江戸前で語られることも多く、東京名物的なうなぎ。しかし、埼玉、千葉、神奈川さらに山梨など関東近郊にも名店は多い。東京の喧騒を離れ、ちょいと贅沢な日帰り旅で堪能したい神奈川県の名店をご紹介します。

江戸前で語られることも多く、東京名物的なうなぎ。しかし、埼玉、千葉、神奈川さらに山梨など関東近郊にも名店は多い。東京の喧騒を離れ、ちょいと贅沢な日帰り旅で堪能したい神奈川県の名店をご紹介します。

編集・武内オススメ!『柏又(かしまた)』 @小田原

備長炭で丹念に焼くキレのよい貫禄の味

小田原らしい趣きある佇まい。それもそのはず、築100年以上の木造建築だ。創業は明治の頃、そのルーツは江戸時代ともいわれる、ここ『柏又』。うなぎは静岡県産の大きめサイズを厳選。焼きは備長炭で丹念に、タレは脈々と受け継がれたものを継ぎ足しながら使い続けている。

松重(肝吸い・お新香付き) 6200円

『柏又(かしまた)』松重(肝吸い・お新香付き) 6200円 昔から静岡県産うなぎを使う。焼き目が香ばしく、やや辛めのタレが輪郭を際立たせる

お重のフタを開けると、ふっくら焼き上った大ぶり肉厚のうなぎが堂々横たわり、老舗の貫禄十分だ。頬張れば身はほろりとほどけ、やさしい食感。驚いたのは、あっさりとして後口のキレがいいこと。

「ウチのうなぎは、昔から二日酔いでも食べられると言われているんです」とは、店長の和田さん。甘みを抑えたキリッと辛口のタレが心地よく、飽きずにワシワシと箸が進む。しか〜し!二日酔いではもったいないので、万全の体調でとくと堪能あれ。

『柏又(かしまた)』

[住所]神奈川県小田原市本町1-9-35
[電話]0465-22-0267
[営業時間]11時半〜14時、16時半〜19時
[休日]火・水、年末年始
[交通]JR東海道線ほか小田原駅東口から約15分

編集・武内オススメ!『うなぎ料理 しま村 高田本店』 @高田

卸問屋ゆえの素材に職人の仕事が光る

洗練された空間だが、おもてなしは温かく、家族連れから遠方のファンまで訪れる名店。人気なのは、卸問屋直営ならではの質のよさと誠実な仕事にある。

天然うなぎは四国・旧吉野川産にこだわり、養殖は愛知を中心に全国から。養殖の多くは大豆イソフラボンを餌にしたもので、島村さん曰く「アミノ酸豊富だから身質がいい」。うな重を食べれば納得だ。

養殖鰻 お重 松 4950円

『うなぎ料理 しま村 高田本店』養殖鰻 お重 松 4950円 岡持ちで本漆のお重が運ばれてくる。蒸しは20分ほど。米は新潟産、甘口ダレでご飯が進む

身はふわとろで、甘めのタレとともにまろやかな旨みが充満!脂のりがいいのにクドくない。この脂の軽やかさは熟練職人の技の賜物だろう。個体ごとに身の性質を見極め、蒸し時間やタレの加減を変えながら炭火で焼き上げる。天然物にもその技が宿ることは言うまでもなく。適度な弾力の身に品のいい旨み、皮の香りにニヤリ。懐に余裕があれば食べ比べてみてほしい。

『うなぎ料理 しま村 高田本店』

[住所]神奈川県横浜市港北区高田東3-4-11
[電話]045-549-0880
[営業時間]11時〜15時(14時LO)、17時〜21時半(20時半LO)、土・日・祝11時〜21時半(20時半LO)
[休日]水、第2・3火 ※7、8月は水のみ
[交通]地下鉄グリーンライン高田駅2番出口から徒歩1分

ライター・肥田木オススメ!『うなぎ 安川』 @新丸子

夫妻で切り盛りする老舗うなぎ屋は町の宝!

地元で長年愛されるうなぎ屋は町の宝だ。この店もそう。上質な国産うなぎがたっぷり1尾半でこの価格。俄然うれしくなる。活きで届くうなぎは浜名湖産が中心。店主の飯野さんがひとりで仕込むため提供数に限りがあり、予約だけで完売する日もあるとか。

うな重 亀 4180円

『うなぎ 安川』うな重 亀 4180円 ふっくらとろける食感は小骨も丁寧に取り除く手間を惜しまない仕事から

「うなぎが旨いのは当然、タレと米も大事」との言葉通り、こだわりのタレは3年熟成みりんとザラメを使ったやさしい甘さ。3度漬けし、1回目で色を、2回目で味を、最後に照りよく仕上げている。米は山形の一等米「つや姫」。適度な粘りは職人技でふっくら焼いたうなぎと相性抜群だ。

相性と言えば焼き上がりピッタリにお重や汁物を準備する妻の恵美子さんとの阿吽の呼吸も見事。結婚33年の絆がなせる技、素敵です。

『うなぎ 安川』

[住所]神奈川県川崎市中原区新丸子町648-7
[電話]044-733-5561
[営業時間]11時〜14時、17時〜21時(20時半LO)※土用の丑の日はテイクアウトのみ(数日前に受付終了)
[休日]水・木
[交通]東急東横線新丸子駅西口から徒歩2分

撮影/西崎進也(柏又)、貝塚隆(安川、しま村)、取材/飯田かおる(柏又、しま村)、肥田木奈々(安川)

2024年8月号

※2024年8月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。