「読書習慣が自然と身につく」本棚のつくり方
頭のよい子の本棚とは?(写真:PhotoAC)
親が子どもに本を読んでほしいと思って買い揃えた図鑑や歴史の漫画シリーズに、ほこりがかぶっていた、なんてことありませんか?
整然と並んでいて、大人目線で美しい本棚。これはよくある大人の勘違いです。では、頭のよい子の本棚にはどんな工夫があるのでしょう。教育専門家の石田勝紀氏の著書『集中力 やる気 学力がアップする 頭のよい子が育つ家のしかけ』より、一部抜粋、再構成してお届けします。
これからも紙の本は勉強の必需品
子どものために本棚を用意したほうがよいか、どんな本を揃えたほうがよいかということも、よく寄せられる相談のひとつです。
最近は、電子辞書も電子書籍もあり、スマートフォンやタブレットで情報を得ることができるようになってきたことも、本棚問題のお悩みの要因になっているかもしれません。
結論からいうと、勉強をするなら、ぜひ紙の本と本棚を用意してあげてください。
電子書籍が流通して何年も経ち、漫画や雑誌の需要は、電子書籍のほうが高くなったといわれています。ところが、それ以外の絵本や参考書などはいまだに紙の本の需要があります。
紙の本が3Dだとすると、電子書籍は2Dです。3Dのほうが、立体感でインパクトがあって、好まれやすいのでしょう。
もちろん、それでも、子どもの個性によって違いはあります。なかには2Dのほうがやる気の出る子もいるので、その子の好みを確認してください。
どんなことであっても、大人の思い込みで、「これがいいといわれているから、こうしなさい!」と押しつけないようにしたいものです。
■本棚は大人が整理整頓する
勉強用に本棚をつくるのであれば、図書館のような分類を目指すことが大切です。国語・算数・理科・社会と教科がぐちゃぐちゃになっていると、いざ本を読みたいときに、探すことが面倒になってしまいます。これも、勉強のやる気を下げてしまう原因になるのです。
おとうさんおかあさんが司書になったつもりで、子どもの本棚を整理してあげましょう。
【本棚を整理するときのポイント】
・同じ分類のものは、そばに並べる
・よく使う本は、取りやすい位置に置く
・漫画などは、あまり目につかず、取り出すのが少し面倒な奥のほうに置く
大人もキッチンの収納をするとき、使いやすいものをいつも手に取れるところに置き、めったに使わないものは少し取り出しにくいところに入れておくなどして、自然と整理整頓をしているはずです。
これと同じように、子どもの本棚も整理してみましょう。
■図鑑シリーズ、歴史シリーズを全巻揃える必要はない
本棚に置く本について補足しておくと、図鑑や歴史の漫画シリーズを揃える必要はありません。昆虫の図鑑を1冊買ったら、次は動物、植物、宇宙、美術……と同じ図鑑シリーズを買い揃えていきたくなってしまいますが、これはよくある大人の勘違いですので、注意してください。
本棚には「虫」や「宇宙」など特定のジャンルの本だけが何冊もある状態になるかもしれませんが、それでかまいません。好きなことをどんどん突き詰めていき、その周辺へと興味の幅を広げていく……これが、本当の学びにつながります。
とくに子どもがまだ小さいときほど、この学び方がおすすめです。
本棚に揃えるのは、興味のある本だけ
子どもの本を選ぶときのおすすめは、図書館を利用することです。まず図書館に行って、どんな本に興味があるのかを調べることから始めましょう。
興味をもったもののなかで、「ずっと家に置いておきたいと思ったものはどれ?」と聞いて、まずは1冊だけ購入してあげてください。気に入ったものであれば、子どもは本がボロボロになるまで読むでしょう。
また、本を読む楽しさがわかると、「次はこういう本がほしい」と本人から話をしてくるはずです。
もし何もいってこなければ、また図書館に行って、新しい本を選びましょう。本は、自宅で何度も読みたいお気に入りだけ購入すればよいのです。図書館は、さまざまなジャンルの本が無料で読めるので、どんどん利用しましょう。
(画像:『集中力 やる気 学力がアップする 頭のよい子が育つ家のしかけ』より)
■子ども用の本棚は図書館をイメージしよう
子ども用の本棚の購入を考えているご家庭は、図書館を参考にしてみてください。
不思議なことに、本を嫌いな子であっても、図書館に行くと本を手に取ります。
図書館は、それほど本を読むために完成された空間なのです。
子ども用の本棚をご家庭に用意する際は、図書館の児童書コーナーをお手本にするのがおすすめです。
どのようなタイプの本棚がよいか、棚の中の本の並び順はどうするのがよいかなど、参考にしてみるとよいでしょう。
【本を読みたくなる本棚のポイント】
・ 扉がない本棚にする
扉を開ける手間で、子どもは本を読むこと自体を「面倒だ」と思ってしまいます。
・ お気に入りの本は表紙を見せる
本はきれいに並べて、お気に入りのものを前にしたり、表紙が見えるように立てかけたりしましょう。そうすることで、子どもが手に取りやすくなります。
・ ジャンルごとに置く
子どもが小学校の高学年や中学生になったら、本はジャンルごとにまとめましょう。そうすることで必要な本を取り出しやすくなり、整理整頓もラクになります。
本棚の場所は子ども部屋? それともリビング?
本棚は子ども部屋とリビングのどちらに置いていますか?
結論からいうと、物理的な間取りの問題もあるので、どちらでもかまいません。
一般的には、スペースを確保しやすい子ども部屋に本棚を置くことが多いのではないでしょうか。
ただ、リビングに置くと、本が出しやすい分、子どもが本を読む頻度は上がります。もし、本が好きな子で、「おかあさん、この本を読んで」といつももってくるような場合には、本棚とは別に、リビングに本を置く専用スペースをつくってあげるのもおすすめです。
「これを読んでほしい」と本人がよくもってくる本や、興味のあるジャンルの本をすぐ取り出せる場所に置いておくと、読書習慣が身につきやすくなります。
また、本の量が増えてくると、リビングも子ども部屋も雑然としてしまうので、子どもと一緒に、定期的に置いておく本を見直しましょう。子どもの興味や関心のあるものを把握することができます。
(画像:『集中力 やる気 学力がアップする 頭のよい子が育つ家のしかけ』より)
【リビングに置く本】
・よく使う本
・お気に入りの本
・子どもが興味関心を示している分野の本など
興味のあることを追求することで、やる気が上がる
子どもの勉強には、「親が学ばせたいものではなく、子どもが学びたいもの知りたいものを学ばせる」ということが重要です。
たとえば、わたしの下の子は、幼稚園から小学校低学年くらいの頃は爬虫類が大好きでした。当時は、爬虫類関連の本が家の中にどんどん増えていき、10冊以上の爬虫類の図鑑がいまも置いてあります。
爬虫類の本が5冊を超えたときに、新しい本がほしいのか聞いたところ、「いままでの図鑑には書いてないのが出ている」といっていたので、どんどん購入していきました。このように、子どもが好きなことをどんどん学べる環境を整えてあげることが、「子ども視点」の教育です。
好きなものを思い切り学ばせてあげるスタイルのほうが、子どものやる気が出て伸びていきます。
(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)