外環道の「東名延伸」工事進んでるの? 世紀の大事業の「地下トンネル」が“果てしない大工事”である「納得の理由」とは
外環道のトンネル工事が「なかなか進んでいない」ように見えるワケ
首都圏近郊をぐるりとつなぐ高速道路「東京外かく環状道路(外環)」が全通に向け、西側の未開通部で工事中となっています。
完成すれば関越道から東名までが南北にむすばれ、都内の「縦移動」が飛躍的に便利になりますが、工事はどこまで進んでいるのでしょうか。
外環道は放射状の各高速道路をぐるりと接続する高速道路です。千葉県市川市にある、東関東道・京葉道路・首都高湾岸線の「高谷JCT」を起点として、反時計回りに常磐道、東北道、関越道と接続します。この道路のおかげで、都心への交通集中を避けて各方面へ移動することができるわけです。
【画像】えっ…!? これが「外環道 関越〜東名」工事の「最新の工事状況」です(30枚以上)
そんな外環道ですが、関越道の大泉JCTで途切れており、さらに南下して、中央道と東名に接続する延伸工事が進められています。
ここが開通すれば、静岡方面から来たクルマが埼玉・千葉方面へ行く場合、今までは環八・環七や首都高など都心部を経由する必要があったのが、環状道路で迂回することができるようになり、渋滞の緩和に期待がかかっています。
さて、そんな外環道の「関越〜東名」延伸ですが、工事の道のりは必ずしも順調とは言えない状況です。
ここは他の区間とは違い、シールドトンネルで「大深度地下」を進む区間です。用地取得が不要で、比較的スムーズに事業を進められるというメリットがあり、近年の大都市圏で見られる工法です。
ところが、シールドマシンによる掘削の最中、調布市内で地上が陥没する事案が発生。工事は停止し、原因究明や対策検討が進められることとなりました。
これにより、本線部を掘削するシールドマシン4基のうち、南から進む2基は今も停止中。大泉JCT方面から2基が南進している状況です。また合間に、各JCTの地上と地下をつなぐランプ部のトンネルの掘削も進められています。
何が一番時間かかりそう?
果たして外環道の東名延伸は、いつ実現するのでしょうか。国土交通省 東京外かく環状国道事務所はことし春の取材に対し、以下のように話しています。
「開通見通しについては、現時点では見通せる状況にございません。
工事のスピード感について一例を挙げると、大泉JCT側から掘削を進めている本線シールドの掘進速度は、北行車線における2024年1月の実績では1日あたり約5mとなっています。
もっとも、本線シールドマシン以外にも様々な場所で工事が同時進行で行われています。そのため、事業全体の工事のスピード感を一律にお示しすることは困難です」
なお、陥没が起きてしまった現場で掘削再開するためには、まずは現場周辺の「地盤改良」によって、再陥没が起きないよう地盤をしっかりとしなければなりません。
この地盤改良については、「高圧噴射攪拌工法」を採用し、地中深くへパイプを挿し込んで約40mの最深部から徐々にセメント類を混ぜて固化させていくことで、直径約4mの「改良体」とよばれるカチカチの基礎柱のようなものを、面的に何本もぎっしりと並べて形成していく方法になっています。
地盤改良が必要な範囲は、京王線のつつじが丘駅のすぐ南側で、横16m×縦220m。つまり改良体を横4列として、少しずつ縦方向に次の列を並べていく形になります。改良体の全本数は220本。改良マシンは最大4基を同時稼働。1本の改良体を完成させるのに、5日程度かかるとしています。
この「改良体」を地中に構築していく作業は、2023年8月に開始。2024年6月の時点で、220本のうち「概ね2割」が終わったといいます。
ちなみに、地盤改良をおこなう範囲では家屋類を撤去して更地にする必要がありますが、約30件のうち「17件」が解体完了したそうです。これに加え、作業ヤードの確保のため、作業範囲の一部周辺も別途更地にする必要があり、そこの家屋解体も進められているところです。
気になるのが「地盤改良を大々的に行ったら、地下水位に影響しないか」ということですが、6月の地元向け説明資料では「地下水は改良体を回り込んでいる」とし、同時に地下水の水質等のモニタリングも継続しています。
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このように、東名〜中央道側の工区は、まず地盤改良を終わらせないと、どうにもシールドマシンの再開ができない状況で、かなりの時間がかかってきそうです。
それまでには、「東名〜中央道の本線シールド」以外がおおかた片付いているという状況を目指して、ひとまずは着実に「全体の進捗」を進めるべく、各工区の各現場で、建設作業が前進中となっています。