【レビュー】5万円台で買える、ネットワークオーディオ向けスイッチングハブSilent Angel「N8」を試す
Silent Angel の「N8」
ストリーミングからダウンロード購入したハイレゾ音源まで、便利に楽しめるのがネットワークオーディオだ。一方、そのシステムにはほとんどの場合、PC向けのネットワーク環境を使うため、そのまま接続しただけでは、クオリティへの物足りなさを感じてしまうケースは少なくない。
ネットワークオーディオのクオリティ向上のために、長年にわたる試行錯誤が繰り返され、様々な音質対策が生み出されてきた。そんな中で、“オーディオ向けのネットワーク機器”を選ぶのも1つの方法だ。今回、筆者が試したのはスイッチングハブである。
Silent Angelとは?
正直、「こんなものまでオーディオ用?」と思われる方もいるだろう。どのように音が変わるのか、想像も付きにくい。また、オーディオ用のスイッチングハブは数10万円する製品も珍しくなく、筆者も敷居の高さを感じていた。
そこで目をつけたのが、Silent Angel の「N8」(直販54,930円)。オーディオグレードのスイッチングハブでありながら、5万円台で購入できる。PC向けのスイッチングハブと比較すると安くはないが、オーディオ向けのネットワーク機器として、現実的な圏内に入っていると感じる。
Silent Angel「N8」
Silent Angelは、QNAPでNASの開発設計に携わっていたEthan氏とChorus氏がThunder Dataのバックアップのもと立ち上げたブランドだ。
2人は元々DSDにも関心を寄せるオーディオファンでもあり、既存のネットワークオーディオはそのファイルに秘められた魅力を十分に引き出せていないと感じていたそうだ。
2014年にSilent Angelのプロジェクトがスタートし、2017年最初に世に出たのはスイッチングハブの「N8」。その後、本稿で合わせて紹介する「N8 Pro」の様なハイグレードスイッチングハブや、ミュージックサーバー、ネットワークトランスポート、ネットワークストリーマーなど、おおよそネットワークオーディオ機器を網羅するラインナップを展開。注目を集めてきた。
独自のOS「VitOS」もSilent Angelの売りの1つだ。現在では、クロックジェネレーター「GX」や、オーディオ向けDC電源「F1」、「F2」、各種アクセサリーなど、さらなる商品展開によってオーディオファンの期待も高まっている。
筆者にとってSilent Angelといえば、ネットワークトランスポートや、ネットワークプレーヤー(ストリーマー)のイメージがあった。同時に、その高い技術力と優れた性能から、他社メーカーへOEMとしてもスイッチングハブを展開していることを知り、N8にたどり着いたというわけだ。
N8とN8 Proで何が違うのか
N8を調べて見たところ、上位機種がいくつか存在することが分かった。電源ユニットを強化してポート数を16に増やした「N16」。ポート数はそのままに、電源部を強化した「N8 Pro」(直販172,700円)と、外部クロック入力を加えた「N8 Pro-CLK」(同330,000円)。そして最上位機種の「NX」だ。N8よりグレードが上がると、どの程度音質が変わるのか興味が沸いたので、N8 Proも合わせてお借りした。
電源部を強化した「N8 Pro」
N8とN8 Proが共通しているのは、Silent Angelオリジナルの内部クロック「Silent Angel TCXO」、EMIノイズ吸収効果のある「高性能EMIアブソーバー」と、汎用ハブに比べて約半分まで抑えられた低ジッターであること。
電源は、N8がACアダプターなのに対し、N8 ProがACインレットの電源内蔵型。ACアダプター式のN8も電源対策には余念がない。二重保護装置を採用した医療用のAC アダプターは、EMC要件(電磁両立性)にも対応し、ACアダプターからの他のオーディオ機器への影響も最小限だという。また、内部の電源供給回路にノイズフィルターを内蔵し、より正確で、高品質のデータ転送を実現している。
N8の背面
N8はACアダプター
N8 Proは、高品位の安定したスイッチング電源を採用し、高能率のDC/DCコンバーターと低リッピングLODリニアレギュレーター回路により、リップル電圧を28mV(Vp-P)以下に抑えている。シャーシ内の温度上昇を抑えて、製品の性能を引き出しているという。
Silent AngelのDCパワーサプライF2や、低ノイズのDC電源を用意できる方向けに、DCジャックを搭載している点もなかなかにマニアックだ。
N8 ProはACインレットの電源内蔵型。DCジャックも搭載している
消費電力から計算すると、余裕を見積もって12V/1A以上のACアダプターなら安定して駆動することが出来そう。汎用のACアダプターを使っても品質は内蔵電源に劣ると見られることから、低ノイズ仕様のACアダプターや、オーディオ向けの専用DCパワーサプライなどがない方は、素直にACコードを接続することが望ましいといえる。両方接続した時の優先順位は、DC電源⇒AC電源となっている。
細かいところだが、N8 ProのLANポートは各ポートの間隔を5mmほど離して配置しており、ハイエンドのLANケーブルや、ノイズ除去のアクセサリーなどを挿入しても、ポート間の干渉が起こりにくいように設計されている点も見逃せない。LANポートのLEDもN8 ProはトグルスイッチでON/OFFが出来る。オーディオ用NASも音質のためにLEDを省いているくらいだから、かゆいところに手が届く配慮は嬉しい。
N8 ProのLANポートは各ポートの間隔を5mmほど離して配置
N8 ProはLANポートのLEDもON、OFFできる
N8 Proは、19インチマウントのラックに設置できる。そのためのラックマウントアダプターも付属。ご覧の様に、録音用の制作機材をラックマウントするイメージと同じで、N8 Proもラックに固定することが出来る。なお、業務用機器で使われている通信規格のAVB(オーディオビデオブリッジ)やDanteには非対応とのこと。
AVBは専用のハブ/スイッチが発売されており、DanteはヤマハがWEBで公開している推奨4要件の内、最低2つ、出来れば全てを満たす必要があり、単に対応を名乗れば済むというものでもない。ただ、業務用システムのクオリティをSilent AngelのProモデルが底上げできると考えたらワクワクする。今後の発展にも期待したいところだ。
ラックマウントアダプター
ラックマウントのイメージ
まずはリビングで試してみる
N8は小型なこともあるので、まずは軽くリビングのシステムに使ってみた。ネットワークプレーヤーはヤマハのAVアンプ「RX-V6A」、NASは「Soundgenic」のHDD版HGモデルだ。スピーカーはDALI「MENTOR 2」を使用している。
筆者は、Wi-Fiルーターに直接ネットワークプレーヤーやNASを接続することは避けて、スイッチングハブを介して接続するようにしている。Wi-Fiルーターに掛かる負荷を分散して音質を高めることや、Wi-Fiに起因するノイズからオーディオ関係の通信を遠ざける狙いもある。
筆者が使用しているスイッチングハブは、TP-Linkの「TL-SG505」。値段も数千円のいたって普通の製品である。一応これも、ささやかなこだわりを持って選んだ。まず、内蔵電源によるノイズの影響を緩和するため、外部電源=ACアダプター式を選択。プラスチックよりも外来ノイズへの耐性があり、自らの重みが振動対策にもなる金属筐体をチョイス。余計な空きポートはノイズが飛び込んでくるので、最小限の5ポートタイプとしている。金属筐体ゆえの音の硬質感は、アコースティックリバイブのクオーツレゾネーター「QR-8」を貼ることにより緩和し、有機的な質感もプラスした。
筆者が使用しているTP-Link「TL-SG505」
ACアダプターには、FX-AUDIO-の「Petit Susie」を使用して電源ノイズを除去。スイッチングハブからNASとネットワークプレーヤーに至る2つの経路はLANアイソレーター「RLI-1」を用いて、LANケーブル経由で伝わるノイズを減衰させている。
このようにある程度の対策をしているTL-SG505から、QR-8以外のアクセサリーを全部外して、素の状態に近い音を聴いてみた。N8との比較にはこの工程は外せない。
数秒聴いただけで、もう苦しいと思ってしまった。全帯域に渡って雑味が著しく、歪み感もある。特に高域にザラつきがあって、立体感や分離感も悪化してしまった。
N8に取り替えてみた
そして、N8に取り替えてみると、劇的に音楽らしいサウンドが聴こえてくるではないか。
Silent Angel TCXOの効果だろうか、トランジェントの改善がめざましい。時間軸の解像度が格段に向上して、CDからハイレゾまで、楽器のディテールが彫り深く、生々しい。サウンドステージは透明度を増し、ホール録音の音源を流してみれば、奥行きや広がりにハッとするリアリティを感じる。それこそ、ステージの深さや天井の高さ感(空気容量)まで録音されていることが聴き取れる。聴感上のSN比も改善したと感じた。電源部への配慮や基板下のEMIアブソーバーが影響しているのだろう。
金属筐体にありがちな音の硬さもほとんど感じない。TL-SG505よりも筐体自身の共振が発生しにくいか、基板に伝わりにくくなっているのかもしれない。
意外だったのは、低音域のスピード感やコシまで良くなったことだ。時間解像度が向上すると、楽器音にまとわりつくモヤのようなものが消えていくのだが、それが結果として素早い音と感じられたと筆者は解釈している。
そしてTL-SG505で最も気になっていた雑味や歪み感が劇的に改善した。ギターやドラムの金物も付帯音がなく、クリアかつシャープで、生楽器らしさが存分に楽しめた。
TL-SG505を素の状態で使用することで改めて痛感したのは、PC用のネットワーク機器は、なんの対策もなくネットワークオーディオに持ち込むのはお勧め出来ないということ。極論かもしれないが、CDプレーヤーとアンプで44.1kHz/16bitを聴いていた方が幸せになれるかもしれない。
では、TL-SG505にアクセサリー類を取り付けて(普段通りに戻して)、N8の音と比較してみる。
普段通りに戻すと、確かに歪み感や雑味は大幅に改善されている。生楽器の質感表現も楽しめるレベルに到達した。聴感上のSN比も向上した。ただ、やっていることはLANと電源ラインのノイズ対策だから、時間軸精度の甘さは変わらない。音の前後にリンギングがあって、明らかに滲みがある。奥行き表現はN8と比べると明らかに甘い。低域の量感は上がったように感じるが、単に音像がにじんで太ったように感じられるだけと見た。
いったん気になってしまった時間軸精度の緩さは、ストレスが尋常ではない。テンポのいいジャズは気分がノレないし、劇伴のサントラはオケの立体感がイマイチで萎えてしまう。
N8は単体で使っても、驚くほどの音質向上を示してくれたが、あえてTL-SG505に使っていたアクセサリーも併用してみる。まず、LANアイソレーター「RLI-1」をNASの経路と、AVアンプへの経路に1つずつ加えると、さらに雑味と付帯音が一掃された。もはや究極を求める領域に思えてくる。
さらにACアダプターにPetit Susieを加えてみる。繰り返しになるが、Silent AngelにはN8にも使えるオーディオ用電源F1/F2がある。本来こちらを使うのがベストではあるが、予算的にすぐには導入が出来ない方に一例として示す。Petit Susieを電源経路に挿入すると、S/Nがさらに改善。ディテール表現は真に迫ってきた。例えば96kHzで録られた女性ボーカルなどは、本当に人の声に聴こえる。リアルな口元感というか、ヘッドフォンを使って全集中で聴いているときのような生々しさがスピーカーで楽しめてしまうのだ。ピアノのリバーブなどは、階調の淀みなく、透明度が極めて高い。
リビングは、防音スタジオで試す前の、とりあえずやってみる的なつもりで始めたのに、もうN8を外したくなくなった。本音を言うと、元に戻すのが悲しい。
メイン環境でも試してみる
ともあれ、メインの環境でどの程度音質の変化があるのかも気になる。N8を防音スタジオに持ち込んで、いざ試聴開始だ。
我が家の防音スタジオのシステムは、ネットワークトランスポートにスフォルツァートの「DST-Lacerta」。USB-DACはiFi audioの「NEO iDSD」。ラックスマンのプリメインアンプ「L-505uXII」がDALIの「RUBICON 2」を駆動する。NASはSoundgenicの初代SSDモデルの1TBだ。
手始めに、リビングと同様にTL-SG505からQR-8を残して全てのアクセサリーを外して聴いてみる。ちなみに、NASとTL-SG505の間にLANアイソレーター「RLI-1GB-TripleC」を1箇所使用しているほかは、電源にPetit Susieを使っているのみだ。TL-SG505とDST-Lacertaの間は、アコースティックリバイブのLANケーブル「LAN-QUADRANT-TripleC」で繋いでいる。4対の信号線を完全分離したユニークな構造のLANケーブルだ。
実は、このケーブルを導入したことで、LANケーブルの重みでTL-SG505がウィリーするように浮き上がってしまった。本体自体が軽いためだ。N8なら自重で支えられるだろうと期待したことも、このたびの試用のきっかけだった。
LANケーブルの重みでTL-SG505がウィリーしている
さて、TL-SG505の素の状態の音を聴いてみよう。リビングの環境よりも、各機器のグレードが高いこともあって、さすがに空間表現力は上をいっている。ただ、中高域にはしっかりと雑味や歪み感があって、このままでは聴くに堪えない。
N8に交換してみたところ、残念ながらLANケーブルの重みでやはり前方がわずかに浮き上がってしまう。ケーブルをラックに当てたくないという事情があったものの、やむを得ずN8本体を前に出して、ケーブルをラックに接地させて浮き上がりを回避した。ただ、ラックの振動がケーブルに伝わらないようAETのVFE素材を使った振動吸収アイテムを挟んで対策をした。
N8でもLANケーブルの重みでやはり前方がわずかに浮き上がる
N8本体を前に出して、ケーブルをラックに接地させて浮き上がりを回避
ラックの振動がケーブルに伝わらないよう、AETのVFE素材を使った振動吸収アイテムを挟んだ
N8に変更したことで、まず中高域の雑味や歪み感はほとんどなくなった。キミのね「レイバックジャーニー」は、トランジェントが劇的に改善。シンセトラックや手拍子は粒立ちが良く、バイオリンの立体感や響きのクリアさはこういう音で録れてたんだと新たな発見をくれる。
UVERworldのALL TIME BESTより「在るべき形」96kHz版を再生。ドラムのスネアは音像にまとわり付いていたモヤが取れクッキリと鳴り、質感表現まで豊か。シンセのトラックまで立体感がある。特に前後感の向上だ。時間精度が上がると、録音された音源という感覚が薄くなってくる点も見逃せない。途中で再生を停めたくない音なのだ。
Beagle Kickの768kHz/32bit整数音源「SUMMER VIBE」を再生。楽器音の実体感がすごい。まるで音を掴めるような輪郭の生々しさに圧倒される。768kHzならではの滑らかであり、かつ極めて写実的な録音がさらに究極の姿を表した印象。制作者である筆者も、こんなにいい音で録れていたのだと普通に感動してしまった。
飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラコンサート2022より「ベートーヴェン: 祝賀メヌエット 変ホ長調 WoO 3」を聴くと、ステージの奥行きがさらに一段上のリアリティに進化した。特に素晴らしかったのが、ホールの空間を肌で感じるような、独特の残響が本物さながらに聴こえてきたこと。余韻がとてもクリアで、減衰の仕方も繊細だ。弦楽器の演奏の出だしがパシッと揃ってる感じとか、息を呑むような生オーケストラの躍動が家でも楽しめることに幸せをかみ締めた。
USB-DACを買い換えたのかと思うほど、大きな差だ。スイッチングハブひとつでこんなにも音楽の印象がいい方向に変わってくることに、呆然とするとともに、ネットワークオーディオの奥の深さに改めて身が引き締まる思いがした。
上位モデル、N8 Proの実力は?
N8 Proを試す
続いて、N8 Proを試す。LEDの点灯はトグルスイッチでLED POWERをOFFにして消灯させ、付属のゴム脚は取り付けずAETのVFE-4005シリーズを敷いてラックに設置した。
これが驚き。まだ音が良くなる! 気付かなかった音に気付く。
「レイバックジャーニー」は、コーラスの音程が自然に聴き取れるようになった。打ち込みやギター等でやや混雑していた音場は分離が良くなり、各々のトラックが脳内で捉えやすくなった。重心が低くなり、低域が安定して密度感が増した。量感までは変わらないのだが、聴いていてよりストレスのない低域~重低音を味わえる。N8で僅かに残っていた雑味も一掃された。強化された電源回路の恩恵だろう。
「在るべき形」は、バスドラがタイトで質感も生々しい。トランジェントのさらなる向上でもう1枚ベールを脱いだような立体的な打ち込み音にゾクゾクする。センターのボーカルは、音数の多いオケがガンガン鳴っていても、分離に優れはっきりと定位する。
ファイナルファンタジーVII リバースよりテーマソング「No Promises to Keep」のハイレゾ版。ピアノの立ち上がりが鮮明になり、音が収束してゆくグラデーションがピュアで淀みがない。より生音らしさがアップした。ボーカルはライブで歌ってくれているような“その場感”に圧倒された。自宅のオーディオ環境でこの音が出ることに、ちょっと言葉を失う。
「ベートーヴェン: 祝賀メヌエット 変ホ長調 WoO 3」は、左右からの音の包囲されている感覚がさらにリアルに感じられる。おそらく低域の残響がよりクリアになって、トランジェントの向上によってさらに引き締まったことが影響しているようだ。生のホールトーンを思い出して比較しても、正しい方向への進化だと分かる。ティンパニの響きもとても美しい。
「SUMMER VIBE」を再生すると、ヘッドフォンで注意して聴かないと分からなかったレベルの細かな音までスピーカーで楽しめるではないか。アコースティックベースの弦を触れる音とか、決して前の環境で聴こえなかった訳ではないのに、より鮮烈に、それこそリスナーがリラックスしていてもスッと耳に入ってくる、そんな体験だ。
N8 Proの電源ケーブルは一般的な3Pタイプが同梱されている。試しに手持ちのオーディオグレードの電源ケーブルに交換してみた。サブウーファーに使用している自作ケーブル(線材はPOWER STANDARD-TripleC8800、プラグとインレットはフルテックの無メッキ)をN8 Proに繋いでみる。全帯域がわざとらしく感じないほどにエネルギー感を増し、高域にわずかに残っていた雑味は消え去った。余裕があれば、電源ケーブルの交換もやってみるのがいいだろう。
ネットワークオーディオの高音質化は“積み重ね”。Silent Angelはそこで活用できる
ということで、「スイッチングハブであっても」という枕詞が要らなくなるほどに、Silent Angelの高い技術力と性能でもってすれば、大きな音質改善の効果があることが確かめられた。
筆者なりのまとめをするならば、ネットワークオーディオの音質改善はとにかく“積み重ねるしかない”ということ。アンプやスピーカーのように、交換することでサウンドのキャラクターを変化させたり、より優れた音で好みに近づけていくという方向性ではない。
厳しい表現になってしまうが、「悪い状態をよりマシにしていく」ということだと思う。基本的な対応としては、電源ラインと信号ライン(LAN)のノイズ対策や、振動対策は大事になると考えている。Silent Angelのスイッチングハブを導入すれば、優れたクロックと低ジッター設計、ノイズに配慮した電源回路や内部構造によって、ネットワークオーディオの音はたちまち改善することだろう。
オーディオあるあるとして、スピーカーを高級品から普及価格帯のクラスに戻すと、ガッカリすることもあるが、まぁ仕方がないと我慢はできる。だが、ネットワークオーディオの音質対策は、一度マシになった音を聴いてしまうと、前の音がより悪く思えて我慢できなくなる。いわゆる好みの問題とは言えない、普遍的な音のクオリティ向上がそこにはある。
各種の対策を積み重ねることでストリーミングやハイレゾの音がみるみる内に音源本来の姿を取り戻し、それはすなわち、アーティストやエンジニアの込めたマスタークオリティに近付くということでもある。「スイッチングハブまでオーディオ用?」と不思議に思った人は、Silent Angelを試してみて欲しい。