2023年4月に再結成を宣言し、2025年の日本武道館ワンマンをもって解散することが決定しているWaiveが、新曲「火花」を6月27日に配信リリースした。公に新曲をリリースするのは彼らにとって19年ぶりとなる。

◆Waive 画像

新曲リリース直後の6月29日にはLM.C、翌30日はメリーを対バン相手に迎えたツーマン2DAYSイベント<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート>を開催した。同対バン企画を終えたばかりの田澤孝介(Vo)と杉本善徳(G, Vo)に、Waiveの現在地を語ってもらった。


▲新曲「火花」

   ◆   ◆   ◆

■また終わりに向かって行くタイミングで
■一緒にステージに立ってくれることへの喜び


──浅草花劇場2DAYS公演<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート>を終えて、手応えはいかがですか?

田澤:ガッツリとしたツーマンの対バンは久しぶりで。昔から知っている相手というところもあり、もちろん、燃えたぎるもの、バチバチとした想いも生まれたし。でも、2バンドとも僕らをすごく応援してくれているのが伝わってきたので、それがものすごくうれしかったのと。基本的に人って、自分が思っていることは分かるけど、人にどう思われているかは、直接訊くか予想するかしかなくて、ハッキリとは分からずに生きてるじゃないですか。でも2バンドが「Waiveが解散に向かっているんだよ」という旨を、あの日、自分たちのファンの人らに向けて言ってくれていて。 だから、違う角度から“そうか、俺ら解散すんねや”みたいな、自覚とは別の角度から“終わりがあるものなんだよ”と改めて実感させてもらえて。より本気になれたし、自分らが最後に向かっているんだな、と実感できた時間だったな、と今は思っています。

──メリーのガラさんは、「やめさせないぞ」という旨のことをおっしゃっていましたね。

田澤:そんなこと言うてたね。うれしい話ですよ、本当に。知らない人たちとのツーマンでは絶対にないストーリーがたくさんあって、“うれしい、恥ずかしい”、そんな1日でした。

──杉本さんはどうでした?

杉本:フラットというか、思い入れを持って接し過ぎず。それは対バン相手にかかわらずツーマンというイベントに対してなんですけど、意気込まず、あくまでも淡々と、“目的に対してやっていくべきことだけをやろう”と少し前に決めてしまったので、あまり何も考えずにやったんです。でも、実際に顔を突き合わせてみるといろいろなことがあったし、終わってみると当然、思うことも勝手に出てきてしまうので。その部分で言うと、今、田澤くんが言ったのに近いようなことを僕も感じている。もしも我々が解散した2005年、先日のツーマンみたいなものが行われていたとしても、「解散に向かっていくWaiveを一緒に応援しようね」みたいなことは起きなかったと思うんです。


──当時と何が違うんでしょうね?

杉本:自分らのスタンスとしても、そういうことをしてもらえるような雰囲気を作れなかっただろうし、“触れたらあかんのとちゃう?”みたいな空気だったと思う。それを除いても、やっぱり若い頃はそういうことができなくて。例えば、人が武道館ワンマンをやることに対して「おめでとう」と口では言っていたとしても、どこかで嫉妬していたし、他人を祝うことはなかなか簡単なことじゃなかったと思う。でも歳を取っていく中で、他人の頑張りが自分の勇気になっていくことが増えているのかなと感じたところがあって。

──「他人の頑張りが自分の勇気になっていく」、胸打たれる言葉です。

杉本:僕は普段、そんなにステージに立たなくなったし、Waive1本に完全に絞ってやっているから、バンドを続けている人たちの凄みに押されたというか。押すといってもプレッシャーではなくて、“やれよ”と背中を押してもらう感じのね。勝手に自分がそう思っているだけの部分もあると思うんですけど、でも“勝手にそう思ってしまおう”という気持ちにはなれた。歳を取ってやっている意味はあるのかもな、という気はしましたね。

──2000年代初頭のシーンの空気感を共有し、それぞれに荒波を乗り越えてきた同志、という感覚もあったのでしょうか?

杉本:僕はメンバーに対しても同じことを思ってるんですけど、人と人だから、合う合わないはそれぞれ絶対にあると思うんです。スタッフとかも含めて全員にね。そのうえで、たとえ今日出会ってめちゃくちゃ気の合う仲間が突然出来たとて、“あの時のアレ”みたいな話はその時に居た人としかできない、というのがあるので。もちろん、新しい出会いも大事です。これはファンについても同じことで、Waiveのことをいつから知ってようが、言葉は悪いけど、僕はどうでもいい。知ってもらえただけでうれしいから。だけどメンバーとかスタッフ、同じ時代にバンドをやってきたバンドマンは、1年ずれただけで全然対バンしていなかったり。同じ事務所に所属していても名前も電話番号も知らなかったり。そんなもんだと思うから、かなり奇跡の連続で会っている人たちなんだな、とは思うんです。だから、5年後、10年後に「我々が20代の時、こうだったよね」という話を共有できるのは、気の合わないコイツしかいないのか、みたいな気持ちもあったりするんです。なんていう言葉が適切なのか分からないですけど、“同じシーンで同じ時代に偶然生きていたからこそ、これがあるんだな”とはかなり思いましたね。

──2000年代初頭、WaiveもPIERROTも所属していた音楽事務所主催イベント<SWEET TRANCE>でのAiji(※当時PIERROT)さんとの共演エピソードなど、MCでは懐かしい話も出ていましたよね。

田澤:初日のリハではAijiさんとずっとお話させてもらっていて。実は、2001年の<SWEET TRANCE>が終わった後、いろいろとアドバイスをいただいたんです。そこからもう20何年も経って、「まだ演ってますね、僕ら」みたいな。当時しょっちゅう飲みに行ったり、日常を共有したりするような仲の良さだったわけではないんですけど、「あの頃の…」というだけで話ができてしまう共通項がある。それはメリーも同じですけどね。一回解散をして、解散中と謳って何度も再演を繰り返してきたWaiveが、「また終わりに向かって行くよ」というタイミングに、世代感の共有ができる人たちが応援のスタンスで、またこうやって一緒にステージに立ってくれる、ということの喜びがありました。これは善徳くんもMCで言ってたけど、向こうはずっとバンドを続けていたから、そこにリスペクトもめちゃめちゃ感じるし。


──そもそもLM.Cとメリーが対バン相手に決まったのは、どういう経緯で?

杉本:メンバーとスタッフで、「ブレインストーミング的に対バン相手の案を挙げていこうよ」という中で、「まずは2005年の最初の解散以前から付き合いのあった人がいるバンドに焦点を当てよう」となり、いろいろな方々の名前が出て決まっていった感じです。

──LM.Cではmayaさんがエールを送ってらっしゃいましたし、メリーは「武道館の日程が発表されたら、その日にメリーのライブを入れない」とガラさんがおっしゃいました。一緒に頑張っていこう、盛り立てていこう、という想いを感じました。

田澤:ほんまに予想してなかったスタンスで来られたので、うれしかったです。お互い長く続けてるからこそ分かるというか、“武道館公演をもって解散という決断”の内訳とリスクと、いろいろ見えるんでしょうね。“コイツら、とんでもないことを決めたね”と。そこがイメージできるから、「みんなで応援しようよ」って、嘘じゃなく本音で言ってくれてるなと感じました。終演後、善徳くんが、「対バンやし、“勝ったろうや”とか“お客さんを獲ったろうや”とかじゃなくて、共有できるだけで、もしかしたらすごく意味があることなのかも」と言っていて。確かに、対バンで僕らの存在を知ったとか、僕らが武道館に向けて、解散に向けて今やってるということがまず知れ渡るとか。「0が1になる、そのことのほうがめちゃくちゃ大きな意味があるんじゃない?」って。“ほんまにそうやわ”と思ったし、「だからたくさん対バンをやりたいね」という話になったんです。

──杉本さんとそう言い合ったんですね。

杉本:そうですね。ただ、そのテーマには難しさもあるんですよね。“同じ時代を生きた人たち”にこだわりたいところもあれば、こだわりたくないところもあって。極論を言うと、僕らのことを知らなかった若い世代や、逆に年上のおじいちゃんやおばあちゃんに来てもらうのでもいいんですよ。来るものは拒まずというのは実態としてはあるから。だから、“同じ時代に生きた人だけが仲間だ。分かり合えるんだ”ということに固執したくはない。それは揺るがない事実の1つで。僕はMCでよく「Waiveのファンには若い奴なんていない」ってイジッてるけど、実際はそうじゃないこともわかっているし、何かアクションを起こせば、それが多かれ少なかれに伝わっていく事実も知っているから。

──Waiveに辿り着く入口は、いろいろとあるでしょうからね。

杉本:どこで知ったのか、何の活動で引っ掛かってくれたのか、詳細に分からなくても、もちろんどれもありがたいし、知ってくれたという事実が全てだと思ってる。とはいえ、自分らが長く続けてきた意味は自分ら自身が知りたいから、こうやっていろいろな経験の中で振り返ることや、答えがフィードバックされることで、自分を知ってそれを噛み締めたい。まぁ、どちらもできないとダメですからね。ただ、この2DAYSに関しては、どうしても“同じ時代に生きた人”という言葉が出ちゃうな、というのはありますね。

──Waiveの魅力を更に広く伝えていくために、まずは近しい応援団を熱く強固なものにする、良い場だった気がします。

杉本:Waiveって、2005年の最初の解散までの活動スタンスがバンド名そのままに“放棄する”…どちらかと言うと“拒絶する”に近いかもしれないけど、シーンに対する反抗がすごくあったから。例えば、ヴィジュアル系という言葉でまとめられたくないとか。具体的には当時の雑誌だと『SHOXX』や『Vicious』には活動途中から載らないスタンスをとっていたり。あの時はそれで間違っていなかったって、今、胸を張って言える。だけど、生きてきた中での経験値として、「角が取れてしまった」と言われる部分もあるかもしれない。けれどもそれは、器が大きくなっていった部分なのかもしれないし、四角の外側が足されたのかもしれない。そういう感覚で自分たちが変わっていってるのは確実だから。

──成熟によって許容量が増えて、懐が深くなったんですよね。

杉本:対バンで“獲り合う”みたいな気持ちもゼロじゃないけど、それはシーンが衰退しているからかもしれないし、世代的にどんどんみんながやめていってるからかもしれないし、理由はもう正直分からなくて、全部な気もする。組織的に応援してもらったり、完全に自分ら側にひっくり返らなかったとしても、“なんとなくWaiveのことも気にしておいて”みたいなことをやらないとダメだ、というところに舵を切っていると思います。そこはやっぱり、新曲のリリースがあったからだと思うな。明確に、 急に意識が変わったと感じる。

◆インタビュー【2】へ


■自分が唯一できるのは
■新曲を書くことなんじゃないかな


──新曲「火花」リリースは、それほど大きいものでしたか。

杉本:リリースから、たかが数日しか経っていないし、配信だけなので作品を手に取ってくれている人がどんな表情をしているかを見たわけでもないんだけど。今の時代はフィードバックがあるので、待ってくれていた感じが伝わってきたんです。それはファンだけじゃなく、同業者の人たちが待ってくれていた感じもあります。“やっとちゃんとやるの?”みたいな。それを受けて、“見てくれているんだな”と気付いたというのはありますね。

──実際、うれしかったですよ。新曲リリースは、バンドが生きている証ですので。曲づくりに対して今は意欲的なんですよね?

杉本:つくりたいか、つくりたくないかで言えば、しんどいので曲はつくりたくないんですけどね。でも、目的のためにそれが必要だから、“やらなければ”というところが正直強い。“曲を書きたい”という純粋な気持ちでつくっているだけだったら、たぶん発表してないので、“何かフィードバックを得たかった” “何らかのゲインのために書いてた”というのは昔も今も変わらないです。ただ、“書かないと!”という想いは強くなったし、もっと言うと“自分が唯一できるのは、書くことなんじゃないのかな”というところにはきていて。

──なるほど。

杉本:武道館までのターンの中で、“あんなこともしなければ、こんなこともしなければ”といろいろ考えていたけど、所詮自分がやることはしょうもないレベルで、“それで何か?”ということくらいしか起きないんじゃないのかな、という気がするから。曲を書くのも基本的にはそうで、それで変わるかどうか分からないんですけどね。でも自分のできることの中で、確変を起こす可能性が唯一あるのは、作曲とか作詞かなと。曲づくりしか、もしかしたら出来ないのかも、というところにはきていますね、僕は。

──でも、それこそ正攻法であり、ロックバンドとしての核、大切な魂の部分ですよね。

杉本:そうなのかもしれない。正直、分からないですよね。我々はステージにも立つから、“演奏、歌唱に力を入れようよ”とか“美を意識しようよ”とか、そういうことに考えもいったし、もうとにかくいろいろなことを考えたんです。だけど、“もういいかな。それは俺のやることじゃないのかも”とはなってきていますね。


──新曲「火花」はロックバンドならではの熱量が伝わってくる曲で。2023年4月、再結成と2025年の解散を同時に発表した動画で、サビだけが先行して流れていました。あの後、どのように完成させたのですか?

杉本:かなり急につくった曲ではあったんですけど、もちろんデモをつくる時に何パターンか考えて、録っている時にメロディーが変わった部分も若干だけどあります。「火花」に関しては、“これを書かないと始まらないかも”という歌詞がありました。キャッチコピーを付けないといけなくて。つまり、今回は“燃やし尽くす”というテーマに行き、“その“燃やし尽くす”って何なのか?”をちゃんと伝えるツールが先に必要で。そのツールとして最も適しているものは、やっぱり僕らにとっては音楽だというところにいき…という逆算でした。“燃やし尽くす”というテーマを熱いバラードで表現することもできただろうけど、“ここからだ”みたいな、ある程度勢いみたいなものを見せないと、ここまでと何が違うのか分かりにくいんじゃないのかなというのもあって。

──勢いと疾走感は、歌にも演奏にも漲っています。

杉本:こういう曲調にする、という方向性だけが再結成と解散発表の時にはあって。肉付けしていく中で、ライブで先にやったということもあるので、録るにあたって、例えばテンポを速くするとか遅くするとか、選択肢はいろいろあったんです。だけど、結構スムーズに「ライブでやっているもののままでいいんじゃね?」とはなりました。「シンセ入れますか?」という相談を僕からみんなにしたけど、「入れてもいいし、入れなくてもいい」みたいなところにいきつつ、「ガッツリ入れる曲じゃないよね」という共通認識だけはあって。発表から1年経ってボヤけているだけで、改めて考えると“ここからなんだな”と思うから、「バンド演奏だけでいこう」ということになりました。結構いろいろと考えたけど、発表の時に考えたことに戻っただけ、という感じですね。

──田澤さんは、この曲が音源として完成した今、どう感じていますか?

田澤:歌録りは、実は結構難しかったんです。自分としては珍しく、あまりコンディションが良くなくて。

──音源を聴いても、不調は全く感じられませんけどね。いつ頃録られたのですか?

杉本:ドラムを録ったのが今年2月とかだから、歌は春ぐらい?

田澤:うん、春ですね。「歌えねえ」みたいな。でも善徳くんが「俺はそこまで気にならん。むしろその必死なのがいい」と言ってくれて。なんとか上手く形になって。正直、自分の中でまだ終わってないというか。記録には残ったけどまだ途中なイメージで。これからまたずっと歌っていく中で、もっと変化していくんやろうな、と思ってます。


──田澤さんとしては、まだ伸びしろがあると?

田澤:分からないです。伸びるのかな? 逆にいいところが消える可能性もあるじゃないですか。録っていく中で「ここはこういうふうに聴かせたいから、こういうふうに歌ってみてくれ」という要の部分はあるので、そこは崩さずに。そこがブレると…これは奢った言い方になるんですけど、僕は何でもそれなりにできちゃうので、小手先になりがちなんですよ。でも善徳くんが「この枠から出るなよ」みたいな、指標となる部分をしっかり捕まえてくれていたので。

──杉本さんは、けっこう細かくディレクションされたんですか?

杉本:細かいというほどではないですけどね。近年のWaiveの中では確かに一番こだわったかもしれない。どんどん歌っていく中で、当たり前だけど体が疲れていって、でも逆に喉が開いていくじゃないですか。田澤くんが言っていた通りで、テイクを重ねると、良くなる部分と悪くなる部分が出てくる。例えば「2テイク目のほうが下手だけど、勢いはあるかな」とか、いろいろなパターンがあるので、僕は大体3本ずつ録るんですけど、この曲は4本録って、最後に1曲まるっと“途中で何があったとしても止めずに歌ってもらう”5本目を一応録っておいて。録っている時のディレクションは、他の曲よりはこだわったけど、そんなには僕、細かく言わないんです。

──その場で「もっとこう歌って!」と逐一指示出しするわけではないんですね。

杉本:“その場で言われたことを解釈して歌おう”っていう頭になっていったら、レコーディングまでに決めてきたことがブレてしまう可能性があるので。特にこの曲は既にライブでやっていたから、レコーディングで違った指示を出すと、「え? そっちやったん?」という迷いが生じるだろうから、言うことは「それで合ってる」だけでいい気がしていました。もし相当違っていたら、ライブの時点で「違ってるから、こう歌ってほしいねん」という話が出ていたはずなので。だから、よいしょするわけじゃないけど「間違ってはないね」「悩んでるんやったら、悩め」のスタンスで僕は録るし、基本誰を録っても、歌ってもらったり演奏してもらった素材の中の、どれを選ぶかが僕のディレクションで一番大事なところなんです。

──録った後の作業が杉本さんにとって肝なんですね。

杉本:だから、録っている時のディレクションは本当に、“訊かれたことにどう答えるか”であって、あまりそこで要求するのは違うかなと。自分自身も歌を歌うようになったから、というのもあるし、楽器だったとしてもそう。フレーズが間違っていれば指摘しますけど、ニュアンスみたいなことを言われたって、「なんで今言うねん」となるだろうから。そこを変えると、何のために本人が考えてきたのかってなるし、熟練度の高いミュージシャンなので、全員に対して信じたいところでもある。そうやって勢い的に録る分というのもあって、例えば歌でいうと一文字ずつや息ごとに整理して完成形にしています。

──ものすごく細かいんですね。

杉本:自分しかやらないディレクションが、そこにあるはずだと思っているから、もう“そのやり方で”と自分で決めてしまっているので。それをやっていく時に、リズムや息遣い、テンション感、ピッチ感みたいなものに対して、“自分の中で一番求めているもの”だったり、“想定外だけどこういう聴こえ方するんだったらこっちがいいな”だったり、そういうものをどう選ぶか。それが自分の仕事だと思っているから。昔のWaiveはレコーディングでテイク数をひたすら重ねて、“もう分からん”って歌になってしまっていたと思うんです。今振り返っても、“あの辺でOKにしときゃよかったな”と思ってしまうようなレコーディングをしていた。それが何の意味もないと今は思っているから。もうそんな修行のようなことをやる時期じゃないんです、全員が。まぁ、貮方(孝司/G)だけは経験値が違う(※現在、音楽活動中心ではない生活を送っている)ので、知らんけど(笑)。でも、やっぱり全員を信じてるな。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る


■“燃やし尽くす”というのは
■Road to 武道館ってことではない


──それはバンドとして素敵なことですね。田澤さんは今回のレコーディングで、杉本さんのそういった変化を感じましたか?

田澤:以前とは全然違いますね。それはきっと、Waive以外のお仕事をするようになったことで積み上げてきたものだと思うんです。僕は以前、指示してくれればくれるほど、そこに近付きますよみたいなスタンスではやっていたんですけど、今回は伸び伸び歌って。「もし違ってたら言ってね」という約束というか関係がしっかりできてたから、スムーズでした。

──田澤さんがオールマイティだからこそ、果てしなさがありますもんね。

田澤:体力が無尽蔵にあるから、極論を言えばずっと歌えるんです。だけど、それはフィジカルの部分の話であって、メンタル的なものは目に見えづらいし、疲労を感じることがなかなかできない。だから、迷いが生じてしまう手前でOKを出すことって、歌だけじゃなく全パートにとってすごく大事だと思うんです。迷いはどうしても邪念を生んでしまうので。それがテイクに表れるかと言うと、たぶんデータを持って帰って聴いても分からないし、聴く人にはもっと分からないことなんだけど。でも、作品をつくった後にも、プレイヤーであったり作家であったりがその曲を好きでいられるかというところには、大きく影響する気がしていて。

杉本:レコーディングを思い出して「あれ、辛かったわ」と言い続ける曲って、やっぱり好きじゃないんですよ。やりたくなくなっていくので、ライブのセットリストからも外れる。

田澤:そうなんですよね。だから、そこはバランスを取ってもらいました。“こう歌いたい”と思っていたことがむちゃくちゃ細かい…たぶん俺自身にしか分からないかもしれないレベルで、やれてない感はあったんです。だから不本意なわけですよ、歌った直後は。“いや、俺、もうちょいできんねんけどな…”みたいな。でも善徳くんが「いや、それでええで。それが俺が欲しがってるもんなんよ」と言って、OKを出してくれるありがたさはあった。それが俺を気遣っての慰めじゃないのが分かったし。

──聴いていて、とてもピュアな歌だと感じました。

田澤:そうですね。“俺は、こう思われたい”と考えながら歌ったら、それはもう邪念なので。逆に、めちゃめちゃ本調子で、バリバリ歌える状態で録ってたら、そうなっていたかもしれない。結果として必死さというか、邪念のない純度の高い歌に落とし込んでくれたのは、さすがですね。

杉本:この曲、なんか全員上手いしね。

田澤:そうそう、不思議と。


──歌詞は、解散に向かっていく覚悟や決意表明だと感じましたが、田澤さんはどのように咀嚼し、歌っていらっしゃるのですか?

田澤:この間のツーマン2本をやって感じたことなんですけど、“燃やし尽くす”というのは、たぶん“Road to 武道館”ってことではなくて。やっぱり何にしても一発一発、一個一個、電球をショートさせていくことなのかなって。時間の話で言うと、導火線に火を点けたその先がゴールなのかもしらんけど、“いや、そうじゃないかも”と。ヴォーカリストとしてなのか、Waiveのヴォーカルとしてなのか分からないんですけど、自分にしっくりくる理解としては、常々燃やし尽くし続けるというか。

──人生の一瞬一瞬を?

田澤:そう、燃え尽き続けなあかんなって。確かに途中やけど、ダイナマイトに向かってバチバチバチっていう導火線ではなくて。最終地点はそうかもしれないけど、感覚としては、まさにジャケット写真のようにフィラメントがパンッ!と弾けるような。きっとこれを一発一発やっていくことが自分には向いていると思いました。あの2DAYSでは、ほんまにトップギアの上に入れることができましたから。ワンマンだったら、絶対にあんなの入れられへん。

──初っ端から、ペース配分が心配になるほど凄まじいテンションでしたよね。

田澤:そうなんですよ。だいたいいつも“最後まで持つように”って考えるんです。それはプロとして誰でも考えることで。

──クオリティ管理として必要ですよね。

田澤:だから、思いついたことに対して瞬発的に葛藤するわけですよ。“この後、歌えなくなるんだったら、やめたほうがいい”とか、勇気ある撤退みたいな。でも、そういうことを全く考えずに、ほんまに1曲ずつ、きちんと向き合ってできた気がする。それが良いか悪いか分からないですけど、何か見えました。新しいものが自分の中で生まれた気がする。だから2日目は、初日とは違って1曲目が「火花」じゃないセットリストを当初用意していたんですけど、初日が終わった時に「これええわ。2日目も「火花」からやらん? Waiveの1曲目やけどツーマンの真ん中、仕切り直してのスタートだから」って。やっぱりリリースしたことで、いろいろなものが動き出したなと感じましたね。

──杉本さんは、歌詞についてはいかがですか?

杉本:書いた時から、Waiveとか自分の心境が入っているのは言わずもがななタイプの歌詞だと思うんですけど、“眩しいものに惹かれるよね”みたいな気持ちがそもそも僕の中にはあって。武道館を意識せずにWaiveを続けていたとして、LINE CUBE SHIBUYA公演の時とか、その前の平成最後のZepp Tokyoの時みたいなやり方をすることも当然可能だった中で、あるいは活動をやめてしまうことも可能だった中で、それまでやってきたWaiveよりも発光しているところに向かっていかない限り、自分たちのテンションを上げることがたぶんもうできなかったんです。もちろんプロだから、何だってやろうと思えばできるんですよ。例えば、それに向かっての体力を作っていくみたいなことはできる。だけど、それを超えたことは逆にできないんですよ。だからこそ、“いやいや、それは無理でしょ”みたいな素人のようなことに挑まない限り、それが自分らにとって眩しいものかどうか分からなくもなってしまって。


──Waiveを続けて行く原動力として、圧倒的な眩しさが必要だったんですね。

杉本:音楽を続けてきた気持ちの成仏が、自分の中でどこにあったかを振り返ると、今は大阪ミューズという名前になった当時の心斎橋ミューズホールでライブができた段階で。僕の中では一度燃え尽きてしまっているんです。そこは自分が先輩方を観てきたステージで、“これだけお客さんの入ってるミューズでやりたいな”から僕はスタートしているから。既にゴールに到達していたことに気付かず、そこから先に誰も“ここがゴール!”と言ってくれなかったから“あれ? どこまで続くんやろ? もっと行ってみるか”という気持ちのまま、ゴールをとっくに過ぎているのに、ずっと走り続けてきたと思っていて。改めてゴールをどこかに置かない限りは、何もかも、もう眩しいかどうか分からなくなってしまっていたんです。

──なるほど。

杉本:例えば、さっき言った“◯◯みたいな雑誌には載らないぜ!”みたいなスタンスも、若気の至りだけど、それはそれでカッコいい。他人がやっていたとしても、僕はそういう奴が好きだから。バンドを始めた頃は“載りたい”からスタートしたはずだし、田澤くんがローディーをやっていたバンドの人が、雑誌『SHOXX』の白黒ページに広告を出して載っただけでも、「すげぇ!」と言っていたわけだから。それに憧れて始めたのに、自分たちが白黒ページに載り、次はカラーで載るようになり、そんな中で、“なんで今回は白黒でしか扱ってくれへんのやろ?”と思うようになってしまっていく。それも成長だし、そうやって人は変わっていくべきだから、飽きていくことを否定したいわけでは全くないし、むしろ素晴らしいことだと思ってるんです。だけどやっぱり、その都度、自分たちの一番燃焼できる部分を知らない限りは、ただの驕りになってしまう。“自分たちがこの目標に向かってやっているから、この現状に文句を言う”じゃないとダメなのに、“左手で戦っても勝てるわ”みたいな感覚でやっているのは、やっぱり違うんじゃないのかなって。

──はい。

杉本:そう考えた時に、僕は眩しさに惹かれてしまう、というのがあって。それは照明の話とか広さの話だけでは決してなくて。自分たちにとって、どういう人が何をしている場所なのか、誰が立ったステージが眩しいんだろうという話だと僕は思うので。やっぱり、この間のツーマンの時にそれが起きたのは、僕らのひとつ前に出ていたバンドが眩しかったんだと思うんですよね。メリーの場合、やっていることが“眩しい”という言葉で正しいのかどうか分からないですけど、僕には眩しく見えた。だから、やっぱりやらなければいけないことがあると思うし、それより俺たち自身が発光しないとダメで、それによってフィラメントがバンッ!と弾けるんだ、みたいなことを一個一個やる。それができない時もきっとあるけど、“やるぞ!”という気持ちの中でやっていくしか、もう俺らにできることないですよね。それが今回は“武道館ワンマンでもやろうぜ!”ってことだというだけの話なんじゃないのかな。

──シンプルな動機で、だからこそ強いですね。

杉本:ずっと同じことを繰り返しているんだけど、やっぱり事象ごとに違う“電球”と出会っていくから、その都度違う会場、違う人、違うバンド、違うスタッフ…本当にいろんな人と会っていくんですよね。絶対にWaiveに興味ないであろうタイプの人…例えば、“演歌聴きたい”と仮に思っている人であったとしても、“全然このジャンル好きじゃないのに、なんか今日はカッコいいって思ってしまったな”と思わせたいし、対バンなんてまさにそうだと思うので。“Waiveなんて昔から知ってて、別に好きじゃなかったけど、今日のWaiveちょっとカッコ良かったな”と言わせられるかどうかに賭けてる。それの繰り返しをしたいだけなんですよね、僕は。Waiveに限らず、もう人生、そう思っちゃってるかも。

──それはカッコ良いことだと思います。

杉本:簡単にはできないんですけどね、そんなに器用じゃないから。ほとんどの場合失敗するし、届かないけど、“それでもやろうぜ”という気持ちは持っておくしかないのかなと。

◆インタビュー【4】へ
◆インタビュー【2】へ戻る


■“みんなでやったもんな”と
■満足できる日を迎えたい


──杉本さんのこの想いは、田澤さんも含めて、Waiveの総意なんでしょうか?

田澤:うん。小細工をしたって結局バレるし、自分がやれることをやり抜くしかないですし。もう“燃え尽きるぜ!”みたいなところでしかないので。特に僕なんかは体を使うタイプだと思うから、きっとそこはこの先もそうだと思います。

──武道館ワンマンの日付が発表されるのはいつ頃なんですか?

杉本:この秋にエントリーして、目標としている辺りの日にちがそこで取れて決まれば、年内には発表になるんじゃないかな?

──7月上旬の現時点では次回ライブが発表されていませんが、この後ライブの予定はあるんですか?

杉本:しばらくはないんですけど、11月27日にMUCCとツーマンをします。

──それは楽しみです!

田澤:ライブのない期間は、曲をつくる時間にあてようよって。これまでの曲を再録する話も進んでいますし、進められることは形にしていきましょうよ、という時間ですかね。


──再録はいつ出るんですか?

杉本:進行具合からの予想になりますが、秋頃ですかね。何にせよ近いうちには発表していけると思います。

──「Waiveを武道館に連れて行ってくれる代表曲、ヒット曲をつくりたい」と杉本さんがお話しされているインタビュー記事を読みましたが。

杉本:「自分の作曲家としての代表曲が欲しい」というのは、いろんなところで言っていることなんですよ。ヒットソングを生んでないから、「お前の書いた代表曲って何やねん?」みたいな話になる。Waiveのことを知ってる人からは「いつか」だとか言ってもらえるけど、外に出て行けば、バンドを知らない現場の人もいますからね。代表曲って“いい曲かどうか”は問題じゃない。それは人それぞれの主観だから。やっぱり、ガラッと自分たちの状況を変える可能性を秘めた曲を作らないとな、というのはあるので、それは意識したいです。

──なるほど。

杉本:例としてLUNA SEAの「ROSIER」やX JAPANの「Rusty Nail」が適切なのかは分からないですけど。でもキャリアが長くあるからこそ、代表曲「いつか」を覆すことって、誰のイメージの中にもなかったと思うんですよ。「それよりもいい曲書こうよ」みたいな漠然とした言葉が出てきたり、「「いつか II」を生もうぜ」みたいな話は打ち合わせで出てくるけど、それが代表曲になるとは誰も思ってない、絶対に。“代表曲はどう考えてもこれでしょ”というのは、ライブで実演してきた回数によって生まれるところがあるだろうから。でも、それを覆す気持ちで書くしかないし、僕は代表曲が欲しい。

──たしかに、代表曲とは、数字である程度定義できるヒット曲とも違って、時を経て育まれていくものではありますよね。

杉本:「代表曲だ」と言えるものを生んだ人は、やっぱり数を書いてるんですよ。書くしかないなというのは、今思うことではあります。“代表曲をつくるんだ”ってことが目的としてハッキリしてなかったから、“曲を書く以外のこともやるべきだ”というのがあったけど、今は“やっぱり1曲でも多く書くしかないんじゃないのかな?”という気はしていますね。


──そのお考えに矛盾するようなリクエストなのですが、杉本さんと田澤さんお2人のトークが面白いので、例えば岡村靖幸さんと斉藤和義さんみたいに、ポッドキャストを始められるのはどうでしょう?

杉本:昨年末のツアーファイナルで「YouTubeをやるか?」みたいな話が出たこともあったし、やったほうがいいこともあると思うんですけど。これがけっこう難しいんだよな。

──差し出がましいお願いなのですが、番組があればぜひ聴きたいです。

杉本:岡村さんと斉藤さんはそれぞれが有名な方だから、“面白かったら広がる”みたいなことはあると思うんですよ。僕らの場合、面白いってことを知っている人がまず少ないから、そもそもそれを外に広げる手段がないとダメで。“これがおもろいよ”と広めてくれるファンを持っているならば、“いい曲だよ”もたぶん既に広まっているはずだと僕は思っている節がある。だから、ファンと僕たちの力でやれることには限界があって。とはいえ今、『USEN 推し活リクエスト』に協力してもらっているのは、限界があってもやりたいこと、やってもらうべきことはあると思うからなんです。だから、そういう企画もやりたくないわけじゃないけど、 もう少しギミックが僕はそこには必要な気がしていて。

──はい。

杉本:いい曲を書いても土台が出来上がってない限り、その曲は売れないという代表曲の話と同じで、「ポッドキャストをみんなで広めてくれ」と言っても、結局世間的には「誰やねん?」ってなるから。「あ、これのことね」となる状況をつくらないとダメで。そう考えると、僕はポッドキャストよりラジオなのかなと。聴きに行くものより、耳に入ってくるもの。ただ、いろいろ考えてはみるものの、優先順位として、他のことをやったほうがいいのかなとなってしまいますね。

田澤:たぶん、時間が5年とかあったらやれるんですよね。じわじわ広がっていくでしょうし、“これもやってみよう”という企画のひとつとして。

──短期ですもんね。すみません、浅知恵で。

杉本:でも、そう言っていただくのもうれしいし、言ってもらうことをやるべきなんだとは思うんです。自分らでブレーキを踏んでるという自覚もあるので。みんなでひとつになって、知ってくれた人全員がチームだと思いながらやりたいという気持ちはありますし、それぞれが“こうなんじゃないのか”ということをやってほしいというのもある。自分たちの力だけでは届かないことだという自覚があるからなんだけど、…それだけじゃない気がするんだよな。たとえ前日にWaiveを知って“武道館で明日解散なん。 行っとくか”みたいな人であったとしても、“前日に知った私が来てるぐらいなんだから”と思えるような、みんなでやりきったと思える1日をつくりたい。武道館に人が入っていようがいまいが、“みんなでやったもんな”と満足できる日を迎えたいですね。

取材・文◎大前多恵
撮影◎旭 里奈(ライブ)

■新曲「火花」

2024年6月27日(木)配信開始
配信リンク:https://linkco.re/AgBtaDeD



■対バンシリーズ第三弾<VS GIGS「MUCC WAIVE ILLUSION '24」>

11月27日(水) 東京・渋谷Spotify O-EAST
出演:Waive vs MUCC
▼チケット
¥8,800 (税込・ドリンク代別)
※オールスタンディング
【各オフィシャルファンクラブ先行受付】
受付期間:7/16(火)18:00〜7/31(水)23:59
・Waiveオフィシャルサイト:http://www.waivewaive.com
・MUCCオフィシャルサイト:https://55-69.com


■Waive解散ライブ

2025年末頃予定
日本武道館単独公演


関連リンク

◆Waive オフィシャルサイト
◆Waive オフィシャルTwitter
◆Waive オフィシャルWEBショップ
◆FC“WAVE” オフィシャルサイト
◆Waive 再結成〜解散コメントページ

◆インタビュー【3】へ戻る
◆インタビュー【1】へ戻る