大阪のSORAが華麗な花で彩られた『なにわ淀川花火大会』、醍醐味は淀川の水辺、美しい花火、街の明かりが織りなす風情

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第36回 なにわ淀川花火大会 2024.08.03(SAT)

8月3日(土)、「~RISE~ SORA高く舞い上がる花火に想いをのせて世界へ」をテーマに『第36回 なにわ淀川花火大会』が開催された。今年も天候に恵まれ、大阪市の日中の最高気温は37度。それぞれの想いで見上げる大阪のSORAが華麗な花で彩られた、暑さに負けない笑顔あふれるアツい夜だった。

JR塚本駅から会場へ

塚本駅に到着!

イープラスエリアの最寄り駅はJR大阪駅のお隣、塚本駅。一駅だからと油断していたが、17時過ぎのJR大阪駅のホームは花火見物に向かう人たちで大混雑。予定していた電車に乗ることができず、次の電車を待つことに。

満員電車に揺られ17時20分頃、塚本駅に到着。ホームから改札階に向かう階段もかなり混雑していたが、押し合ったりはせず、スムーズに改札を出ることができた。駅周辺はすでにお祭りムードが漂い、会場に向かう人たちのワクワク感が伝わってくる。

線路沿いにまっすぐ進む

塚本入場口ゲートから入場してすぐe+エリアに到着

駅の東出口から線路沿いを淀川方面に人の流れに合わせて進み、10分ほどで淀川の河川敷に設けられた協賛観客席の塚本入場口チェックゲートに到着。入場して一番手前にあるのがイープラスエリアだ。中に入るとずらり並ぶ椅子の向こうに、淀川そして梅田のビル群が見渡せる。水都・大阪を感じられる景色だ。

10人に1人が浴衣姿、待ち時間もイープラスシートでゆったり

e+VIPペアシート

イープラスエリアには、パイプ椅子が並ぶイープラスシートのほか、その奥にあるe+桟敷エリア、サマーベッドエリア、e+VIPペアシートがある。

VIPはお弁当つき

e+桟敷エリア

e+桟敷エリアは大きなマットレスが敷き詰められていて、ごろごろしながらくつろぐことができる。家族団欒にもぴったりだ。サマーベッドエリアは好きな角度で寝ながら花火を楽しめる。e+VIPペアシートはVIPというだけあって他のシートと比べて見やすい位置にあり、お弁当と冷えたお茶も用意されている。お弁当は特製パッケージで、イープラスエリアではVIP席でないと食べることができない特別感もある。

驚いたのは、浴衣を着ている方の多さ。エリア内では10人に1人くらいが浴衣姿で、シックで落ち着いた色合いの浴衣が多いように感じた。目にするたびに涼しげな気持ちになる。浴衣姿の方を指定席に座れることから、人込みでの着崩れ等の心配が少ないため浴衣を着る方が多いのかもしれない。

もう一つ、様々な年代の方がみられたのも印象的だった。杖をついて歩いている方もおられたが、エリア内は混雑しすぎることがないので、小さなお子さんや足腰に不安のある方も安心して楽しめる。

おかしのつかみ取りも実施

花火の打ち上げ開始は19時30分。それまでの時間はエリア内の屋台を楽しもう。飲食の屋台では、定番のかき氷や透明のカップで提供される冷たいうどんが人気だ。購入できるのはエリア内のお客さんだけで、列ができていてもスムーズに購入することができのでご安心を。

ちなみに、花火大会やお祭りで混雑し困ることが多いお手洗いはエリア内専用で設置されていたため、行列ができていたのは打ち上げ開始直前だけだった。

桜井雅斗によるDJブースでノリノリ!

桜井雅斗

さて、イープラスエリアの大きな特徴といえば、お客さんの顔を見ながら音楽をかけるDJブースだ。今年は吉本新喜劇の座員でFM大阪のラジオDJでもある桜井雅斗が「無音になると寂しいでしょ?」「ぶち上げていきますよー!」と時折トークも挟みながら、会場を盛り上げる。湘南乃風「睡蓮花」やWhiteberry「夏祭り」、D-51「NO MORE CRY」など、特に30~40代にとっては青春を思い出す懐かしいサマーソングが次々と流れ、キュンとした方も多いのではないだろうか。わたしもその一人だ。

ひときわ目立っていたのが、DJブースにかぶりつきで音楽に合わせ軽妙なダンスを披露していた小学1年生の男の子。お母さんに話を聞いたところ、今日はおばあさんと3人で来場。息子さんはダンスを習っているわけではないが、毎日自宅でYouTubeの動画に合わせて踊っているそう。会場で一緒に遊んでいたほかの子どもたちと元々友だち同士かと思いきや、ここで初めて会ったようで、子どもたちの友だち作りの早さに感心してしまった。

スーパーボールをすくい、DJブースで踊りと大満喫していた兄弟も

早めに到着し、会場に流れてきたaiko「花火」を口ずさんでいた浴衣姿のカップルは「席が決まっているから自由に動けるのが良いし、DJが音楽を流してくれるので、待ち時間が暇じゃない」と打ち上げまでの時間もしっかり楽しんでいた。

友情を育む花火大会!?

DJブースの音楽の力も加わり、花火打ち上げに向け徐々にボルテージが上がっていくエリア内で、お客さんたちの声を聞いた。尼崎から来場されたご家族のお父さんは、イープラスシートに毎年足を運んでいるのだとか。「イープラスシートは指定席のわりに比較的値段が手ごろで、塚本駅からのアクセスの良い。エリアに入ると、ここのお客さんしかいなので落ち着ける」とのこと。結婚前から一緒に来ていた奥様との思い出の場所でもあり、今年初めて3歳のお子さんを連れてきたので「近くで見せてあげたい」と嬉しそうに語ってくれた。また一つ、家族の素敵な思い出が増えそうだ。

仲良くかき氷を食べていた奈良と東大阪から来場した男性と女性は、駅や道が込み合う前に会場入り。話を聞いたときに食べていたかき氷は、本日2杯目だったそう! 毎年指定席シートのチケットは早めに売り切れてしまうので、5月の発売と同時に「速攻で」申し込んだということだった。

サマーベッドエリア

大学生時代にバイト先で知り合い、長年の付き合いになるという女性二人は、毎年一緒に淀川花火大会を観るのが恒例になっているという。ここ最近は椅子に座って観る「大人な楽しみ方」を味わっているのだとか。学生時代からの友人と毎年一緒に花火を観る。素敵な恒例行事だ。

いつの間にか陽が沈み夕焼け空になってきた19時過ぎ。飲み物片手におしゃべりで盛り上がる、とても仲がよさそうな20代の男性4人組に声をかけた。実はグループのうち2人が恋人と一緒に花火を観ようと意気込んでチケットを2枚ずつ購入していたのだが、残念ながら2人とも願い叶わず。結局、友だちを誘って4人で来ることになったと少し残念そうに話してくれた。

4人は看護系大学の同級生で、卒業後も定期的に集まっている仲良しグループ。「職業柄、コロナ禍での仕事は大変だった」という会話もあり、つらい時期を支え合った友情が垣間見えて微笑ましい気持ちになった。「来年は、女の子と来ます!」とそれぞれ力強く宣言し、願いは叶ってほしいと思いつつ、来年もこの4人で花火を観るのもいいんじゃない!? と心の中で呟いている自分がいた。

いよいよショータイム!

そうこうしているうちに夜の帳が下りてきた。エリア内を歩いていた皆さんもいつのまにか席に着き、観覧の準備万端だ。

大会アナウンスの「5、4、3、2、1、0~」の掛け声とともに、感嘆の声と花火が上がっていく「ひゅ~」という音が夜空に響く。19時30分、最初の花火が上がった。

今年のテーマは「~RISE~SORA高く舞い上がる花火に想いをのせて世界へ」。第1部オープニング「陽 ~Rising Up~」、第2部「翔 ~Flying Up~」、第3部「騰 ~Heating Up~」、第4部「昇 ~Climbing Up~」、第5部「跳 ~Jumping Up~」の5つのシーンで構成されたプログラムだ。

オープニングはロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」に合わせ、大小の花火が競い合うように打ち上げられ、待っていましたとばかりに大きな拍手と歓声が上がった。

そこからEXILE 「Rising Sun」と共にヒートアップ。一気にダンスホールのような雰囲気に変わっていった。

Official髭男dism「Laughter」と緑黄色社会「花になって」のヒット曲に乗せ、第2部では色彩豊かで鮮やかな花火が夜空を変幻自在に飛翔。闇夜に飛び交うカラフルな花火の発色の良さに驚かされた。

SEKAI NO OWARIのアニメ『ONE PIECE』主題歌「最高到達点」と共に始まった第3部は、観ている人を鼓舞するような力強い演出で華やかに花火が打ち上った。 SPYAIR「オレンジ」が流れるとこぶしを掲げ叫びたくなるようなコンサート会場さながらの盛り上がりに!

一転、第4部の始まりはケルティック・ウーマン「You Raise Me Up」でしっとりとした雰囲気へ。水面近くでの花火の演出は、これまでとは一味違う大人な空気が漂う。近くで観るからこそ楽しめる下層演出と神聖なメロディーにうっとりした。そのあと、しばらく無音の中で夜空に高く上がった花火は胸に迫る美しさだった。

そして、静寂を切り裂くように流れてきたのがYOASOBI「アイドル」。ピンク色の花火が目に鮮やかでドラマチックな展開だ。上下左右、空間を大きく使って打ち上げられる花火は音楽とのリンク度合いが素晴らしく、爽快なひと時だった。

[Alexandros]「ワタリドリ」が響き渡り始まったグランドフィナーレは、これでもかという圧倒的なボリュームと壮大なスケールの花火で会場全体が揺れているように感じた。

曲がVaundy「怪獣の花唄」からエルガー「威風堂々」に変わると、花火が徐々により大きく、より高く打ち上げられていく。今日一番の興奮と感動が押し寄せてきた瞬間だった。花火をスマホのカメラに納めたい気持ちと、この目にしっかりと焼き付けたい気持ちで忙しい。視界が天高く舞い上がる花火で埋め尽くされた。まぶしいほど美しい、この時間が終わってほしくないと願ったのは私だけではないはずだ。

花火の余韻と大阪の夜景

20時30分。花火の最後の炎が消え、会場では歓声とため息が洩れた。あっという間の1時間だった。花火が終わった後に残されたのは、すごいものをみたという感動と興奮の余韻、そして淀川越しに見える大阪市中心部の摩天楼だ。淀川の水辺、美しい花火、街の明かり。こうした風情が、大阪が誇る『なにわ淀川花火大会』の醍醐味だと再確認する光景だった。

花火が終わると、規制退場のアナウンスが始まり、退場開始の案内があった後も会場出口や周辺道路が混雑するため、しばらくの間はエリア内で過ごすのがおすすめだ。

DJブースでは桜井がフジファブリック「若者のすべて」など、祭りのあとの切ない気持ちを代弁するような選曲で音楽をかけていた。お客さんたちも名残惜し気な表情で、身体を揺らしている。気持ちのいい時間だった。

当たり前だが花火は様々な場所から楽しめる。私はこれまで遠くから観ることが多かったのだが、目の前の川から打ち上がる花火はやはり格別だった。低い位置の演出や会場の音楽、人々の熱気、そして終わった後の余韻までしっかりと味わうことができ、ここでしか体験できない感動があった。

「なにわのSORAから、届け世界へ!」

帰路に就く皆さんの満足そうな笑顔をみていて、あるお寺のご住職の言葉が心に浮かんだ。「花を見て癇癪をおこす人はいない」花火も同じではないだろうか。

なにわ淀川花火大会の大会テーマは、「なにわのSORAから、届け世界へ!」。世界には、笑顔で空を見上げられない人もたくさんいる。今日大阪の空に咲いた花火がくれた笑顔を世界へ届けられたらどんなにいいだろう。

来年もこの場所で皆さんの笑顔がみられることを願っている。

取材・文=井川茉代 撮影=高村直希