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ノンフィクションライター・甚野博則氏による『ルポ 超高級老人ホーム』が発売直後から注目を集めている。入居金が数億を超える「終の棲家」を取材し、富裕層の聖域に踏み込んだ渾身の一冊だ。本記事では、発売前から話題となっている本書の出版を記念して、内容の一部を抜粋し再編集してお届けする。

搾取される職員たち

 兵庫県芦屋市――。六麓荘町に代表される芦屋周辺は関西随一の高級住宅街として知られる。文豪・谷崎潤一郎がかつて居を構え、小説『細雪』の舞台にもなった。現在でもセレブが多く住む街として、そのブランド力は健在だ。

 この芦屋の街の高台に建つのが「真理の丘」(仮称)である。

 真理の丘の元スタッフである柴山さんの話によれば、そこでは人材が集まらずに、ミャンマー人のスタッフを雇っているという。

 外国人だからダメだと言っているわけではない。人手不足の介護業界全体で、外国人介護職に頼らざるを得ない現状がある。

 真理の丘で働くミャンマー人の女性らも、日本語が上手く、非常に真面目で、しかもよく働くそうだ。

 柴山さんが問題視するのは、そうした勤勉なミャンマー人たちを施設が安く雇っていることだ。

「あるミャンマーの子に聞いたら、ボーナスがたったの3万4千円だと言ってました。みんな明るくて、丁寧に働く子ばかりです。お給料の10%を国に送っているそうですから、生活は本当に苦しいと思います。彼女たちの住まいは、市内にあるUR住宅。他県の業者に就職と住まいを斡旋されて、真理の丘で働き出したみたいです」

スタッフは休憩所もなし

 真理の丘では手厚い介護をウリにしている。

 そして、介護職員が手薄にならないよう入居者のアクティビティー専門のNPO法人を運営していると施設側が言っていた。

 このことも話してみると、柴山さんはこう続けた。

「アクティビティー専門の職員さんには休憩場所もなくて、昼時に、狭い舞台のカーテンを閉めて、そこにテーブルを持ってきてご飯を食べているのを見たことがあります。あるときは、空いている居室でご飯を食べたりして、毎日、流浪の民のようです」

 柴山さんによれば、アクティビティー専門職員だけでなく、パート従業員、掃除係、ランドリー係、調理場係にも休憩室はなく、見栄えだけが立派で労働環境すら整っていないという。

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