左から大森南朋、北野武、浅野忠信

北野武が監督・脚本・主演を務める、Amazon MGMスタジオ製作のAmazon Original映画「Broken Rage」が、第81回ベネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門(特別招待作品)に選出され、9月6日(イタリア時間)に初上映された。ベネチア国際映画祭への正式出品は、日本の配信動画作品としては初。

北野の構想をもとに、「暴力映画におけるお笑い」をテーマに制作された作品。2025年にPrime Videoにて世界配信を予定している。

Amazon Original映画「Broken Rage」
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前半では、警察とヤクザの間で板ばさみなった殺し屋が生き残りをかけて奮闘する、裏社会を舞台に繰り広げられる骨太のクライムアクションとなっている一方で、後半は同じ物語でありながら、前半と同じ物語をなぞるコメディタッチのセルフパロディになっている。

主人公の殺し屋・ねずみをビートたけしが演じ、そのねずみを麻薬捜査の覆面捜査官として捜査協力させようとする刑事役を浅野忠信、大森南朋。麻薬売買を取り仕切るヤクザの親分を中村獅童、その若頭を白竜が演じる。このほか、仁科貴、佳久創、劇団ひとり、長谷川雅紀(錦鯉)、馬場園梓、鈴木もぐら(空気階段)ら人気芸人も参加する。

世界初上映に先立って行なわれた公式記者会見とレッドカーペットには、北野武監督、浅野忠信、大森南朋が登場。公式記者会見で北野監督は、「劇場の人向けではなくTV画面で観る人に向けて今までやってみたかったことをテストでやってみた。気楽に撮ってみたら、まさかこんな(ベネチアに来る)ことになるとは。もっと真剣にやるべきだったな」と作品が生まれた経緯を“北野節”交じりに語り、会場を沸かせた。

62分の尺の中で2部構成となっている本作について、「実際にインターネットをみたりして意外に規制が外れて『よくこんな悪口が言えるな』と楽しくみているが、スピード感に飲まれているのか、(本作の編集にあたり)映画の<間>じゃなくてインターネットの<間>になった」「暴力もお笑いも感情を揺さぶるもの。人に対する衝撃という意味では、お笑いも暴力である。暴力的なものなのか、愛なのか、日常的なものなのか、観る人によって違うのは映画や絵画などのアート。人が気付いていないことを、これが暴力だ、これが愛だとピックアップするのが大事なんだと思う」と、<暴力におけるお笑い>というテーマについて語った。

浅野は北野監督との仕事について「武さんのような、違うところで活躍されていた方が映画に来て、まっすぐな目で我々に向き合ってくださるっている気がするんですよね。そうすると他の映画監督とは全然違う要求をされるので、役に対して応えていく作業を現場でしていかないと北野監督が認めてくれないということがわかったので、役に対する取り組み方が変わったなと。前作の『首』にしても今回の(Broken Rage)にしても常に新しいことにチャレンジしている姿勢も含めて俳優として学ぶことが多かった」と語る。

大森は北野組の撮影現場について、「武さんの横にずっといることが出来て、浅野君と一緒にお芝居できて、撮影の日々は本当に毎日楽しかったです。(後半のパロディパートの撮影では)生意気ながらも『武さんにもちょっと笑ってほしい』という気持ちで撮影に挑んだんですけど、なかなか出来なくて苦労しました」と振り返った。

新たな挑戦に応えた浅野・大森について北野監督は、「この二人は、おれが将来すごく期待している人たちなんで、すごく一生懸命にやっていただいて、いずれは映画界を引っ張っていく日本の役者さんだと思ってますんで、みなさんも心に留めておいてください」と絶賛。記者会見終了後には、北野監督が記者たちからサイン攻めにあうシーンもあり、その後行なわれたレッドカーペットでも記者たちからの熱烈なキタノコールに迎えられた。

公式上映中は笑いと拍手の渦が起き、世界中のファンが歓喜。上映後、熱狂に包まれた観客からは惜しみない拍手と歓声が送られ、スタンディングオベーションが6分を過ぎたところで北野監督は照れくさそうにそれを制止した。

世界初上映を終えた浅野は「お客さんにものすごくウケていたのでホッとしましたし、監督も喜んでいらっしゃいました。僕が日本の試写会で見た時に感じた『おもしろい!』という感覚が正しかったことが確認できてよかったです」、大森は「イタリアのファンの方は北野監督の世界観をよくご存じなのだと思いますが、こんなにも愛と喜びを持ってこの映画と向き合っていただけるんだと思い、非常にうれしかったです。」とそれぞれ喜びを語った。

北野武 「Broken Rage」初上映後コメント

ベネチア国際映画祭には何度も来ているけど、今回は、その中でもトップ3に入る程反応が良かった。『HANA-BI』の時よりもスタンディングオベーションはこっちのほうが長くて、面積とか体積で言えば、今回のが一番良かったなと思います。『Broken Rage』はあまりにも映画らしくない、冒険した作品なので「大丈夫かな?」と思ったけど、反応がすごく良かった。

ベネチア国際映画祭は、映画では無名だった武にグランプリをくれたので、自分たちが育てたという感覚を持ってくれてるんじゃない? ベネチアでグランプリを獲っても、あまり進化のないことをやっていたらファンに飽きられちゃうから、またチャレンジしてるところを見せないと。1本1本、ベネチアのファンがこの映画を見たらどう思うか? ということも意識しながら作ってます。