それは、『名探偵コナン』のために温めてきた特別な1曲だった──ZARDトリビュートバンド・SARD UNDERGROUND、5周年に刻む最新作を語る

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ZARD、坂井泉水が作り上げてきた名曲たちを未来へ継承していく──そんなコンセプトでスタートしたバンド・SARD UNDERGROUNDが、デビューから5周年を迎えることとなった。ZARDという偉大なJ-POPのレガシーを背負いながら、2021年以降はオリジナル楽曲を発表するようになり、並行してSARD UNDERGROUNDというバンド性、作家性を強めていくようになった。そんな5年という数字以上に濃密な時間を過ごしてきた彼女たちが、SARD UNDERGROUNDのこれまでを凝縮した2ndオリジナルアルバム『涙色』と、TVアニメ『名探偵コナン』新EDテーマとなったニューシングル「夢で逢いましょう」を同時リリースする。神野友亜（Vo.）、杉岡泉美（Ba./Cho）、坂本ひろ美（Key./Cho.）の3人に、本作を含むバンドの現在地、そして未来について話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

5年をかけて紡いだ絆と、バンドとしての成長

──今年はSARD UNDERGROUNDがデビューから5周年となりました。この5年間を振り返った感想を教えてください。

神野友亜　この5年間、コロナ禍もあってバンドを続けること自体が本当に難しいこのご時世で、そんななかで続けてこられたことがすごくありがたいなって思ってるんですが、「まだ5年か」とも思いますね。私たちとしてはもっともっとまだ先を見ています。

坂本ひろ美　私もすごくあっという間という感覚だったんですけど、思い返すとライブツアーやファンクラブイベント、リリースイベントでもたくさんの方にお会いできて、本当に濃い5年だったなって思います。

杉岡泉美　本当に、5年も続けられていることが信じられないくらいです（笑）。でも、その5年間でたくさんのファンの皆さんとはもちろん、メンバーとスタッフの方々ともいっぱい思い出ができたので、改めてこの場所にいられる感謝というか、「これからもよろしくお願いします」という気持ちです。

──そうした濃い5年間を過ごされてきた皆さんですが、デビューからのコンセプトの1つに、“ZARDの作品を後世に伝える”というものがありました。そうしたZARDの名曲、坂井泉水さんの音楽との向き合い方はこの5年間で変化がありましたか？

神野　最初は本当に必死で、「私なんかで大丈夫かな？」って思っていたんですけど、こうやってメジャーデビューさせてもらったからには、「不安でいたら失礼だな」って思うようになって、任せてもらったからには全力で感謝してやっていこうと思って。そうやって、なんでも吸収するように続けていったら、最近はちょっと安心して届けられるようになってきました。

坂本　ライブだと特に、最初は「間違えたらいけない」という緊張感が強かったです。

神野　ありましたね。本当に！

坂本　絶対に演奏を間違えない！っていう気持ちのなかで、皆さんに届けなければと思っていたんですよ。でも最近は、より「届けよう」ということに集中できるようになりましたね。

杉岡　最初は正直、受け入れられない怖さがありました。ZARDさんの楽曲という大きさがあったので、ライブでも緊張で手が震えるくらいだったんですけど、今はメンバーとも心が打ち解けて、一緒の舞台に立てて安心できますし。ファンの方とも交流が増えて、「応援してるよ」とか、「ZARDの曲を演奏してくれてありがとう」って言ってくださる方々がいて。ライブでもお客さんのなかにZARDさんのことを好きな方がたくさんいらっしゃるので、会場のみんなでZARDさんの曲を感じている気がしています。皆さんと「ZARDさんってすごいですよね！ 素敵な楽曲ですよね！」って共有できている感があるというか。

今回のアルバムでSARD UNDERGROUNDの世界がまとまった

──そういった様々なファン層のあるSARD UNDERGROUNDが、5周年のタイミングで2ndオリジナルアルバム『涙色で』をリリースします。この5年間でSARD UNDERGROUNDオリジナルのサウンドというものもより強まった印象で、それを1枚に凝縮したアルバムになったと思います。

神野　そうですね。今回のアルバムでSARD UNDERGROUNDの世界がまとまった感じがしています。今までやってきたバラード曲やロック調の曲も含めて、全体的に整っているというか、世界観がしっかり構築されているんじゃないかなと思っています。

──たしかに本作はバラエティに富んだ印象がありますよね。1stアルバムの『オレンジ色に乾杯』はウェストコースト風味なロックを含むポップなもので、2022年のミニアルバム『日の名残り』はハードなサウンドも聴かれるなど、それぞれの色が出ていると感じましたが、本作はそれらを含めてより広い世界観を感じさせますね。

神野　アルバムを作るとなったときに、全体で聴いて「これがSARD UNDERGROUNDだ」って思えるようなアルバムにしたかったのと、5周年ということで、10周年に向けての折り返しで改めて自分を見つめ直す、というのをテーマに作詞しました。

──作詞も担当する神野さんとしては、バンドのこれまでとこれからを意識した部分はあるわけですね。

神野　ありました。今までを思い返すと、今よりもっと頑張れていた時期ってやっぱりあるんですよね。例えば、「今ちょっと心が落ちていて頑張れていないな」というように思うときもあって、それに気づけているうちはまだいいですけど、気づけなくなったらやばいなと思って。だから曲を聴いたら当時のことを思い出せるように、「見つめ直す」みたいなテーマを込めて書きましたね。この先も精神的な波はあるけど、絶対にここに戻ってこよう、みたいな。

──また神野さんの歌詞の世界観は、これまでも”私とあなた”というようなミニマムな世界観で描かれているものが多くて、本作でもそれは踏襲されている印象です。

神野　嬉しいですね。いつも曲ごとに、その曲だけの空間にしようというのは意識して制作しています。

──どこか短編を集めたオムニバスのような印象もありますが、作り方としても一曲一曲ストーリーを思い浮かべながらの制作になるわけですね？

神野　そうですね。だから複数の曲を並行しては作れないんですよ。常に、この曲が全部完成してから次の曲、という感じなんです。

『名探偵コナン』のために温めていた「夢で逢いましょう」

──さて、実にバラエティに富んだ楽曲たちが収められた本作ですが、皆さんのなかで特に印象に残った曲を挙げるとどれになりますか？

神野　私は「フタリシズカ」ですね。

──ゆったりとした、アコースティカルなミディアムナンバーですね。

神野　この曲は、3年前にリリースしたシングルの「ブラックコーヒー」と同じ時期に制作していた曲で。そのときに歌詞も完成していたんですよ。だから個人的にも「やっと出せた！」っていうのが嬉しかったですね。

──今回のアルバムに入れるにあたって、歌詞で直したというところもなく？

神野　はい、歌詞でいうと5年前くらいのものになりますね。

──なるほど、それが5周年というタイミングで世に出るのも感慨深いですね。坂本さんはいかがですか？

坂本　私は「星の光」という曲がすごい好きで、これは5周年ということをテーマに書かれている曲なんですけど、私たち自身に刺さる言葉も多いですし、ギターから始まるイントロとメロディーもすごく好きで、お気に入りですね。

──先ほど、神野さんの歌詞は短編小説的なフィクション感があるという話がありましたが、この曲はバンドのことを書いたドキュメンタリー感があるというか。

神野　そうですね、こういう書き方をするのは初めてかもしれないです。自分たちのこと、SARD UNDERGROUNDとファンの皆さんとの物語みたいなものを意識したのは初めてですね。

──となると、今後のライブでも非常に意味を持つ曲になるのかなと。

神野　”今日がまた思い出の日になるよ”というフレーズがあるんですけど、毎回のライブでそれを感じてほしいですね。

──続いて、杉岡さんの好きな楽曲は？

杉岡　私が印象に残っている曲は「涙色で」ですね。”死ねと言われたら死ねる”という歌詞が衝撃的すぎて、これまでSARD UNDERGROUNDを聴いてきた方も「えっ!?」ってなると思います。

──サウンドもデジタルな音色を含む攻撃的なものですし、非常にフレッシュですよね。

神野　たしかにシリアスな世界観ですよね。

──冒頭のコーラスも含めて、これもライブで楽しみな楽曲です。そしてこの『涙色で』にも収録されており、アルバムと同時リリースとなるのが、ニューシングル「夢で逢いましょう」。こちらはTVアニメ『名探偵コナン』の新EDテーマとなりました。

神野　2年ぶりになりますね。

──2022年の「空っぽの心」以来2年ぶりの『名探偵コナン』楽曲ということで、改めて皆さんの『名探偵コナン』への想いを聞かせてください。

神野　もう、本当に大好きです。

坂本　小さい頃から、毎週放送の時間になると「あっ、『コナン』始まるよ！」ってなっていましたよね。

神野　うちはご飯食べながら観てた（笑）。

──そんな作品の主題歌をご自身が手がけるようになるわけですからね。

杉岡　不思議ですよね。

──『コナン』との関係性も5年近く経つわけですが、ここからSARD UNDERGROUNDを知る人も多いのでは？

神野　そうですね。ライブやイベントでも『コナン』のキーホルダーをいっぱい身につけた人が来てくださいます。

──そうしたなかで神野さんが『コナン』の歌詞を手がけるというのも、思い入れが深いことなのではないかなと。

神野　実はこの「夢で逢いましょう」という曲は、私が「『コナン』のために歌いたい」と言って、発表を待ってもらっていた曲なんですよ。2年前のミニアルバムのときにはもう完成していたんですけど、そういう事情で当時は収録しなかったんです。なので、その希望が実現して今はすごく嬉しいですね。

──たしかにこのイントロからして、物悲しいサビのメロディーで始まるところも、すごく『コナン』にピッタリといいますか。

神野　『コナン』っぽいですよね。私のなかで『コナン』のアニメで印象に残っているシーンがあって。少年探偵団のみんなが「街がおもちゃみたいだ！」みたいことを言って、街を眺めているシーンがあるんですよ。そのシーンがすごく記憶にあって、歌詞にも”おもちゃみたいな景色ばかりね”って入れてみたり、『コナン』の世界観を考えながら作詞するのも楽しかったんですよね。

坂本　すごくサビが印象に残りますよね。私はそこで（工藤）新一と（毛利）蘭ちゃんを思い浮かべて聴いちゃいますね。

杉岡　サビですよね。聴いた瞬間、気づいたらもう口ずさんでいるみたいな。食器を洗ったりとか歯を磨いてるときにも「ふふふん、ふふふん♪」（“夢で 夢で 夢で逢いましょう”のメロディで）って口ずさんじゃう（笑）。懐かしさのあるメロディーで居心地がいいなと思います。

神野　みんなにも歌ってほしいですよね。

杉岡　皆さんも歌いましょう、カラオケで（笑）。

ZARD楽曲、オリジナル楽曲の両軸をさらに突き詰めたライブがしたい

──このシングルは、カップリングにZARDのカバーもまた収録されていますね。通常盤には「突然」「愛は暗闇の中で」、「名探偵コナン盤」には「少女の頃に戻ったみたいに」が、それぞれ [tribute 2024]として収録されています。

神野　この3曲は、5年前のデビューアルバム『ZARD tribute』に収録された曲なんですよ。今年の春に『ZARD tribute Best Selection』を出させていただいたんですけど、そこに入っていない曲を改めて歌わせていただきました。「愛は暗闇の中」で「少女の頃に戻ったみたいに」は、『名探偵コナン』繋がりでチョイスさせていただいて。

──ちなみに、杉岡さんは以前、「愛は暗闇の中で」をZARDの個人的名曲の1位として選ばれたこともありましたね。

杉岡　はい、そうなんです。私、この曲を歌っている坂井泉水さんが大好きで。坂井泉水さんの楽曲は「揺れる想い」とか「負けないで」の優しいイメージがあったんですけど、色々聴いていくなかでかっこいいイメージのロックな「愛は暗闇の中で」がもう、好みにドンピシャで。そこから「大好きだ」って言い続けています。今回も収録されて嬉しいですね。

──改めて [tribute 2024]として録り直していかがでしたか？

神野　今回は、以前収録されたものからキーが変わっています。5年前のときはキーもテンポも上げていたので、そこを全部落としてZARDさんにより近づいたサウンドでもう1回歌い直していますね。多分、初期の頃に原曲に近いアレンジで歌っていたらすごく浮いていたと思うんですよ。なので、今になってやっと原曲に近づけられるようになってきた気がします。

──そこもまた5年の成長が伺えるわけですね。そんな5周年を迎えて、本作リリースのあとには5周年記念の全国ツアーが控えています。アルバム初回盤にも2023年のツアーの模様がBlu-rayで収められていますが、改めてライブにおいてもご自身の成長は実感できていますか？

神野　そうですね。今までのライブと比べても確実に成長できたのかなと思います。

坂本　昨年は、初めて声が出せるようになったライブでもありますし。

神野　今まではお客さんも拍手だけでしたから、その違いも大きいですし、やっぱりワクワクしましたね。

──それを経ての全国ツアーはどんな気持ちで臨みたいですか？

神野　今回のツアーでは、大阪と東京以外は全部初めてライブをする場所なんですよ。仙台や福岡は最近よく行っているので安心感があるんですが、名古屋がちょっと緊張します（笑）。

──そうしたツアーも含めてのSARD UNDERGROUNDの今後、まさに次は10周年へと向かっていくなかでのバンドを、皆さんはどう考えていらっしゃいますか？

神野　ライブにも遊び心をプラスしていきたいですね。これまではZARDさんの世界観をしっかりやらなきゃっていうことでずっと進んできて、オリジナル楽曲の演奏においてもそういう意識があったんですけど、これからはもうちょっとオリジナリティを出して遊び心のある演奏にできたらなと。一方で、ZARDさんの曲はZARDさんの世界観でもっともっとZARDらしさを追求して届けていきたいです。

坂本　その世界を突き詰めていくためにも、キーボードをもっと上手くなって、色んなフレーズを弾けるようになりたいですね。

杉岡　ZARDさんの楽曲と、オリジナル楽曲の両方を演奏できることが私たちの強みなので、友亜ちゃんが言っていたみたいに、そのメリハリをもっと出していって、私たちのかっこいい部分をもっと見せられたらなと思います。

●リリース情報
SARD UNDERGROUND
2ndオリジナルアルバム
『涙色で』
2024年8月21日発売

【PREMIUM EDITION（CD + LIVE Blu-ray）】

品番：GZCA-5324
価格：￥8,800（税込）

【通常盤（CD）】

品番：GZCA-5325
価格：￥3,300（税込）

【収録内容】
＜CD／PREMIUM EDITION・通常盤 共通＞
1. 私と恋をしてください
作詞：神野友亜　作曲：藤中友哉　編曲：鶴澤夢人・長戸大幸
2. 涙色で
作詞：神野友亜　作曲：小澤正澄　編曲：小澤正澄
3. その結婚、正気ですか？
作詞：神野友亜　作曲：小澤正澄　編曲：麻井寛史
4. 夢で逢いましょう
作詞：神野友亜　作曲：小澤正澄　編曲：小澤正澄
5. 星の光
作詞：神野友亜　作曲：大野愛果　編曲：麻井寛史
6. フタリシズカ
作詞：神野友亜　作曲：大野愛果　編曲：鶴澤夢人・長戸大幸
7. 琵琶湖大橋
作詞：神野友亜　作曲：徳永暁人　編曲：徳永暁人
8. 役者犬のうた
作詞：鮫島琉星　作曲：長戸大幸　編曲：徳永暁人
9. 雨は虹になる
作詞：神野友亜　作曲：浅川悠魅　編曲：鈴木和哉
10. 卒業式
作詞：神野友亜　作曲：徳永暁人　編曲：徳永暁人
11. sanae
作詞：神野友亜　作曲：大野愛果　編曲：鈴木和哉

＜LIVE Blu-ray＞
SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2023 [hold me, my friend] at Zepp Osaka Bayside
（収録時間：約120 分）

SARD UNDERGROUND
7thシングル
「夢で逢いましょう」
2024年8月21日発売

【名探偵コナン盤（CD＋クリアカード）】

品番：GZCA-7193
価格：￥1,320（税込）

【通常盤（CD）】

品番：GZCA-4156
価格：￥1,320（税込）

【収録内容】
＜CD／名探偵コナン盤＞
1. 夢で逢いましょう
作詞：神野友亜　作曲：小澤正澄　編曲：小澤正澄
2. 少女の頃に戻ったみたいに [tribute 2024]
作詞：坂井泉水　作曲：大野愛果　編曲：大楠雄蔵
3. 夢で逢いましょう off vocal
4. 少女の頃に戻ったみたいに [tribute 2024] off vocal

＜CD／通常盤＞
1. 夢で逢いましょう
作詞：神野友亜　作曲：小澤正澄　編曲：小澤正澄
2. 突然 [tribute 2024]
作詞：坂井泉水　作曲：織田哲郎　編曲：麻井寛史
3. 愛は暗闇の中で [tribute 2024]
作詞：坂井泉水　作曲：栗林誠一郎　編曲：麻井寛史
4. 夢で逢いましょう off vocal
5. 突然 [tribute 2024] off vocal
6. 愛は暗闇の中で [tribute 2024] off vocal

●ライブ情報
SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2024 [tear drops]

2024年9月7日(土) 福岡・福岡トヨタホール スカラエスパシオ　※SOLD OUT
2024年9月14日(土) 宮城・仙台PIT　※SOLD OUT
2024年9月16日(月・祝) 東京・Zepp DiverCity(TOKYO) 　※SOLD OUT
2024年9月20日(金) 愛知・ダイアモンドホール　※SOLD OUT
2024年9月22日(日・祝) 大阪・Zepp Namba(OSAKA)　※SOLD OUT