アドビアナリティクス(Adobe Analytics)によると、プライムデー(Prime Day)として知られ、巨額の売上を生み出す48時間にわたるAmazonのイベントにおいて、米国における買い物客は140億ドル(約2兆1800億円)を超える金額をオンラインで消費した。これは前年比で11%の増加だ。

Amazonはすでに、これを「過去最大のプライムデーショッピングイベント」と形容しており、このほど発行されたプレスリリースによると、顧客が全世界で3億7500万を超える品物を買い求めた昨年よりもさらに多くの品物を、買い物客はこの2日間で買い求めたという。プライムデーの前3週間にAmazonプライム(Amazon Prime)に登録した顧客の数も過去最高だったとAmazonは述べているが、正確な数字は明かしていない。同社は通常、プライムデーイベントの売上高を公開しない。

これまでのところ、インフレを気にする消費者がさまざまな商品カテゴリーにわたって安価な商品を買い求めるためにeコマースプラットフォームを利用する傾向が強まってきたことから、ことしはオンラインショッピングが堅調な年だった。Adobeによると、ことしの最初の6カ月に、買い物客はすでにオンラインで5030億ドル(約78兆4000億円)近くをオンラインで消費しており、これは2023年の同期間より7%増加している。同社は、消費者が今後3カ月にさらに2290億ドル(約35兆7000億円)を消費すると予測しており、これは昨年より7%を超える増加だ。

より意識的なショッピングへの移行



データによると、プライムデーの売上の急増には割引が重要な役割を果たしたことが示唆される。セールスフォース(Salesforce)がこのショッピングイベントの2日目において、最初の12時間に15億人の買い物客の行動を分析したデータからは、米国ではプロモーション活動が昨年より14%増加したことがわかった。それでも、米モダンリテールと対話したいくつかのブランドは、「プライムデーの成功において高率の割引はそれほど重要ではなく、Amazon限定商品、集中的な広告、TikTokでバイラル化したことなど、ほかのさまざまな要因のほうが大きかった」と述べている。

「電子機器、アパレル、家具のカテゴリーはeコマースへの支出の半分近くを占めているが、2024年の前半に1桁前半の成長しか見せなかった」と、Adobeデジタルインサイト(Adobe Digital Insights)のリードアナリストを務めるビベック・パーンディヤ氏は述べる。「プライムデーがこれらの主要なカテゴリー間にわたる触媒だったことが明らかになった。消費者が購入ボタンを押し、自宅の製品をアップグレードしようと思うほど、大幅な割引が行われた」。

家庭の必需品、家庭用品、アパレル、靴といった少額な購入は、ことしの成長の強力な要因だった。調査会社のヌメレーター(Numerator)は、約3万5000軒の家庭による9万3000件を超えるAmazonの注文から集められたデータから、「木曜日の東部夏時間午前9時の時点で、プライムデーの平均注文金額は57ドル97セント(約9000円)だった」と述べている。プライムデーの品物の3分の2近くは20ドル(約3120円)未満で販売され、4%が100ドル(約1万5600円)を超える価格だった。

「ことしのプライムデーは、小額の嗜好品や日常的な品物が中心だった」と、ヌメレーターのアナリストであるアマンダ・シェーンバウアー氏は語る。「過去数年間と比べて、買い物客は高額の品物を購入しなくなってきており、セールの期間内にいくつもの注文を行う参加者も減少している。より意識的なショッピングへの移行と、散財を避けて貯金することを好む傾向を示している」。

買い物客がスマートフォンで商品を購入する傾向はますます強まっている。コンピュータでの購入と比べて、モバイルデバイスが占める割合は昨年より19%近く増加し、半数近くになったと、Adobeは述べている。また、「後払い決算(BNPL)」サービスを使用する顧客の割合も増えつつある。これは、インフレは収まりつつあるものの、消費者の予算は依然として厳しいことをうかがわせる。7月16日だけでもオンラインでの注文の8%近くがBNPLの注文で、収益としては5億4000万ドル(約842億円)と、昨年より実に17%も増加した。

調査会社のイーマーケター(eMarketer)は、米国の買い物客が2日間のプライムデーにAmazonで80億ドル(約1兆2500億円)を消費し、米国全体のeコマース売上を6%近く押し上げると予測している。

家電から消費財(CPG)へ



初期の数字を見ると、Amazonによる今回の夏季の特売イベントが昨年同時期と比べて一部のブランドで売上の増加を促進したことが示唆されている。これは、買い物客が家庭用品や必需品にかかるお金を節約し、同時に新学期のため準備しようと考えたためだと推定される。

ブランコやおむつ替えシートなどのベビー用品を販売しているジュールベビー(Jool Baby)のCEOを務めるジューダ・バーグマン氏は、「ことしのプライムデーの最初の日に、売上が昨年と比べて約20%も増加した」と述べる。「買い物客はこのセールのイベントを利用して、ベビー用品などの必需品を含む標準的な買い物に費やすお金を節約している」と、同氏は言う。

プライムデーは以前から電子機器が飛ぶように売れてきたが、ことしもっとも売れた商品のいくつかは消費財(CPG)だった。

セールの恩恵を受けたブランドのひとつがコラーゲンブランドのオビ(Obvi)で、「Amazonプライムデーの1日目である7月16日には昨年同時期よりも売上が30%も増加した」と、共同創設者でCEOを務めるロナック・シャー氏は語る。Amazonマーケットプレイスでの同氏の商品に対するトラフィックは、昨年のプライムデーより約12%増加したという。

プライムデーにおけるオビの割引は昨年とほぼ同じだったが、「この2日間に同社は広告への投資を倍加し、ブランドの可視性と売上を促進した」とシャー氏は語る。たとえば、昨年Googleやメタ(Meta)などのチャネルにかけた広告費は1日あたり2万ドル(約312万円)だったが、ことしは1日あたり3万ドル(約468万円)に増額したという。

「Amazonは、自社の望む活動の多くに関与した商品に報いるのだと思う。そして、当社はまさにそのような活動を行っている。常に『Amazonのアフィリエイトリンクを使わないか?』や『Amazonのアフィリエイトプログラムを使わないか?』と言われる。Amazonは、ほかの場所からトラフィックをAmazonに呼び寄せてほしいと考えている」と、シャー氏は述べている。また、同ブランドがAmazonのために製造した独占商品も売上が増加した理由だと、シャー氏は述べる。たとえば、同ブランドが提供している綿あめや、コーヒーを混ぜたコラーゲン商品などのいくつかのフレーバーはAmazonでしか売られていない。

プライムデーで勝ち切る戦略



ユニリーバ(Unilever)のリキッドI.V.(Liquid I.V.)は、電解質パウダーのドリンクミックスを販売しているが、ことしのプライムデーは昨年と比べて売上が13倍に増加したという。また、プライムデーへの前振りに、はじめてのAmazon独占の商品として、もっともよく売れているフレーバーを詰め合わせたパックを発売した。

AmazonのマーケットプレイスにおいてCPGは競争が激しくなりつつあるカテゴリーで、このカテゴリーにおいてCPGブランドである同社が目立つため役立ったのは、「この独自の戦略だった」と、同ブランドのeコマースおよびメディア担当バイスプレジデントを務めるアーロン・ジョーンズ氏は述べている。

ことしはリキッドI.V.にとって、ブランドへの認知の拡大という点でも重要な年だった。同ブランドは5月に、ポプシクルファイアクラッカー(Popsicle Firecracker)というシリーズがTikTokでバイラル化したことで、さまざまな小売業者から4万3000件の注文が殺到した。その大部分は新規顧客からのものだったという。実際のところ、リキッドI.V.は昨年のプライムデーの時点ですでにベストセラー商品のひとつだったが、「TikTok売れは、ことしのプライムデーを前に消費者が真っ先に同ブランドを思い浮かべるようにするため役立った」と、ジョーンズ氏は述べている。

全体として、このような活動によりリキッドI.V.はプライムデーに最高の業績を収めた。ヌメレーターが木曜日の東部夏時間午前9時に公表したデータによれば、リキッドI.V.のパックはプライムデーにユニット数で3番目に売れた品物となった。

[原文:Amazon Briefing: Online sales surge to $14B during record-breaking Prime Day]

著者:Allison Smith(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:島田涼平)