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内閣府が公表した「令和6年版高齢社会白書」によると、昭和25年は現役世代12.1人で1人の受給世代を支えていたのに対し、令和5年は2.0人で1人を支えるようになったそう。将来<年金の減少>が懸念されるなか、社労士YouTuberとして活躍する社労士みなみさんは「手間や労力をかけずに『もらえるお金』『増やせるお金』はかなりある」と語っています。今回は、みなみさんの著書『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』から一部引用、再編集してお届けします。

【書影】「年金+ちょっとした工夫」で、第二の人生を楽しく充実させる!社労士みなみ『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』

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定年後も働いた方がいい5つの理由

「定年後も働いた方がいいでしょうか?」

そんな質問を受けることがあります。私は、定年後も働けるなら働いた方がいいと思います。70歳までは働くことをお勧めします。

定年後も働いた方がいいのは、いいことがたくさんあるからです。

(1)収入が増える
(2)健康保険料を減らせる
(3)健康になれる
(4)元気とやりがいを見つけられる
(5)ちょっとした収入の差でも生活が大きく変わる

人生100年時代といわれるようになりました。100年生きると考えると、60歳、70歳になったとしても老け込むのはまだ早いのです。

これから人生はまだまだ続きます。家に引きこもっているよりも、働いたほうが何かといいことがあります。

定年制を定めている企業の約8割は60歳定年ですが、多くの企業が、60歳を過ぎても再雇用契約や嘱託(しょくたく)契約など雇用形態を改めて、働き続けられるようになっています。

また、2025年4月からは、65歳までの継続雇用制度が義務化されるため、働き続けたいと希望すれば65歳まで働くことができるようになります。

実際、65歳を過ぎても働いている人はたくさんいます。人口に占める労働力人口の割合である労働力人口比率にみると、65〜69歳は52%。2人に1人は働いていることになります。

政府による支援も

60歳を過ぎても働くことを、政府も後押ししています。まずは収入の面です。

もしも、あなたが60歳を迎えて、働き続けようかどうか迷っているとすれば、理由のひとつは、雇用形態が変わることによる収入減でしょう。多くの場合、再雇用や嘱託契約になると、それまでの給与から3〜4割減るといいます。

同じ仕事を続けるのに給与が下がれば、誰でもモチベーションが下がります。

働きたいけど、働く意欲がわかない。

そんな人たちを応援する制度が、少なくなる給与を補填(ほてん)してくれる「高年齢雇用継続給付金」です。

給付金ですから、該当する人は、申請すれば誰でももらえます。しかも、非課税です。

60〜65歳限定の給付金ですが、その間は、給与以外に、税金がかからないお金を国からもらえるということです。

ただし、この制度は、2025年に60歳に到達する人から、給付率が15%から10%になり、給付額が減ります。65歳定年が義務化され、高齢者の雇用が安定するまでの特別措置だと思われます。

もらえる権利があるうちに、しっかりもらいながら働き続けるのが、賢い選択でしょう。

もらえるお金はどう決まる?

給付金をもらえる人は、60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金と比べて、75%未満になった人たちです。例えば、60歳時点で月給48万円もらっていた人が、60歳以降の賃金が月給36万円未満になったらもらえるということです。

定年後も働いている人たちの話を聞くと、75%未満という条件を満たす人はかなりの割合でいるようです。


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もらえるお金は、賃金の低下率によって決まります。

具体的には、60歳時点の賃金より61%以下にまで落ち込んだ場合は、賃金の15%を補助。61〜75%未満の場合は、賃金の15%以下の給付金が支払われます。

60歳到達時の賃金月額が48万円で、60歳以降の賃金が29万円だったとします。低下率60%ですから、支給率は給与の15%になります。

もらえるお金は、29万円×15%で4万3500円。65歳までの5年間満額でもらうと、総額261万円です。

1年あたり52万2000円のプラスですから、大きなサポートです。

60歳で必ずやるべきこと

この給付金をきっちりいただくには、60歳の時点で必ずしておかなければならないことがあります。

それは、会社を通じてハローワークに60歳時点の月額賃金を登録しておくこと。気をつけなくてはならないのは、この制度があまり浸透していないことです。実は、会社によっては、労務・総務担当者がこの制度を知らないこともあるようです。

「定年後も同じ会社に継続雇用になったから、総務の人がやってくれる」と安易に考えていると、手続きをされていないことがあり得るのです。

人任せにせず、給付金の対象になるのかどうか自分で確認し、勤務する会社の担当者にきちんと念押ししましょう。

この制度の時効は2年です。その期間内であれば支給申請は可能なので、もらい忘れに気をつけてください。

※本稿は、『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』(アスコム)の一部を再編集したものです。