堀江氏によれば、英語の「お勉強」と「学び」は決定的に違うという

なかなか英語が身につかない理由について、「前進を妨げているのは『能力』でも『経験』でも『リスク』でもない。そのように言い訳をつくり、いつまでも行動できない自分自身だ」と分析する堀江貴文氏。それでは、英語習得のために「自分自身」を変えるにはどうすればいいのでしょうか? 堀江氏が考える英語習得のための「学び」のプロセスを紹介します。

※本稿は、堀江氏の著書『いつまで英語から逃げてるの? 英語の多動力New Version: 君の未来を変える英語のはなし』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

語学習得のコツは「楽しく」「少しずつ」「永遠に」

僕も対談したことのある、お笑いタレントの厚切りジェイソンさん。日本の漢字や文化、ことわざなどを外国人視点で皮肉るネタは、あなたも見覚えがあるだろう。IT企業の役員でもある彼は、AI翻訳が発展したとしても、日本人は英語を身につけるべきだと主張する一人だ。

彼もアメリカにいながら日本語を勉強した。だから日本にいるから英語ができないと言い訳している人のことが理解できないと言う。

アメリカ人にとっての日本語と、日本人にとっての英語。そこには習得における負担の差がいくらかあるだろう。日本語には、漢字、平仮名、カタカナと、同じ意味でも表示の仕方が異なる層がある、世界でもまれな言語だ。ひょっとすると英語圏の外国人が日本語を学ぶほうが、日本人が英語を学ぶよりもよほど難しいかもしれない。でも、ジェイソンさんはそれをやり遂げ、今も学び続けている。

なぜなら、やらないことは、できるようにはならないからだ。

英語ができるようになりたいなら、英語をやるしかない。本を読むとき、ゲームをやるとき、映画を見るとき、友達と話すとき。できるだけ英語を使う環境を自分で用意する。ダイエットと同じなのだ。

痩せたければ、食べるのをやめて、運動するしかない。これほど分かりやすく、簡単で、成果の出る方法はない。つまり、英語を喋れるようになりたければ、英語で生活しろとジェイソンさんは言う。

ただ、ダイエットと同じく、語学力も2カ月後には前と同じレベルにすぐ戻る。だから、どうキープするかが大切なのだ。ジェイソンさんが言う唯一の語学習得のコツは、little by little、「楽しく」「少しずつ」「永遠にやる」こと。楽しくなければ続かない。

彼は、日本のお笑い番組を見ながら日本語を学んだ。でもそのとき、分からない日本語をいちいち辞書で調べるなんて面倒はやらなかったと言う。

「だって、それをやると、楽しくなくなっちゃうんだもん」と。

AI翻訳を英語を学ばなくていい「言い訳」にするな

英語ができたらいいのに、と言いながら勉強しない人、サボる人。そういう人に多いのは、英語を頑張る人に嫉妬して、自分が頑張らない言い訳を欲しがる。

最近ではAI翻訳の進化がその言い訳の1つになり始めた。

海外と接したければ、グローバルに活躍したければ、英語は絶対に必要。英語ができるとコネクションの数と情報量が何十倍にもなる。英語ができない人は、それができる人と競争していることを自覚しなければならない。土俵に上がる前から不利なのだ。

POINT:little by little。少しずつでいい。勉強を「楽しい」ものに変えて続ける

とは言え、自分で目標を決め、アクセルを踏むためには、「学び」が不可欠だ。セミナーやオンラインサロンで「学校なんか要らない」と学校を否定する僕が言うと、矛盾を感じるかもしれない。

でも、僕が言う「学び」とは、没頭のことだ。脇目も振らずに夢中になり、がむしゃらに取り組める体験の全てが「学び」だと僕は思っている。

「学び」と聞いたとき、多くの人は、いわゆる「お勉強」をイメージする。散々暗記させられた公式や年号の数々。教卓や黒板、教科書、ノートなどの小道具。つまり、学校教育に準じたイメージだ。

「お勉強」と「学び」の決定的な違い

こうした「お勉強」と「学び」とを、僕は明確に違うものとしてとらえている。下の表にその分類を示した。「お勉強」は、あくまで受動的な行為である。先生の話を聞いたり、テストを受けたり、ドリルを解いたり。企業の思惑通りに動く社員を養成する研修も同じようなものだ。要は、「与えられたものをこなす」作業である。


(出所:『いつまで英語から逃げてるの? 英語の多動力New Version: 君の未来を変える英語のはなし』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

いくら「お勉強」をしても、「自分で行き先を決める生き方」にはたどり着けない。「お勉強」で身につくのは、敷かれたレールに乗る習慣だけなのだ。でも、「学び」を楽しんでいる人は違う。

没頭している人にとっては、正解が見つからないことも、みずから動かなければ取り組むべき課題が見つからないことも、没頭する対象がある限り全ては「楽しい」ことなのだ。だから彼らは好んで「トライアル・アンド・エラー」を繰り返し、成長していく。(日本語では「トライ・アンド・エラー」という言い方が定着しているが、英語ではtrial and errorである)

没頭は人を決して立ち止まらせない。常に人を前へ前へと押し出し、新しい体験をつかませようとする。あらゆるイノベーションを生み出すのは、「お勉強」ではなく「学び」だ。夢中になっているからこそ、人は一日中それについて思考を巡らし、失敗を恐れずに試行錯誤を重ね、努力や苦労の過程さえ楽しむことができるのだ。

万有引力の法則を発見したニュートンも、現代物理学の父アインシュタインも、自分の抱いた疑問の検証に寝食を忘れるほど没頭し、そこでの発見を後世に残したからこそ、現代の学問の体系は成熟した。彼らは「お勉強」をしていたのではない。ただ目の前のことにのめりこんでいただけだ。

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズも同じだろう。心の赴くままに「学び」続け、道なき道を突き進んだ結果、偉業を成し遂げることができた。

この没頭する力こそが、人間の力を最大限に発揮する重要な要素なのだ。今、僕らが目にする英語の教科書やワークブックは、全て誰かの没頭の副産物にすぎない。それらを漫然となぞるお行儀のいい「お勉強」の中に、学びの本質は存在しない。

英語はコミュニケーションのツールだ。もしあなたが中学や高校での「お勉強」で英語の基礎を押さえているのなら、またそれを繰り返したところで没頭できやしない。まだ経験したことのない「英語の学び」をあなたは見つけ、それに没頭すべきなのだ。

POINT:「学び」とは没頭することである。

まずは1つのことにとことんハマれ

没頭、それは興味の赴くままに好きなことにハマることだ。英語であれば、例えば、発音にハマったり、文法にハマったりすることだ。

学説的には「バランスよく」学ぶことが良いとされている。でも、「バランスよく」なんて面白くないからハマれない。発音がやりたいのに、やりたくない英単語の勉強をするとなると、100%だった情熱が一気に50%くらいに激減するだろう。

それでは楽しくないし、興味が薄れて学ぶこと自体をやめてしまう。

英単語など気にせず、とことん発音だけにハマればいいのだ。そのほうがバランスよく勉強するより、はるかに英単語も身についていく。

発音を学ぶ過程で、さまざまな英語表現や英単語がセットで頭に入ってくる。発音を何時間もかけて勉強したけど、英語表現や英単語をまったく覚えていない、なんてことはありえないからだ。

ましてや、同じ時間でバランスよく学んだ人より、発音にフォーカスした人のほうが突き抜けた英語能力を身につけているにちがいない。

というのは、「君は英語の発音がうまいな」と誰かに言われるだけで、幸せホルモンとも呼ばれるドーパミンとセロトニンが分泌され、いい意味で調子に乗ることができる。調子に乗ると、さらにそれに磨きをかけたくなるのが人間だからだ。

そして発音を基点に、次は興味のあるテーマの英語表現や英単語などに触れていくようになる。

点と点をつなぎ合わせ「使える英語」という太い線に

Let’s take this offline.(この件は会議のあとで個別に話そうよ)

We’ll park that.(その件は次回に回そう)


日常で使いそうなフレーズでも、学校の教科書ではあまり目にしていない。こうした生きた英語フレーズを見かけたら、得意の発音で自慢げに使いまくればいい。

フレーズをたくさん覚えると英語の骨組みが次第に見えてくる。発音を軸に、文法も、フレーズも一気に習得しやすくなるのだ。

時間ばかり使ってどんな勉強をすればいいのか模索しているのなら、すぐにハマれるものを見つけるべきだ。

発音、フレーズ、単語……点と点をつなぎ合わせて「使える英語」という太い線にしていく。

ハマっているときは、その知識やスキルがいずれ何かの役に立つとかは考えなくていい。そもそも将来を見据えて事前に何かにハマるなんてことは難しい。

だから、今この瞬間にあなたが興味のあることにハマり、あとからその点をつなぎ合わせて線にしていくのだ。

POINT:何か1つに偏ったっていい。いつか点と点がつながり、太い線になる。

(堀江 貴文 : 実業家)