ドイツのウェンズバーグ社製のキャンピングカー「ケアコンパクト スイートMB640MEG」(筆者撮影)

キャンピングカー文化の本場である欧州のプレミアム・ブランド、ドイツの「ウェンズバーグ(WEINSBERG)」が日本初上陸し、最新モデル「ケアコンパクト スイートMB640MEG(正式名称Cara Compact Suite MB640MEG EDITION【PEPPER】)」がお披露目された。

ベースはベンツ商用バン「スプリンター」

国産キャンピングカー・メーカーのトイファクトリーが手がける輸入車ディーラー店「ユーロトイ相模原」に展示されたこのモデルは、メルセデス・ベンツの商用バン「スプリンター」をベースとしていることが大きな特徴だ。従来、メルセデス・ベンツの車両をベースとした欧州製キャンピングカーには、ドイツの「ハイマー(HYMER)」などのモデルが有名で、2000万円台や3000万円台の高級機種もある。

一方、ケアコンパクト スイートMB640MEGは、国産の高級キャンピングカー並みといえる1700万円台の価格帯。しかもシックな色使いも多い欧州製モデルにしては、内外装がとてもカラフルだ。ホワイトのボディには、オレンジなどのグラフィックを加味。また、内装も、明るい木目調の家具類やホワイトの壁などにより、アットホームな雰囲気を演出。比較的リーズナブルな価格とポップなイメージなどにより、主に若い世代のファミリー層をターゲットにするという。

【写真】あの「ベンツ」をベースにした輸入キャンピングカー「ケアコンパクト スイートMB640MEG」の内外装をチェックする(86枚)

ここでは、そんな日本市場初お目見えのケアコンパクト スイートMB640MEGについて、その商品性や魅力などを探ってみる。

ウェンズバーグとは


ウェンズバーグのロゴ(筆者撮影)

ウェンズバーグは、1969年に誕生したドイツ「クナウス(KNAUS)」グループ傘下のキャンピングカー・ブランドだ。クナウスは、1960年から操業を続ける老舗メーカーで、年間2万台以上ものキャンピングカーやトレーラーを製造する実績を持つ。現在、欧州の三大キャンピングカーグループのひとつに数えられるほど、現地ではメジャーなメーカーだ。中でも、ウェンズバーグは、ドイツが誇る革新性や高い品質に、現代的なデザインを組み合わせた新しい発想のキャンピングカーを作ることで知られる。今回、初お披露目されたケアコンパクト スイートMB640MEGも、そんな同ブランドの伝統を継承したモデルだといえる。

ちなみに、このモデルの輸入販売を手がけるのは、ハイエース・キャンパーのメーカーとして有名なトイファクトリー。同社が2023年より展開している輸入車キャンピングカーディーラー「ユーロトイ(EUTO-TOY)」で扱う新規機種だ。今回は、そのユーロトイの関東における拠点として、2024年4月にオープンした新店舗「ユーロトイ相模原」に展示してある車両を取材した。

ケアコンパクト スイートMB640MEGのベース車


ケアコンパクト スイートMB640MEGの外観(筆者撮影)

ケアコンパクト スイートMB640MEGは、前述のとおり、メルセデス・ベンツのスプリンターという商用バンをベースにした「キャブコン(キャブコンバージョン)」と呼ばれるモデルだ。運転席部分のみを残し、後ろの部分に居住スペースを架装したクルマのことで、キャンピングカーの中でも王道の車種として知られている。なお、本国では、ボディサイズや装備などが異なるケアコンパクト・シリーズがラインナップされており、当モデルはその最上級グレードとなる。

このモデルのボディサイズは、全長6980mm×全幅2300mm×最大高2840mm。エンジンには、125kW(170HP)を発揮する2.0L・ディーゼルターボを搭載し、9速AT(オートマチック・トランスミッション)をマッチング。駆動方式はFF(前輪駆動)で、乗車定員4名、就寝人数4名。8ナンバーのキャンピングカー登録車となる。


メルセデス・ベンツのエンブレム(筆者撮影)

外観は、フロントバンパーに鎮座するメルセデス・ベンツのエンブレム、いわゆる「ベンツ」マークが高級感を醸し出す。一方で、ボディのサイド部には、これも前述のとおり、ホワイトの車体色をベースに、オレンジのグラフィックなどを施すことで、ポップなイメージも加味している。このモデルが、先述のように、主に若いファミリー層をターゲットとしていることがわかる演出だ。

ケアコンパクト スイートMB640MEGの内装


ケアコンパクト スイートMB640MEGのインテリア(筆者撮影)

運転席の後方にあるエントランスドアを開くと、明るい雰囲気の室内が広がる。中央部には、テーブルと2人がけのソファがあり、運転席と助手席を後方へ180度回転させれば、ゆったりと会話などを楽しめるダイネット(リビング)となる。また、エントランスのすぐ後方にはキッチン、通路を挟んで反対側にはトイレやシャワーを使えるマルチルームを備える。

車体後方にはベッドルームがあり、長さ2000mm×幅820mmと長さ1950mm×幅820mmのツインベッドを装備。左右のベッドをつなげれば、幅2100mmのダブルベッドにすることも可能で、大人2名がゆっくりと横になれる。また、就寝スペースには、ダイネットの天井へ収納可能なプルダウン式ベッドも装備。長さ1840mm×幅1270mmのベッドは、手動で昇降するタイプだが、軽量で操作も簡単。重いモノを持つのが苦手な女性などでも、手軽にベッド展開や天井への収納を可能とするという。


車体後方のベッドルーム(筆者撮影)

さらにシートの素材には、汚れに強く、掃除も簡単なファブリックを使用。小さな子どものいるファミリー層でも、気兼ねなく使うことが可能だ。また、停車時にエンジンを始動しなくても家電製品などを使えるサブバッテリーも装備。標準装備のバッテリーは、鉛タイプの100Ah×1個だが、オプションで150Ah×2個のリチウムイオンバッテリーも用意。キッチン横にある大容量142Lの冷蔵庫など、さまざまな家電製品を使うことができる。

ほかにも、このモデルには、車体右側の中央部に95Lもの清水タンクを備える。ハイエースをベースにした一般的なキャンピングカーの場合、清水タンクは50L程度。より大容量のタンクを持つことで、旅先でも調理やシャワーなどで、心置きなく水を使うことができるのも魅力だという。

2000万円を切る価格設定


ケアコンパクト スイートMB640MEGの運転席まわり(筆者撮影)

なお、このモデルの車両本体価格(税込み)は、展示車両の場合で1730万円(諸費用別)。今回取材時には、他メーカーの欧州製キャンピングカーも展示されていたが、例えば、イタリアのライカ(LAIKA)製「クレオL5009(KREOS L5009)」が展示車の車両本体価格(税込み)で3454万円。フィアットの商用バン「デュカト」をベースとし、全長7890mmとより巨大なクラスAモーターホームと呼ばれるモデルだ。ホワイトレザーのシートなどを使った内装はかなり豪華で、プルダウン式ベッドが電動で昇降できるなど、より使い勝手のいい装備も持つ(乗車定員4名、就寝人数4〜5名)。


クレオL5009の外観(筆者撮影)


クレオL5009の内装(筆者撮影)


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ケアコンパクト スイートMB640MEGは、このライカのような、よりラグジュアリーな最上級モデルと比べると、装備などはやや劣る感もある。だが、メルセデス・ベンツ車がベースのキャンピングカーは、滑らかな走りなどに定評がある。それに、なんといっても、あの「ベンツ」マークが付いているのはステータスだ。それでいて、2000万円を切る価格。もちろん、ハイエースなどをベースとした国産モデルなどと比べると、それなりに価格が高いことは確かなので、販売台数は限られるだろう。

だが、キャンピングカー市場は、需要の伸びにより、多様な嗜好のユーザーが参入している。そのため、例えば、ハイエース系モデルからステップアップする最初の車種としてなど、本格的キャンピングカーのエントリーモデルとして一定のニーズはありそうだ。

依然として活況なキャンピングカー市場。その中で、とくに海外の高級ブランド製モデルは多くのユーザーにとって憧れであるだけに、新規参入の当モデルが、市場にどのようなインパクトを与えるのか今後注目だ。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)