジア」はアジア犯罪ネットワークを構築するうえで最高のロケーションというのは納得いく。そして、これだけ日本の裏社会の人間たちが社会を支配すると、当然、周辺で働く日本人の被害者たちも多く生まれてくる。

日本から高収入の募集につられてカンボジアに出稼ぎにきたが、彼らの店が怖くなって逃げだした日本人の店長や調理人が監禁暴行をされたり、プノンペンで人気の日本人の店が彼らに目をつけられ、詐欺に嵌められて借金漬けにされ店を乗っ取られる、などの事件も頻繁に起こっている。もちろん警察は買収されているのですべて泣き寝入りだ。

彼らと一緒に悪事を働いていた人間たちも仲間同士の金銭トラブルや仲間割れで失踪したり変死したりしている。「保険金詐欺で消されたという噂もあります」と依田氏は言う。昨年4月、リゾート地シアヌークビルで日本人の特殊詐欺グループ19人が摘発された件も、彼らの犯罪ネットワークからするとごく一部に過ぎないことが見えてくる。

「彼らは特殊詐欺や闇ビジネスで稼いだ数十億円もの金を仮想通貨で洗浄しカンボジアやラオス、タイなど政府関係者と裏でつながって開発予定の値上がりする土地を買い占めています。もちろん違法売春、ドラッグ、人身売買などあらゆる悪事と並行しながら」と言うのは、一時、反社グループと一緒に不動産詐欺を手伝っていた、と言う吉田氏(44歳・仮名)だ。いまは完全に足を洗って真面目にマレーシアで働いている。

「ルフィー事件」の黒幕といわれるフィリピンの裏社会のボス・JPドラゴンの吉岡竜二やドバイの「ガーシー事件」の関係者たちとも内通している、といわれガーシーもカンボジアへの逃避を一時真剣に考えたらしい。

中国に支配されている

彼らは日本の組織暴力団のような縦社会のしがらみなどまったくない。合理的なビジネス感覚でアジア各国に根付いた反社グループと簡単に繋がったり離れたりしている。司法が腐敗している国で、膨大な資金力を蓄え日本の警察捜査の限界を熟知している彼らの闇の力は肥大化する一方だ。いま、それをさらに膨張させるのではと危惧されているのがカンボジア最大の裏組織といわれる謎の新興中華系マフィアPグループとの関係だ。

今年の7月19日、プノンペンを全長約50キロにわたって貫く幹線道路が開通した。この名前はなんと「習近平大通り」。命名式典には、昨年政権を移譲されたフンセン前首相の長男フン・マネット新首相が参加し「習主席のカンボジアへの発展への歴史的貢献に感謝します」と最大の賛辞を贈った。因みに在カンボジアの中国大使館の前の通りは「毛沢東大通り」と命名されている。

まさにカンボジア経済は中国に支配されている、と言う証だろう。昨年度のカンボジア経済の海外投資額の約70%近くが中国からの投資だ。習近平が進める「一帯一路」構想の主要参加国でもある。この中国とカンボジアの深くて複雑な関係を如実に語っているのが、首都プノンペンから南西に高速道路で2時間ほどの美しいリゾート地「シアヌークビル」の数年間に亘った絵に描いたような興亡風景だろう。

カンボジアの静かな寒村に美しいビーチが連なる「シアヌークビル」にチャイナマネーが押し寄せたのが2015年頃。「シアヌークビルを第2のマカオに」というフンセン前首相の掛け声であっという間に雨後の竹の子の様にホテルやカジノ、ショッピングモールが建設された。

シアヌークビルが廃れたワケ

もちろん中国側投資家や政府関係者と思惑を共有していることは言うまでもない。人口20万人ほどの街に50万人以上の中国人が流れ込み街は中国語の看板で溢れ、高級レストランでは毎晩札束が舞い、1LDKのマンションの家賃は250ドルから2000ドルの8倍に跳ね上がる。彼らが熱狂したのが普通の「リアルカジノ」とそれ以上に現金が飛び交った「オンラインカジノ」だ。ホテルの一室に卓を置いて中国本土の無数の客とネットで繋がり膨大な利益を上げていたのだ。

もちろんこれには多くの中華マフィアが介在し、中華系オンラインカジノ界のゴッドファーザーこと「余凌雄」もねずみ講詐欺で稼いだ数百億ともいわれる資金を持ってカンボジアに移住した。シアヌークビル空港には連日、チャーター便で現金をトランクに詰め込んだ怪しげな中国人が飛来したという。しかし、僅か4年でこの青天井のような夢のバブルは消えていく。

2019年フンセン前首相が突然「中国人犯罪が多発している」との理由でオンラインカジノ禁止令を出したのだ。そして翌年にはコロナ禍が始まる。中国人は出国禁止になり潮を引くように一気にホテルの灯は消え余凌雄はじめほとんど黒社会の人間も消え去った。そしてコロナが終った回復への期待を無残に打ち砕いた中国不動産バブルの崩壊。中国からの投資は完全に冷え込んでしまったのだ。いまシアヌークビルには公式発表だけでも建設が止まった未完成ビルが362棟、未入居ビルが176棟。廃墟と化してしまったのだ。

真実は報道されない

しかし、僅か数年間で消えた夢のバブルの地は、いまカンボジア経済を影で操ると噂される謎の中国人を生み出した。フンセン前首相や息子のフンマネ現首相の最高顧問を務めいまや、数多くの商業ビルやマンション、ショッピングモールなどの不動産、銀行、ホテルやカジノ、レストランチェーン、遊覧船やプライベートジェットサービス、映画制作会社、などカンボジアの主要マーケットのほとんどの業種に進出している巨大企業「プリンスグループ」を率いる弱冠36歳の「陳志」だ。

シアヌークビルにバブルが訪れた2015年、28歳の陳志はプリンスグループを設立する。そして狂乱のバブルの波に乗って不動産業で成功を収める。ここまではある意味、2011年に福建省から裸一貫でプノンペンに移り住んだ中国人の若者の立志伝中のストーリーだろう。しかし、このプリンスグループの膨大な売り上げや財務状況、業務内容はまったく不透明で数多くの黒い噂に満ちている。オンライン詐欺、人身売買、マネーロンダリング、麻薬取引、未解決殺人事件…。

しかし、カンボジアではこういった報道はまったく表にでない。それどころか「例えばプリンス系のビルで普通の火災や事故が起こっても絶対そのビルはテレビも映さない。新聞にもプリンスの1文字も出ない。ここでは完全に『アンタッチャブル』な組織なんです」と吉田氏は言う。しかし、最近、アメリカのメディアが厳しく追及し、中国政府の公安当局も動き出すようにその巨額の闇資金は徐々に姿を現しだしている。そして最近、その謎のプリンスグループと日本の反社グループが接近しだしたのだ。

次回記事『日本政府が「犯罪王国カンボジア」に6000億円超の援助…「そのほとんどがフンセン一族の収入になっている」ヤバすぎる実態』に続く。

日本政府が「犯罪王国カンボジア」に6000億円超の援助…「そのほとんどがフンセン一族の収入になっている」ヤバすぎる実態