中屋トンネル周辺の安否不明者の救助に向かう自衛隊員(21日午後5時25分、石川県輪島市門前町で)=高倉正樹撮影

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 震災からの復興に向けて進んでいた石川県・能登半島が再び甚大な被害に見舞われた。

 記録的な大雨により、各地で河川の氾濫や土砂崩れが発生。住民たちは「災害が続き、心が折れそうだ」と訴えた。

 「所々で土砂崩れが起き、戻ってこれない人がいる。土砂に巻き込まれたかどうかはわからない」

 21日午前9時頃、輪島市門前町の中屋トンネル付近で突然、斜面が崩落した。工事関係者の男性によると、現場には約50人の作業員らがいた。「一斉に逃げたが、逃げ遅れが出てしまった」

 約30人はトンネル内に避難したが、さらに土砂が崩れる恐れがあることから、一時、身動きが取れない状態になった。

 同トンネルの長さは1・3キロで主要道の一部となっている。この日は、内部に小さなトンネルを設けて内壁の補修を進めながら車の通行を可能にする技術を用いて、復旧工事が行われていた。

 国土交通省によると、同日午後10時半現在、現場では作業員3人と連絡が取れなくなっており、自衛隊などが捜索を続けている。

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 元日に発生した能登半島地震では、奥能登地方(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)を中心に大きな被害が出た。今月17日現在で、4市町合わせて死者は336人、全壊などの住宅被害は2万5008棟に上る。屋根瓦の上にブルーシートをかぶせて応急処置をした家屋も残る。猛烈な雨はそこに降り注いだ。

 地震で準半壊となった能登町の女性(73)宅は、壁のひびから雨水が入り込み、床上まで浸水した。「自宅前は海のように水が広がった。地震もあったのに最悪だ」と声を震わせた。

 輪島市の漆芸家の男性(31)は、同市杉平町にある父親の工房に滞在していたとき、山の方から押し寄せてくる濁流を見た。辺り一帯が40センチほど浸水し、父親の工房から30メートルほど離れた場所にある自身の工房は床上まで水に浸ったという。男性は「床は泥まみれで、ぬれた木製の棚などはしばらく使えなくなる」と落胆した。

 道路も冠水が相次ぎ、輪島市町野町では「男性が乗った車が流された」と119番があった。男性は車外に出て近くの木や電柱などにつかまった状態で見つかり、救助隊がゴムボートを使って救助した。男性は車で走行中、増水した川の水に巻き込まれたとみられる。当時、川は茶色く濁って道路との境目が分からない状態だったという。