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できれば老けたくないですよね。和田秀樹氏監修の書籍『老けない習慣ベスト100』によると、老化を予防する食事や食べ物があるそうです。一体どんなものでしょうか? 本書から詳しく紹介します。

長寿な方はコレステロール値が意外に高め。気にせずお肉を食べましょう

幸せホルモンの「セロトニン」ですが、これを増やすためには、肉を食べることが一番です。高齢になると脂っぽいものは食べられないと言って、野菜中心の食事になる方や、必要な栄養素はサプリメントで摂るからという方もいます。ただ、サプリメントでは摂れない栄養素もあります。これから説明するコレステロールなどです。


肉にはコレステロールも多く含まれるために避けているという方もいます。たしかにコレステロールは、動脈硬化を促進し、心筋梗塞のリスクになるといわれています。しかし、心疾患が死因トップのアメリカではなく日本では、急性心筋梗塞よりもがんの死亡率のほうが12倍も高く、心疾患で亡くなる人は先進国の中で最も低い状態です。


コレステロールは免疫細胞の材料なので、がんの死亡を減らすという調査結果もあります。実際、コレステロール値が高い人のほうが長生きをするという研究もあります。コレステロールは、男性ホルモンの原料にもなります。男性ホルモンの中でも、特に「テストステロン」という物質は「意欲」と関係しています。


そして、免疫細胞や男性ホルモンの材料となるのは悪玉と決めつけられているLDLコレステロールです。男性ホルモンというと「性欲」というイメージがありますが、他者への関心や集中力などをもたらす元気の素なのです。女性は老いると女性ホルモンは減っていきます。


男性ホルモンの分泌が増える傾向にあるという研究もあります。あるNPOのリーダーである年配の女性が、「昔はおとなしいほうだったのに、年をとると人前に立って話すことも平気になった。『おばさん力』がついたのかしら」と話していましたが、これは男性ホルモンのおかげかもしれません。

食が細くなる高齢者こそ、肉を積極的に食べるべき

引き続き、肉食のメリットと、セロトニン、コレステロールについて触れます。より高齢になっていくと、人は気力の落ち込みや意欲の低下が進む傾向にあります。その理由の一つが、たんぱく質不足です。精神状態を安定させるのに大切な幸せホルモンのセロトニンですが、正常に分泌されていると意欲が高まり、不安は弱まり、前向きな日々を送ることができます。


しかし、セロトニンは年齢とともに減少していくので、歳を重ねるほどセロトニンを増やす習慣をするべきです。そこで、おすすめが肉を食べること(たんぱく質摂取)です。セロトニンの原料のトリプトファンはアミノ酸の一種で、豆や乳製品、肉や魚などのたんぱく質に多く含まれています。肉はコレステロールを多く含み、敬遠されがちですが、肉のたんぱく質は吸収率が高いのです。


食が細くなる高齢の方がセロトニンを増やすために肉を食べるのは、非常に理にかなっています。コレステロールは、動脈硬化、心疾患の原因となる「悪者」として知られています。ただ実は、コレステロールが本当に悪者かは、いまだによくわかっていません。


かつて東京都老人総合研究所が、長寿者が多い東京都小金井市の70歳の高齢者を対象に追跡調査を行った「小金井研究」でコレステロール値と死亡率の関係性を調べたところ、死亡率が最も高かったのはコレステロール値が169未満のグループでした。


反対に最も長生きするのは、男性は219まで、女性は220〜249の正常値よりも高めのグループでした。日本人の三大死因はがん、心疾患、脳血管疾患といわれていますが、今の日本では医療技術が大幅に進歩し、心筋梗塞は「死ななくてよい病気」になりつつあります。


そう考えると、日本人の場合は、肉食でコレステロール値を高めてがん予防をしたほうが長寿になります。こうした事情を見ていくと、必ずしもコレステロール値が低いほうが幸せとはいえないように思います。

脂質(脂肪)の気をつけ方は、良い脂肪と悪い脂肪を知ることから

肉を食べるとき、前述のコレステロールとともに気にされやすいのが脂質(脂肪)です。もちろん極端な摂りすぎはよくありませんが、三大栄養素の一つであり、体に足りなくなると不都合が生じます。例えば、油を完全に抜いたような食生活を続けると、細胞の中に含まれる脂肪に油が十分にいきわたらず、細胞が油切れして干からびてしまいます。


実際、油抜きダイエットを行うと、やつれて若々しさのない不健康な容姿になることもあります。さらに、脂肪は料理を楽しむ上で重要な調味料です。油抜きの料理では味気のないものになりがちで、心から楽しめません。適度な脂肪は、体にも心にも必要なのです。


脂肪を摂る上で気をつけるべきポイントは、「良い脂肪」と「悪い脂肪」を見極めることです。昨今は良い脂肪と悪い脂肪があることが知られつつあります。まず、良い脂肪の代表格は、「不飽和脂肪酸」でできているものです。食品に含まれる脂肪の主成分となる脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の大きく2種類に分けられます。飽和脂肪酸を多く含む食材として知られるのが、バターやラードなどの動物性脂肪で、飽和脂肪酸は固まりやすいという特性があります。


一方、不飽和脂肪酸を多く含むのが、オリーブオイルなどの植物性脂肪や魚の脂肪です。これらは固まりにくい上、体内の脂肪を燃やす作用があるとされています。一方の「悪い脂肪」の代表は、「トランス脂肪酸」を含むものでしょう。


数十年前までは「バターは動物性脂肪だから体に悪い。マーガリンは植物性脂肪だから体に良い」と考えられてきましたが、昨今では、マーガリンに含まれているトランス脂肪酸は、動脈硬化を引き起こすことがわかってきています。トランス脂肪酸は、マヨネーズやアイスクリーム、ドーナツなどのあらゆる加工食品に使われています。現在の学説ではトランス脂肪酸のような悪い脂肪はできるだけ避けるべきとされています。

和田秀樹
医師