2024年3月に金沢〜敦賀間が延伸開業した北陸新幹線。残る敦賀〜新大阪間はどのようなルートを辿ることになるのでしょうか。国土交通省鉄道局と鉄道・運輸機構(JRTT)が先日公表した詳細駅位置やルート案を確認してみましょう。

京都・小浜ルートの現在のイメージ(国交省鉄道局、鉄道・運輸機構「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)」)

上図は「小浜・京都ルート」の詳細なルートイメージです。北陸新幹線は敦賀を出発すると、まずは小浜市(東小浜)付近の新駅へ。そこから南下して京都駅、京田辺市(松井田辺)付近の新駅を経由したのち、西へカーブして新大阪駅へと向かいます。京都駅の南には車両基地を設置します。

敦賀〜新大阪間はほとんどがトンネル区間で、地上駅は小浜市(東小浜)付近駅のみ。京都市中心部では地下水へ影響を及ぼさないよう、水を通さない構造のシールドトンネルを採用する方針です。

京都駅付近のルートについては、それぞれ「東西案」「南北案」「桂川案」としてまとめられており、各案ごとに工期や概算事業費が提示されています。一つ一つ見ていきましょう。

東西案は現在の京都駅地下を東西に通るルート。駅は既設の地下構造物(地下鉄烏丸線)などを避けるため、地下深く(約50m)に設置することになります。八条通の長期にわたる交通規制も必要です。

総延長は約146kmと3案の中で最も長く、想定される工期(駅部建設期間)は28年程度と3案の中で最長。京都駅の在来線との乗り換えは約11分かかる見込みです。概算事業費はおおむね3.7兆円ですが、将来の物価上昇を見込んだ場合は5.3兆円ほどになります。(他2案は()内に物価上昇見込みの概算事業費を記載)

(国交省鉄道局、鉄道・運輸機構「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)」)

南北案は現在の京都駅地下を南北に走るルート。駅は京都駅南側への設置を想定しており、深さは地下約20mです。工事は東西案より容易ですが、駅部で用地交渉を行う必要があります。

総延長は約144kmで、想定される工期は20年程度。京都駅在来線との乗り換えは約13分かかる見込みです。概算事業費はおおむね3.9兆円(5.2兆円)。

(国交省鉄道局、鉄道・運輸機構「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)」)

桂川案は現在のJR桂川駅付近に新駅を設置するルートです。他の2案と比較すると、車両基地まで比較的まっすぐ通せるルートになります。

ただし既設の地下構造物を避ける必要があるため、東西案同様駅が深く(約50m)なり、在来線と近接するため施工管理の難易度も高くなります。桂川駅との乗り換えは約10分ですが、京都駅との乗り換えで計算すると約19分になります。総延長は3案で最も短い約139km。想定される工期は26年程度で、概算事業費はおおむね3.4兆円(4.8兆円)。

(国交省鉄道局、鉄道・運輸機構「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)」)

3案を工期で比較すると、東西案・桂川案は地下深くに駅を設けるために工期が長く、南北案は用地交渉手続きが鍵を握ります。最も安いのは桂川案ですが、京都駅から離れており乗り換えの利便性に疑問符がつきます。ただし阪急京都線の洛西口駅付近に設置されれば河原町方面や嵐山方面へアクセスしやすくなるというメリットもあり、評価の難しいところです。

(国交省鉄道局、鉄道・運輸機構「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)」)

工事実施計画の認可や事業の着手は、最短でも2026(令和8)年3月頃となる見込みです。しかしながら今回示された案はいずれも工期・事業費ともに2016(平成28)年度の試算を大きく上回っており、順調に着工できるとは限りません。

北陸新幹線全線開業は鉄道ファンならずとも期待のかかるビッグプロジェクトですが、早期実現のために乗り越えるべきハードルは多いのが現状です。特に事業費の高騰は問題で、「B/C」が1を下回り着工5条件を満たせなくなる可能性もあります。引き続き議論の行く末を見守りたいと思います。

記事:一橋正浩