「尿」の臭いがキツい…実は“膀胱炎”&“腎盂腎炎”の疑い 受診目安を泌尿器科医が解説
排尿時に、普段よりも尿の臭いがきついと感じたり、変わった臭いがしたりすることはありませんか。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。病気の可能性や受診の目安について、「腎・泌尿器科おおねクリニック」(京都府城陽市)院長で、泌尿器科専門医の大嶺卓司さんに聞きました。
食べ物が原因で尿臭がひどくなる場合も
Q.尿の臭いがきつくなることがありますが、なぜなのでしょうか。考えられる原因について、教えてください。
大嶺さん「通常、健康な人の尿の臭いは、無臭かごく軽いアンモニア臭がする程度で、あまり気にならないことが多いです。
腎臓が健康なら、体外に排出されるまで尿は無菌状態で、尿の成分である尿素と体外の細菌が反応して分解されると、アンモニアが発生します。公衆トイレで強いアンモニア臭が発生しているのを感じたことはないでしょうか。そのような臭いが排尿直後から感じられる場合は要注意です。
尿の臭いの感じ方には個人差があり、慢性的になると感じない人もいますが、家族や知人などから指摘される場合は注意が必要です。臭い以外では、尿の色の透明度もポイントになります。
健康な尿の色は淡い黄色をしていますが、これはウロビリンという物質の色でもあります。ウロビリンとは、肝臓で破壊された赤血球のヘモグロビンが代謝されてビリルビンという成分に変化した後、腸内でウロビリノーゲンになり、そのまま尿中に排出されて酸化されたものです。
おおよそ一定速度で生成されているといわれているため、水分摂取量が少なく、発汗量が多かったり、尿が濃縮されたりすると、濃い黄色から山吹色、時には茶褐色に近くなることがあり、特に脱水の際には尿臭が強くなることもあります。尿が透明ではなく、混濁している場合は要注意です。
尿臭にはいろいろありますが、臭いが強い食べ物を食べたことが影響している可能性が考えられます。コーヒーやカレー、ニンニク、ニラ、アスパラガスなどは、特に尿臭が強く出やすい飲食物です。
また、飲食物に含まれる香料の中には、体内で分解されないものがあったり、体内で代謝された結果、臭いを発したりする場合がありますが、直前に食べたものと同じような臭いがして、時間の経過とともに消失する場合は、問題がないケースが多いと思います。ただ、臭いが持続する場合は注意を要します」
Q.では、排尿時に尿の臭いがきつくなったり、変わった臭いが出たりすることが多い場合、病気の可能性はあるのでしょうか。
大嶺さん「その可能性はあります。例えば、アンモニア臭がきつい場合は、膀胱(ぼうこう)炎や腎盂(じんう)腎炎、尿道炎などの尿路感染症が疑われます。
また、尿から甘い臭いが生じる場合、尿糖が増えたことが原因と考えられ、糖尿病が隠れている場合があります。体内で脂肪分から生成されるケトン体が増えると、尿の臭いが甘酸っぱくなるほか、メープルシロップのような臭いがする場合は、遺伝性の疾患が疑われます。
このほか、ネズミの尿臭やカビの臭いと表現される特殊な病気の場合があるほか、炎症が強い場合、腐った臭いと表現されることもあります。血尿を伴っているような場合で、腐敗臭などがあれば膀胱がんの可能性があるほか、排尿障害などがあり、治療せずに放置すると感染結石が生じることもあるため、注意が必要です。
糖尿病が重症化すると、脂質を分解して生じる代謝物のケトン体が、再び甘酸っぱい臭いを生じさせます。糖尿病でなくても、過度な糖質制限ダイエットを行っていると、ケトン体が排せつされ、排尿時に甘酸っぱい臭いが生じるため、注意が必要です。肝機能異常の場合、アンモニアを分解する機能が低下していると、尿のアンモニア臭が強くなります。
臭いの原因が飲食物の場合は、水分をしっかり取れば、尿の排出に伴い、時間の経過とともに消失します。ただ、臭いが持続する場合は検査が必要になります」
Q.尿の臭い以外で泌尿器科を受診する目安について、教えてください。
大嶺さん「尿臭以外に、『褐色の尿や血尿、混濁尿が出る』『普段より頻回に尿意を感じる(頻尿)』『尿が出にくく感じる(排尿障害)』『排尿時に痛みが走る(排尿時痛)』『排尿後、尿が残っている感じがする(残尿感)』『発熱』などの症状がみられる場合は、受診を勧めます」