「皮膚がんにかゆみ」はある?皮膚がんの原因や治療法も解説!【医師監修】

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皮膚がんは他の皮膚疾患と症状が類似しており、その診断には専門の検査が必要となります。初期段階での症状を見逃さないためにも、皮膚がんに関連した症状について理解しましょう。本記事では皮膚がんのかゆみについて以下の点を中心にご紹介します。

・そもそも皮膚がんとは

・かゆみの症状が出る皮膚がんについて

・皮膚がんの治療について

皮膚がんのかゆみについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

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監修医師:
高藤 円香(医師)

防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

皮膚がんとは

皮膚がんは、細胞の異常な増殖によって起こる病気で、主に日光にさらされる顔や手足に多く見られます。特に高齢者に多い傾向があり、近年の高齢化社会では増加しています。初期の段階では他の皮膚疾患と間違われやすいため、自覚症状がないと見過ごされがちです。しかし放置すると他の臓器に転移する危険性があるため、異常を感じたら早めに医師の診断を受けることが重要です。通常の治療で改善が見られない場合や経過が長期にわたる場合は特に注意が必要です。

皮膚がんの症状

皮膚がんの初期段階では、一般的な湿疹に似た症状が現れます。赤みや乾燥、かゆみがある場合は注意が必要です。進行すると自覚症状が出ることが多いですが、痛みやかゆみがなくても安心できません。一般的な症状には次のような変化が含まれます。

・ほくろが数ヶ月の間に急激に大きくなり、盛り上がったり、出血したりすること

・シミが急に大きく(6mm以上)広がる

・左右非対称で、縁がギザギザのほくろが現れる

・爪に黒い線が出現する

・顔や手、でん部などにできた湿疹が、ステロイド軟膏を使用しても2週間以上治らない

・昔のやけど跡や怪我の部分に、発疹に似た症状ができて治らない

・陰部や肛門周辺に、皮膚の一部が白く変色する湿疹や赤い斑点ができる

・あざが長期間治らない

・リンパ節切除手術後の腕や足にあざのような症状が出現する

これらの症状がある場合、特に市販の湿疹薬などで改善しない場合は、早めに皮膚科の医師に相談しましょう。早期診断と治療が重要です。

かゆみがある場合に疑われる皮膚の病気

かゆみは多くの皮膚の病気の一般的な症状です。以下に、皮膚がんに関連するものとその他の皮膚疾患について主な皮膚疾患を解説します。

乳房外パジェット病:皮膚がんの一種で、湿疹や水虫と似た外見を持ち、赤または赤褐色の斑点が特徴です。これらの斑点は徐々に広がり、かゆみや違和感を伴うことがあります。表面がただれることもあります。市販薬で改善しない場合は注意が必要です。

ボーエン病:皮膚がんの一種で、日光に晒されない部分に発症することが多く、湿疹に似た淡紅色から褐色の皮疹やびらん、かさぶたが徐々に大きくなります。かゆみを伴わないことが多いです。

日光角化症:顔や腕など、日光にさらされやすい部分に発生する傾向があります。表面がカサカサし、淡い褐色から赤褐色のシミのような皮疹が特徴です。特に日焼けをしやすい人や高齢者に多く見られます。稀ではありますが、放置していると、がん化する可能性のある皮膚疾患です。

これらの皮膚がんや前がん病変以外にも、かゆみは以下のような一般的な皮膚病にも見られます。

・皮膚の乾燥(乾皮症や魚鱗癬)

・アトピー性皮膚炎

・アレルギー性接触皮膚炎

・じんま疹

・皮膚真菌感染症

・皮膚寄生虫感染症(疥癬など)

・虫刺され

皮膚がんの原因

皮膚がんの主な原因は紫外線によるDNAの損傷であり、放射線、特定のウイルス感染、化学物質の影響もリスクを高めます。長期間の皮膚疾患や慢性の病変、遺伝的要素も関与し、特定の皮膚がんは日光に晒される部位に発生しやすいとされています。また、やけどなどの傷が原因で発生する皮膚がんもあります。

皮膚がんの治療

皮膚がんはどのように治療されるのでしょうか。手術、化学療法、放射線療法について解説します。

手術

皮膚がんの治療では、手術は第一の選択肢となります。手術の範囲や方法はがんのタイプや進行度によって選択され、以下のような方法があります。

・根治切除: がん組織を完全に除去する手術です。遠隔転移がなく、がんを全て切除できると判断された場合に選ばれます。

・センチネルリンパ節生検: がん細胞が最初に転移する可能性のあるリンパ節を摘出し、がん細胞の有無を調べます。

・再建術: 腫瘍の切除後、皮膚の欠損部分を修復する手術です。病変の場所や進行度によって異なる方法が選択されます。

また、がんの種類や進行状態に応じて、手術と併せて放射線療法や化学療法が用いられることもあります。これらの治療選択は、がんの種類や患者さんの状態に応じて慎重に検討されます。

薬物療法

皮膚がんの治療には、転移がある場合や再発予防的な場合、手術で完全に切除することが不可能な場合に薬物療法が適用されることがあります。この治療法には主に以下の三つのカテゴリがあります。

・化学療法: 抗がん剤を使用してがん細胞を攻撃します。

・免疫チェックポイント阻害薬: 悪性黒色腫の治療に主に用いられるこの種の薬剤は、直接がん細胞を攻撃するのではなく、患者さんの免疫細胞が、がん細胞を攻撃できるようにすることを目的としています。これらの薬剤は特定の抗体を持つがん細胞に有効とされています。変化が現れるのは遅いですが、その効果は長期間持続する可能性があります。ただし、免疫系に関わる副作用が起こることもあります。

・分子標的薬: この種類の薬剤は特定の遺伝子変異を持つがん細胞を特異的に標的とし、高い効果を期待できます。例えば、悪性黒色腫にはBRAF/MEK阻害薬、血管肉腫にはマルチキナーゼ阻害薬(パゾパニブ)、皮膚悪性リンパ腫にはHDAC阻害薬(ボリノスタット)が使用されることがあります。

これらの治療法は、皮膚がんの種類や患者さんの条件に応じて選択されます。

放射線療法

放射線治療は、がん細胞を破壊し成長を止めることを目的としています。一部の皮膚がんは感受性といって放射線治療の効果が出やすく、がんの種類や患者さんの状態に応じて適用されます。手術が難しい場合や手術後の追加治療、化学療法との併用など、様々な状況で使用されます。放射線治療は他の治療法と組み合わせて効果を高める一方、副作用にも注意が必要です。放射線治療にはX線、陽子線、重粒子線などの種類があり、患者さんによって治療法が異なります。また、放射線治療は体の外からの「外部照射」と体の内側からの「内部照射」に分けられ、患者さんの状況に応じて使い分けられます。

皮膚がんについてよくある質問

ここまで皮膚がんの症状や治療法を紹介しました。ここでは皮膚がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

皮膚がんはかゆくなりますか?

高藤 円香医師

皮膚がんはかゆみを感じることがあります。また、触れると痛みを感じたり、出血しやすくなったりすることもあります。しかし、かゆみなどの症状が出ないことも多く、一般的な湿疹のような症状を示し、赤みや皮膚の乾燥が見られます。長期間治らない湿疹や皮膚に異常な変化を感じた場合には、医療機関を受診することが重要です。

皮膚がんとほくろの違いを教えてください。

高藤 円香医師

ほくろと皮膚がんの主な違いは、外観と進行の仕方にあります。ほくろは一定の形やサイズを保ち、大きな変化は見られませんが、皮膚がんは不定形で境界がはっきりしないことが多く、時間とともに色や大きさ、形状が変化します。特に悪性黒色腫(メラノーマ)の場合、ほくろは一般に円形または楕円形だが、メラノーマは形状が不整で、不規則な形をしていることが多く、境界が不明瞭で色のむらがあり、通常のほくろよりも大きく、6mm以上のサイズであることが多いです。皮膚がんとほくろの識別は難しいため、上記のような状態に当てはまる場合は、早期に皮膚科の医師の診断を受けることが重要です。

まとめ

ここまで皮膚がんのかゆみについてお伝えしてきました。皮膚がんのかゆみについての要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

・皮膚がんは細胞の異常な増殖によって起こる病気で、主に日光にさらされる顔や手足に多く見られる

・皮膚がんや前がん病変である乳房外パジェット病、ボーエン病、日光角化症などは、かゆみの症状が出やすい

・メラノーマの治療方法には手術治療・放射線治療などがある

皮膚がんと関連する病気

皮膚がんと関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

皮膚科の病気

基底細胞がん有棘細胞がん乳房外パジェット病

メルケル細胞がん

汗腺がん

脂腺がん

毛包がん

悪性黒色腫

隆起性皮膚線維肉腫

血管肉腫

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

皮膚がんと関連する症状

皮膚がんと関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

皮疹

潰瘍

しこり

悪臭

出血

かゆみ

痛み

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

参考文献

皮膚癌について(日本皮膚悪性腫瘍学会)

皮膚がん(国立病院機構 四国がんセンター)

皮膚がんのおはなし(鳥取大学医学部附属病院)