日本株や米国株以外にも目を向けよ…投資初心者はまだ知らない「世界の優良銘柄」3選
株式投資といえば、日本株あるいは米国株を選ぶ人が多いだろう。しかし世界に目を向けてみれば、魅力的な銘柄は他にもたくさん眠っている。新刊『資産1.8億円＋年間配当金（手取り）240万円を実現！ おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全』（PHP研究所）を出版した桶井道（おけいどん）氏が、投資初心者も注目の「世界の優良銘柄」を紹介する。
「世界の優良銘柄」に期待できる理由
投資の対象は日本、米国だけではありません。
本社が日米以外であることを理由に敬遠せずに、世界に目を向けてみましょう。実は魅力的な銘柄（企業）が眠っているものです。
しかし、ほとんどの投資家（特に初心者）はその存在を知りません。
なぜなら、主要ネット証券は米国株の取扱いを全面的にアピールし、それ以外の外国株のことはそれほどでもない状態だからです。とはいえ、米国株以外の外国株の取扱い数を徐々に増やしています。その多くが米国に上場しているので、米国株と思い込んで投資している方も一定数おられると思います。
そこで本稿では「世界」の優良銘柄を紹介しましょう。
・カナダは、先進国で「G7」の構成国です。米国と陸続きで国境を接していますから、米国でも事業を営んでいるカナダ企業が多いです。株主還元が優秀な企業もあります。
・オーストラリアは、経済成長がコロナ期まで28年間も続いた実績があり、2008年のリーマン・ショックですら経済成長したことに驚きます。移民を受け入れており、人口増加国です。
・将来は、インドが台頭すると考えられます。人口世界一の内需には、可能性を感じます。頭脳もピカ一で、グーグルやマイクロソフトのCEOはインド出身です。
・世界三大資源メジャーはいずれも米国企業ではなく、英国、オーストラリア、ブラジルです。
・世界で一番大きな食品メーカーは、スイスのネスレです。
・世界一のハイブランド企業は、フランスのルイ・ヴィトン（正確には「LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン」と言います）です。
・世界一の半導体受託製造企業は、熊本県への進出で有名になった台湾のTSMCです。
・半導体の微細化に必須とされる「EUV露光装置」は、オランダのASMLホールディングしか製造できません。
このように各国には世界で稼げる企業がたくさんあります。またはその国で稼げる企業を選びましょう。
自国（日本株）バイアスに陥らず、米国株最強バイアスや米国株信仰も持ち過ぎず、世界に目を向けるのです。
ただし、米国と不仲な国には投資しません。米国と喧嘩してもたいていの国は勝てないでしょう。また、独裁国家などカントリーリスクにも注意が必要です。
その他、新興国の場合、法整備が不充分で投資家（株主）の権利が充分に保護されていないことがあります。政治リスクもあります。たとえ成長企業であれ、たとえば突然の国有化宣言など国からの一声で株価が暴落なんてケースがあるのです。
加えて、地政学リスクを頭に入れておきましょう。企業として優秀な実績があれど、ひとたび戦争・紛争が起これば経済にも、経営にもダメージが出ます。近年では、ロシア・ウクライナ情勢がそれにあたります。
日本の証券会社で簡単に購入できる
「日米以外の国の株に投資するには、現地証券の口座が必要なんでしょ？」
そんなことはありません。日本の証券会社で売買が可能です。
SBI証券なら多くの国の証券取引所に上場している株式（普通株）に投資できます。
ただし、この方法はあまりおすすめしません。SBI証券であれば、日本以外に9カ国を扱いますが、各国通貨に両替が必要で為替手数料が高いですし、日米以外の証券取引所に上場している株式は売買手数料も高い傾向にあります。投資通貨が日本円および米ドル以外に、多国籍にわたると投資効率が落ちます。
その方法を取らなくとも、SBI証券、楽天証券、マネックス証券など主要ネット証券なら、米国上場の普通株やADRの売買が可能です。本稿ではそれらへの投資をお勧めします。
ADRとは、American Depositary Receipt（米国預託証券）の略称で、米国以外の企業の株式が米国で流通しやすいように発行された有価証券です。日本から投資が難しい国の企業への投資のハードルを下げてくれる存在です。
私たち投資家は、普通の米国株と同様に気軽に、日本の証券会社のサイトから売買が可能です。
これらへの投資により、投資通貨を米ドルに統一できるメリットは大きいです。24時間変化する為替レートの換算を複数の通貨で行うのは「ぐうたら投資」とは言えませんから。
また、米国企業ではなくても、米国市場に上場する普通株やADRは売買手数料や為替手数料が安いこともメリットです。米国株（米国企業の株式）と同じ扱いなのです。
もしくは、本稿では語りませんが、東証には米国以外の外国の株価指数に連動するETFも上場しています。投資通貨を日本円にできるメリットがあります。
多くの国に分散投資する場合も、投資に使う通貨は円と米ドルに限定すれば、投資効率が上がります。配当金を再投資しやすいこと、米ドルなら為替手数料はそれほど気にならないことが理由です。通貨に関しては、多くの分散は逆効果なのです。
配当金に税金はどれだけかかる？
配当金にかかる税金にも触れておきましょう。
日本株や米国株と同じく、その他の国の株の配当金にも、日本で20.315％の課税があります。
他に、その国々での課税があります。各国の税率はおおむね次の通りです。
・米国……10％
・カナダ……15％（楽天証券では25％）
・英国……0％
・オランダ……15％
・デンマーク……27％
・アイルランド……25％
・オーストラリア……0％
・台湾……21％
・インド……10％（米国ETF「EPI」の場合）
・ブラジル……0％（ただし、ブラジル企業でよくある「資本利子の配分」に対しては15％）
（※SBI証券発行の「配当金等のご案内（兼）支払通知書」に記載の税率より引用）
各国ともできるだけ複数の銘柄で確認しましたが、国によっては銘柄ごとに税率が異なるケースがあります。
証券会社により税率が異なることもあります。また、この税率にはADR手数料などが含まれるケースもあります。すべての銘柄が、必ずしも、この税率とは限らないこともご承知おきください。
英国やオーストラリアのように配当金への、各国（外国）での税率が0％の国であれば、日本株と同条件、20.315％の課税のみになります（配当控除は考慮せず）。
世界が頼りにするオランダの半導体装置メーカー
ここまで確認できたら、私が選ぶ世界株を見ていきましょう。
（1）ASMLホールディング
半導体製造「露光装置」メーカーで世界首位
・ティッカー……ASML
・国名……オランダ
・証券取引所……ナスダック証券取引所
半導体の製造工程は1000ステップを超えると言われ、製造工程ごとに製造装置メーカーが存在します。同社もその一つ。
露光装置は日本のニコンやキヤノンが存在感を多少有していますが、EUV露光の分野では同社しかプレイヤーがいないオンリーワン企業です。EUV露光装置は半導体の微細化にて重要な役割を担います。
半導体を製造するインテル、TSMC、サムスン電子が同社の主要顧客です。2012年に顧客共同投資プログラム（CCIP）の一環として、同社はこれら顧客3社に株式を発行し、資金提供を受けることで研究開発資金を確保しています。
米国政府が、国家安全保障規制や特定の中国企業との取引制限などの貿易措置を制定。同社にとり第3位のビジネス相手である中国向けビジネスが制限され、やや懸念材料です。
蘭企業ですがNASDAQ100採用銘柄。
半導体製造のリーディングカンパニー
（2）台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー（TSMC）
エヌビディアも無くなったら困る台湾の半導体受託製造企業
・ティッカー……TSM
・国名……台湾
・証券取引所……ニューヨーク証券取引所
半導体が人間の生活に身近であることは、株式投資家ならばよくご存知でしょう。
パソコンもスマートフォンもエアコンも自動車も目に見えるものの多くに使われていて、産業のコメといわれるものです。
半導体は非常に多くのプロセスを経て製造されます。近年、設計と製造は分離されることが多く、設計のリーディングカンパニーがエヌビディアならば、製造のリーディングカンパニーが同社です。
ここ数年で製造拠点を台湾以外にも設けるようになり、欧州、米国、日本に製造拠点を設立しました。
顧客はエヌビディア、アップル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズなど大企業が多く、営業利益率は40％超、日本の優良な半導体関連株である東京エレクトロンやアドバンテストよりはるかに高いです。
業績はシリコンサイクルに沿う傾向があります。また、台湾有事リスクを念頭に置く必要もあります。
カナダで最もブランド力が高い銀行
（3）トロント・ドミニオン・バンク
総資産ベースで北米6位のカナダの銀行
・ティッカー……TD
・国名……カナダ
・証券取引所……ニューヨーク証券取引所
“be the better bank”（より良い銀行であれ）を企業のビジョンとして掲げています。カナダの2大銀行のひとつ。
カナダにおけるブランド力が高く、トロント・ドミニオン・バンクは、カナダで最も価値のあるブランド100社をランク付けするBrand Financeの2023 Canada 100 Reportで1位にランキングされています。
商業銀行の業務内容は銀行間で大差がないことを鑑みれば、ブランド力は顧客を獲得するためのアドバンテージがあると考えられます。
株主に対しても報いる企業で、リーマン・ショックやコロナ・ショックでも減配していません。
13期連続増配中であり、2023年には新たな自社株買いプランを発表しています。カナダの銀行はJPモルガン・チェース等の米国の銀行より配当利回りが相対的に高い傾向があることは評価できるポイントです。
高配当株・増配株は「新NISA」の成長投資枠との相性がいい投資先と思います。配当金を「永久に」非課税で貰い続けることができるからです。
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