(C)2016「君の名は。」製作委員会

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新海誠監督による2007年の人気アニメーション映画『秒速5センチメートル』が日本国内で実写映画化されると報じられた。新海誠作品としては初の実写化作品とされているが、これより先に、『君の名は。』(2016)のハリウッド実写化企画が始動していた。

『秒速5センチメートル』の国内実写版は2025年秋を予定しているというから、先発企画『君の名は。』ハリウッド版は実質的に追い抜かれると見られる。なかなか進捗が聞こえない『君の名は。』の経緯をまとめる。

『君の名は。』ハリウッド実写化が最初に伝えられたのは2017年9月。日本での同作公開からわずか1年ほどのことだった。当初は『スター・ウォーズ』新3部作のJ・J・エイブラムスが製作を、『メッセージ』(2016)のエリック・ハイセラーが脚本を執筆するとされた。スタジオはパラマウント。

『君の名は。』の物語は、日本の都市と地方との関係や田舎に伝わる伝承、歴史を背景にしながら、2011年に発生した東日本大震災の影響をも含んだものだ。あえてハリウッドでの実写化を託したのには日本側の東宝による狙いがあったという。当時、脚本のハイセラーは「彼ら(東宝)は、“日本での実写映画が必要ならば自分たちで作るだろう”と言っていました。西洋の視点を通した『君の名は。』が求められているんです」と。

2020年にはようやく監督が。アジア系の一家がアメリカでの生活に奮闘するA24作品『ミナリ』で大きな注目を集めたフィルムメーカーだ。ところが翌年になって、スケジュール都合としてアイザック・チョンが。しばらくして、後任監督に、『ブラインドスポッティング』(2018)『ラーヤと龍の王国』(2021)の。新監督のもとで、脚本の改稿作業が行われた。

この頃から、コロナ禍や脚本家ストライキによってスローダウン。プロデューサーを務める川村元気は2023年10月に「ゆっくりではありますが、着実に前に進んでいます」とし、プロデューサーのJ・J・エイブラムスとともに企画自体は存続していることを伝えていた。

ここに来て『秒速5センチメートル』の国内実写化が伝えられたことで、こちらの進行が優先される可能性があるだろう。おそらくだが、最初に『君の名は。』をハリウッドで実写化すると企画した2017年当時から、エンターテインメント業界の風向きが大きく変わっていることを、東宝側も重視しているのかもしれない。2019年の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が非英語作品ながら初めてアカデミー作品賞とカンヌ最高賞パルム・ドールに輝き、東宝としても『ゴジラ -1.0』がアメリカで大ヒット。さらに『ドライブ・マイ・カー』(2021)がアカデミー賞で作品賞含む4部門にノミネートされた注目や、のエミー賞で日本の俳優陣や製作陣が高く評価された件もある。

これまで“ハリウッド実写化”には大きな夢が詰まっていたが、今や日本製作の作品でも、じゅうぶん世界に勝負できるようになった。『君の名は。』ハリウッド版企画を傍に『秒速5センチメートル』国内実写化を進める東宝には、そのような展望があるのではないだろうか。