どんでん返しもあり得る…圧倒的な成長を続ける「エヌビディア」を待ち受ける「意外な死角」

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エヌビディアの四半期決算の内訳

米国時間の8月28日、半導体大手エヌビディア(NVDA)が、2025年第2四半期の決算を発表しました。同社は現在のAIブームの中心にあり、テクノロジー分野を牽引してきた銘柄です。

時価総額は執筆時点(8/30)で3兆ドルを超え、一時は世界で最も価値のある企業(時価総額世界一)となったこともありますが、現在はアップルに次ぐ時価総額2位に位置しています。

まずはエヌビディアの四半期決算の内訳を見ていきましょう。

決算のハイライト

エヌビディアは好決算を出しました。

調整後の1株当たり利益は68セントで、これはコンセンサス予想である64セントを上回る結果となりました。また売上高は300億4,000万ドルに達し、こちらも予想されていた287億ドルを超える好調な数字でした。

さらに、エヌビディアは今四半期の売上高を325億ドル程度と見込んでおり、これもアナリスト予想の319億ドルを上回っています。この売上高は前年同期比で80%増という驚異的な成長を示しています。

今回の四半期決算では、売上高が前年同期比で222%増加し、4期連続で前年比200%以上の成長を達成しました。純利益も、前年同期の61億8,000万ドル(1株当たり25セント)から166億ドル(1株当たり67セント)へと大幅に増加しています。

データセンターとAIプロセッサーが業績を牽引

エヌビディアの成長を牽引したのは、データセンター事業の著しい伸びです。

この部門の売上高は前年同期比154%増の263億ドルに達し、総売上高の約88%を占めており、この数字は予想252億4,000万ドルを上回るものでした。

同社のGPU製品であるH100やH200は、OpenAIのChatGPTをはじめとする多くの生成AIアプリケーションで使用されており、これが同社の業績を支える要因となっています。

【その他のセグメントも堅調に推移】

ゲーム部門の売上高も前年同期比で16%増加し、29億ドルに達しました。これもStreetAccountの予想である27億ドルを上回っています。エヌビディアは、PC向けゲームカードの出荷増加やゲームコンソール向けシステム・オン・チップ(全体システムを一つのチップにまとめる技術集約型の半導体)が売上増加に貢献したとしています。

さらに、エヌビディアは高性能グラフィックデザイナー向けや、自動車やロボット向けのチップも製造しており、グラフィック部門は前年同期比20%増の4億5,400万ドル、自動車およびロボット部門の売上は3億4,600万ドルで、市場予想の3億4,470万ドルを上回りました。

ところが、決算発表後のエヌビディアの株価は下落しています。

その要因について考えていきます。

エヌビディアの好決算に対してマーケットの反応が鈍い理由

【来期ガイダンスの微妙な数字が焦点】

エヌビディアの決算は、アナリスト予想を超えるものでした。

ところが、決算発表後のエヌビディアの株価は売りが優勢となっています。

なぜ株価が下落したのか?その理由の一端に、来期のガイダンス(見通し)にあります。

発表されたガイダンスは32.5億ドルでしたが、この、0.5億ドル単位で刻んだ設定が株式市場にとって微妙な印象を与えたのです。

なぜなら、これまでエヌビディアのガイダンスは1ビリオン単位で数字を発表しており、はじめて0.5ビリオンで刻んだことを意味するからです。

マグニフィセント7のなかでも筆頭成長株であるエヌビディアは、常に市場の期待を超えるガイダンスを提示することが求められ超えてきましたが、今回は投資家の期待に十分に応えられなかったことを示しています。

なぜならガイダンスの数字が、成長の鈍化を示唆している可能性が高く、投資家の間で成長が鈍化したのではないか?という不安が広がったことが株価の反応でも推測できます。

【粗利率の下方修正が引き金に】

さらに、エヌビディアの粗利率(Gross Margin)の下方修正が、株価下落の要因として大きく影響しています。前回の決算では、予想を大幅に上回るマージンを達成していましたが、今回はわずか0.3%のビートに留まりました。具体的には、7月期のガイダンスは74.8%、結果は75.1%でしたが、これは市場がエヌビディアに期待したほどの上振れではありませんでした。

さらに、次期のガイダンスは74.4%と、さらなるマージンの低下が予想されています。

そもそも、エヌビディアは需要が供給を上回る状況にあるはずではないのか?

この前提で考えたとき、なぜ粗利率が下がるのかという疑問が残ります。

こうした不確定要素を常に嫌う機関投資家の売りを呼んだ可能性があり、それが株価の下落につながっていると考えられるのではないでしょうか。

なぜなら機関投資家は、疑問が生じた場合には一旦売却し、その後に状況を精査することが一般的だからです。今回の決算後の株価下落も、そのような動きが背景にあると考えられます。

注目の次世代半導体『ブラックウェル』とは

四半期決算の発表同様に注目されたのが、エヌビディアのデータセンター向けの次世代AI半導体「ブラックウェル」の出荷計画です。なぜなら、ブラックウェルの生産遅延が報じられ、新製品の収益貢献時期に対する不透明感が高まっていたからです。

これについて、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、5〜7月期にブラックウェルのサンプル出荷を開始し、2024年11月から2025年1月にかけて数十億ドルの出荷を見込んでいることを明らかにしています。市場では、ブラックウェルの出荷遅延によって現行のAI半導体「ホッパー」の販売が落ち込む懸念がありましたが、CEOは「需要は依然として強い」との見解を示しています。

ところが投資家にとっては、エヌビディアの今後の強い見通しと映っていないことが、現在の株価に表れていると筆者は考えます。

現状、生成AIはコモディティ化しており大きなビジネスを産んでいない

現在のAIブームは、主に生成AI(Generative AI)に注目が集まっています。生成AIとは、プログラムを自動生成したり、音楽や絵画などの芸術作品を創作したりする能力を持つAIです。

実は、これ以外にも昔から存在していた機能特化型のAIもありますが、生成AIが特に注目されている理由には、以下の点が挙げられます。

【コーディング補助での生成AIの強み】

生成AIが特に得意とする分野の一つが、ソフトウェア開発のコーディング補助です。その性能が高い理由の一つは、プログラマたちが自分のスキルを証明するために、自作のコードをインターネット上に公開している点にあります。例えば、GitHubなどのプラットフォームでは、多くのプログラマがオープンソースプロジェクトに参加し、自分のコードが採用されることを目指しているため、AIが学習できる良質なデータが大量に存在します。

このようなデータを活用することで、生成AIは優れたコーディング補助能力を発揮しています。

【芸術分野での生成AIの適性】

生成AIはまた、音楽や絵画などの芸術分野でも非常に効果的です。芸術には必ずしも「正しい一つの答え」というものが存在しないと考えれば、生成AIが新しい作品を創作する際に生じる「ハリュシネーション(hallucination)」(AIがデタラメな情報を生成する現象)も、作品の個性として評価されることがあります。

このように、芸術分野では生成AIの創造性が発揮されやすいのです。

一方で、数学の問題解決といった、正しい答えが一つに定まっているタスクに対しては、生成AIはよく誤りを犯します。これが問題となるのは、AIが間違った情報をあたかも正しいかのように流暢に提示するためです。

【生成AIバブルと競争激化】

現在の米国株式市場では、この生成AIブームが大きな影響を与えていますが、恩恵を最も受けているのがエヌビディアです。しかし、前述してきたように、直近の四半期決算を見る限り、生成AIのブームが持続可能かどうかについては、懐疑的な見方があるのも事実です。

現在の生成AIの代表的なモデルには、OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、そしてAmazonが支援するAnthropic社のClaudeがあります。これらのAIはそれぞれ特徴を持ち、特にChatGPTはその流暢さで、Claudeは正確な応答で評価されてきました。しかし、最近では、Claudeが以前ほどのパフォーマンスを発揮しなくなったという指摘もあります。一方、GoogleのGeminiは、以前よりも性能が向上し、Claudeに追いついてきているとの評価もあります。

さらに、Meta(旧Facebook)もLLM(Large Language Model)をオープンソース化しており、誰でも無料で高度なAIを利用できるようになっています。

これにより、生成AIの開発は、以前ほどの巨額の投資を必要としなくなり、競争が一層激化しています。

【AIバブルの行方】

何より忘れてはならないのが、生成AIを使った新たなビジネスモデルは確立されていないことです。

いいかえれば、生成AI関連の投資額に見合った収益が立っていないため、いずれバブルが崩壊する可能性が高いということです。

果たしてAIバブルが崩壊する前にビジネスモデルを確立できる企業が現れるのでしょうか。

少なくとも筆者はこの可能性がある企業を現段階では知りません。

おわりに エヌビディア最大の死角はGAFAMの内製化かもしれない

エヌビディアの最大のライバルは、GPUを購入する大口顧客のGAFAMという強烈なドンデン返しの結末が待っているかもしれません。

なぜなら、GPUはゲーミング向けに開発された半導体であり、その本質はAI処理に向いた構造ではないという指摘もあるからです。

その他にもGPUを大量に積んだデータセンターの電力消費が莫大であることも大きな課題です。

つまり、AIに特化した効率的で省電力の独自半導体が必要とされており、その研究をしているのが他ならないGAFAMなのです。

何より、エヌビディア1強体制という歪な構造の打破を望んでいるのがGAFAM自身であり、自社で内製化したいと考えるのは自然な流れではないでしょうか。

だからこそ、投資家としてもエヌビディアへの過度な期待には警笛を鳴らすべきだと筆者は考えます。

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