この記事をまとめると

■日本ではミドルサイズSUVが人気を博している

■日産ではエクストレイル、トヨタはRAV4、マツダはCX-5がライバル車種だ

■人気の3モデルを使い勝手やパフォーマンスの面で比較する

大人気SUV3モデルを徹底比較

 今、世界的に絶大なる人気を誇るクルマのジャンルがSUV。そのなかの国産車で日本の路上で扱いやすいサイズ、ゆとりある室内空間、大容量のラゲッジルーム、そして抜群の走行性能をもち合わせるのが、日産エクストレイル、トヨタRAV4、マツダCX-5などのクラスではないだろうか。

 それぞれのボディサイズは、デビュー年が新しい順に記すと、2022年7月登場のエクストレイルが全長4660×全幅1840×全高1720mm、ホイールベース2705mm。SUVで気になるかもしれない最低地上高は2WDが200mm、4WDが185mm。2019年4月デビューのRAV4は全長4600×全幅1855×全高1695mm、ホイールベース2690mm。最低地上高190〜200mm。2016年12月登場のCX-5は全長4575×全幅1845×全高1690mm、ホイールベース2700mm。最低地上高はこの3台のなかでトップの210mmとなる。

 パワーユニットは3車3様だ。日産・三菱・ルノーのアライアンスによるCMF-C/Dモジュラープラットフォームを用いたエクストレイル(2WD/4WD)は全車にハイブリッドのe-POWERを搭載。3気筒1.2リッターVC(可変圧縮比)ターボによるシリーズハイブリッドで、エンジンは発電のみを担う。つまり100%電動駆動車ということだ。そして2WDとともに、アリアにも採用される最新の電動車用電気4WDシステム=e-4ORCEを用意する。

 RAV4(2WD/4WD/E-Four)のパワーユニットは2リッターガソリン、およびトヨタのもはや定番となる2.5リッターエンジン+2モーターのハイブリッド、そして2.5リッターエンジン+前後2モーターの充電も可能なPHEVが揃う。

 とくにアドベンチャーグレードに採用される4WDシステムはRAV4のために開発された「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」は必見だ。これは、後輪左右のトルクを別々に制御(0〜100)するトルクベクタリングコントロールと、4WDを必要としない場面で後輪への動力伝達を切り離し、燃費を向上させるディスコネクト機構を備えたもので、RAV4のキャラクターを都市型からクロスカントリー方向に舵を切った切り札といっていい。

 デビューから早、8年を迎えるロングセラーモデルのCX-5(2WD/4WD)は2リッターガソリン、2.5リッターガソリン、そしてマツダ自慢の2.2リッターディーゼルターボの3種類を用意。CX-60に用意されるマイルドハイブリッドやPHEVの設定はない。

 SUVは燃費が悪い……というのはもはや過去の話で、WLTCモード燃費はRAV4のハイブリッドで最高21.4km/L。e-POWERのエクストレイルが最高19.7km/L 。CX-5のディーゼルターボで最高17.4km/(いずれも2WD車)となっている。

3モデルそれぞれの使い勝手は?

 では、室内の広さはどうだろう。

 前席については各車、十分なスペースがあるのは当然。気になるのは後席で、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準では、エクストレイルが頭上に150mm(サンルーフ装着車)、膝まわりに235mm。前席に対してかなり高めに座るシアター的居住感覚だ。着座、立ち上がりのしやすさにかかわるフロアからシート前端までの高さ=ヒール段差は340mmと十分。

 RAV4は同、頭上に180mm、膝まわりに210mm。ヒール段差は320mmと、やや低めに座るシートポジションとなる。

 CX-5は同、頭上に155mm、膝まわりに190mm。ヒール段差はかなりアップライトな椅子感覚で座われ、前方見通し性もいい360mmだ。結果、後席居住性のゆとりにつながる膝まわり空間では、エクストレイルがリードしていることになる。なお、RAV4とCX-5は2列シートのみだが、エクストレイルには3列シートも用意されているのが特徴だ。

 SUVといえば、アウトドアなどでも大活躍してくれるクルマのジャンルであり、アウトドアにもっていく大荷物の積載性も気になるところ。エクストレイルは2列シート最大565リットルの容量で、フロア奥行き920mm、フロア最小幅1090mm、最低天井高790mm。

 後席よりラゲッジルーム優先パッケージと言えるRAV4は580リットルの容量で、フロア奥行き1020mm、フロア最小幅1150mm、最低天井高805mm。

 CX-5は505リットル(床下収納30リットル含む)、フロア奥行き960mm、フロア最小幅1040mm、最低天井高790mm。

 荷物の積載力ではなるほど、ラゲッジルーム優先パッケージのRAV4がややリードする。しかし使い勝手ではエクストレイルも文句なしで、欧州車的な後席4:2:4分割も使いやすさにつながっている。※フロアの数値は筆者の実測値。

 さて、走行性能比較だが、エクストレイルのe-POWER、RAV4のガソリン、ハイブリッド、CX-5のマツダ自慢のスカイアクティブ-D=クリーンディーゼルターボであれば、どれも満足に足る走りをみせてくれて、あとは好みの範疇。が、操縦性、乗り心地、静粛性の総合評価では、さすがにデビュー年がもっとも新しいエクストレイルのe-POWERが内外装デザインを含め、一歩リードする印象だ。とくにe-4ORCEモデルのタフネスにして洗練ある先進的な走行性能は特筆に値するといっていい。

 各車のオススメグレードはエクストレイルなら制限速度が変わったときの設定速度の切り替えや、カーブの大きさに応じて減速をシステムが支援してくれるナビリンク付きプロパイロットを装備するX-e-4ORCE(2列シート)。

 RAV4は走破性重視ならガソリンのアドベンチャー、ハイブリッド狙いならPHEVとの実質支払額の比較も欠かせない。PHEVは補助金によってハイブリッドとの価格差がグーンと縮まるからだ(とくに東京都)。

 CX-5はやはり主力、人気車種でもあるスカイアクティブ-Dのクリーンディーゼルの特別仕様車、XD Retro Sport Editionがお薦め。その図太いトルクによる悠々とした走りは、デビュー年がもっとも古くても色あせていない。

 長く乗り続けたい……というなら、もっとも新しく、全方位に洗練されたエクストレイルではないか。ちなみに、エクストレイルのエンジンが3気筒……という点はまったく気にしなくていい。あくまで100%電動駆動でエンジンは発電のためだけにあるからだ。

 なお、アウトドアでAC100V/1500Wコンセントを使いたいというなら、電動車のRAV4のハイブリッド、PHEV、そしてエクストレイルの選択になる(災害時の電源供給車としても役立つ)。