秋の京都旅、最適な電車は「阪急、京阪、それともJR」?多様な座席指定車両と「得意なエリア」から分析してみた

写真拡大 (全3枚)

7月21日、阪急京都線に有料座席指定サービス「PRiVACE」がデビューした。「PRiVACE」の登場により、大阪〜京都間を走る阪急、京阪、JRの各社に座席指定車両が運行することになった。

一方、阪急、京阪、JRは京都側のターミナル駅にて、「強いエリア」と「弱いエリア」が存在する。そのあたりの事情を加味しながら、大阪〜京都間の鉄道の使い方を考えてみたい。

三種三様の座席指定車両

阪急、京阪、JRは大阪〜京都間に座席指定車両を設定しているが、同じ座席指定車両といっても実態は三種三様である。

まずはデビューしたばかりの阪急の「PRiVACE」から。「PRiVACE」は特急系種別(特急、通勤特急、準特急)の一部に連結されている。現在は1時間あたり2〜3本の設定だが、2025年度には1時間あたり4〜6本となる予定だ。

車内は3列(1列+2列)のリクライニングシートが並び、プライベートを重視した座席設計となっている。追加料金は全区間一律の500円だ。

大阪〜京都間において、座席指定車両の老舗は京阪の「プレミアムカー」だ。デビューは2017年なので、今年で8年目を迎える。

同車は特急、快速急行、快速特急「洛楽」、ライナーに連結され、2025年秋をめどに一部編成について1両から2両に増備する。車内は「PRiVACE」と同じく3列(1列+2列)のリクライニングシートを基本とするが、グッズ販売を行うなど、観光要素が強いといえる。追加料金は400〜500円だ。

JRは一部の新快速に「Aシート」を設定。車内は4列(2列+2列)のリクライニングシートが並ぶ。

2024年8月現在、「Aシート」連結の新快速は6往復にとどまるが、10月・11月の3連休を中心に1往復が臨時で追加される予定だ。追加料金は全区間一律の840円だが、チケットレス指定席券だと600円で済む。

京都側の「強い」「弱い」

京都側において阪急が最も強いエリアは嵐山である。京都線桂駅から嵐山線が分岐し、終着駅の嵐山駅から渡月橋まで徒歩5分だ。また、駅周辺からは西芳寺(苔寺)や華厳寺(鈴虫寺)に向かう京都バスが出発する。

京都駅から分岐するJR嵯峨野線にも嵯峨嵐山駅が存在する。しかし同駅は嵐山の中心地から少し離れる。大阪梅田から嵐山の場合、JR経由は遠回りになり、運賃も阪急の方が安い。嵐山へは阪急が便利だ。

また、西院駅は映画村や北野天満宮へ向かう嵐電との接続がスムーズだ。ただし、昼間時間帯の西院駅は特急通過駅なので、桂駅で準急に乗り換える必要がある。

終着の京都河原町駅は祇園に近く、京阪祇園四条駅へも徒歩圏内だ。四条通の地下を走ることから、京都市内中心部に強いのも阪急の特徴といえる。一方、鴨川の東側は地理的に弱い。京都河原町駅から京都市バスを利用することになる。

京阪は鴨川沿いを南北に走る。最も強いエリアは鞍馬・貴船エリアだ。

終着の出町柳駅で鞍馬・貴船エリアへ向かう叡山電鉄に接続する。叡山電鉄は京阪の子会社だ。その他、京都国立博物館、三十三間堂は七条駅から徒歩圏内にあり、祇園四条駅は八坂神社から近い。また、「祇園四条」「神宮丸太町」「清水五条」のように、観光客にわかりやすい駅名も京阪の特徴だ。京都市内の駅名改称は2008年に行った。

一方、京阪は鴨川の西側が弱い。対抗策として、七条駅から梅小路へ向かう京阪バス「ステーションループバス」がある。京阪電車を利用すると、ステーションループバスの一部区間で割引が適用される。

JRが強いエリアは梅小路エリアだ。梅小路には京都水族館や京都鉄道博物館がある。最寄駅はJR嵯峨野線の梅小路京都西駅であり、京都駅から1駅だ。一方、JR京都駅は京都市南側に位置し、観光名所から遠いというイメージがあった。

しかし、そのイメージも交通機関の充実により、払拭されつつある。それが、6月からスタートした土休日運行の京都市バス「観光特急バス」だ。

ルートは「清水寺・祇園・銀閣寺ライン」と「清水寺ライン」の2種類が存在し、共に京都駅前を起点とする。前者は五条坂(清水寺)、岡崎公園、銀閣寺前へ向かい、後者は五条坂(清水寺)まで行く。観光特急バスは観光地以外のバス停は通過する。五条京阪前といった他線と接続するバス停も通過し、鉄道路線と接続するバス停は京都駅前のみとなる。

しかも、京都駅前のバス停はバスターミナルとなり、京都観光ビギナーの方にもわかりやすい。親切なバス案内スタッフもいる。

このように「京都市内」といっても、訪れるエリアにより阪急、京阪、JRを使い分けることが重要だ。また、京都観光ビギナーか否かでも変わってくる。バス路線網の充実により、単純に所要時間と運賃だけで、京阪間の鉄道を比較する時代は終わりを迎えているような気がしてならない。

中国人観光客が、日本の電車・バスに「感動している」意外なワケ