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ポルシェと共同開発したPPEプラットフォーム

アウディは、新しいQ6 e-トロンの仕上がりに自信を抱いているはず。ポルシェと共同開発した、最新のPPEプラットフォームを採用する初の量産モデルだからだ。

【画像】これまでと印象が「まったく」違う! アウディQ6 e-トロン 競合サイズの電動SUVは? 全147枚

このPPEは、バッテリーEV専用。現状ではプレミアム・ブランド向けで、グループ内のフォルクスワーゲンやシュコダなどで利用される計画はないという。


アウディQ6 e-トロン・クワトロ(欧州仕様)

既存のMEBプラットフォームより長く、広い車内空間に対応。動的能力の高いモデルが想定された点も特徴といえる。

Q6 e-トロンの開発期間は6年。中国の新興メーカーは、2年前後で新モデルを販売へこぎつける時代だと考えると、かなりの時間が割かれたといえる。

属するカテゴリーは、電動のプレミアム中型SUV。ポルシェ・マカン・エレクトリックとともに、ほぼ独占状態にある。キアEV6やヒョンデ・アイオニック5も競合といえるが、上級感が足りていない。BMW iX3やジャガーIペイスは新鮮味が足りない。

SQ6 e-トロンという、高性能版も発売される。ただし内燃エンジン時代と異なり、スポーツシートが組まれるトリムグレードの1つなように筆者は感じた。最高出力は517psへ向上するものの、2基の駆動用モーターはQ6 e-トロンと同じだからだ。

英国では、アダプティブ・エアサスペンションがSQ6の標準になる。だが、市場によっては異なるらしい。

ツインモーターで388ps アウディらしい見た目

通常のQ6 e-トロンに積まれる駆動用モーターは、フロント側が非同期で、リアが永久磁石同期のユニット。どちらもグループ内で開発されており、システム総合388psの最高出力を発揮する。

ニッケル・マンガン・コバルトを正極材に用いた100kWhの駆動用バッテリーは、15本の角柱セルで構成。エネルギー密度を最大化させている。


アウディQ6 e-トロン・クワトロ(欧州仕様)

ちなみに、効率を高めるため、発熱量の小さいシリコンカーバイド半導体を広範囲に利用。モーターの配線も、正方形の断面とすることで伝導率を高めたという。

スタイリングは、確かにアウディ。前端にはシングルフレーム・グリルが据えられ、スリムなデイライトが高い位置に並ぶ。その下にあるのが、メインのヘッドライトだ。

ボディサイドのフェンダーラインは強調されつつ、腰高感が抑えられ、駆動用バッテリーの薄さが活きている。充電ポートが両サイドにあり、急速充電へ対応するのは一方のみながら、便利に感じる人は多いはず。

インテリアは、触れる部分に上質な素材が用いられ、ソリッドで高級感が漂う。ヘッドアップ・ディスプレイはクラス最高水準といえ、速度が読みやすく、リアルタイムでカーナビのガイドも表示される。もちろん、メーター用モニターも備わる。

このヘッドアップ・ディスプレイに投影されるスピードの数字は、アクセルペダルを深く踏むほど大きくなる。高速道路の合流車線で加速し始めると、笑ってしまうほど巨大になった。

ヘアピンで実感できる強力なリアモニター

運転席側のドアには、ヘッドライトやフォグライト、ドアミラー調整のボタンが並ぶ。クルーズコントロールのレバーは、ステアリングコラムから伸びる。操作しやすいレイアウトだ。ただし、エアコンは14.5インチのタッチモニターに触れることになる。

インフォテインメント・システムは、アップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応。メニュー構造はわかりやすく、車線維持支援や速度警告などの機能は、タッチモニターを数回タップすればオフにできる。


アウディQ6 e-トロン・クワトロ(欧州仕様)

助手席側にも、10.9インチのタッチモニターを追加可能。フォルクスワーゲン・グループで共有される、プラスティック製のシフトセレクターが少し浮いて見えた。

車内空間は、このクラスの平均。薄い駆動用バッテリーのおかげで、フロアの位置は内燃エンジン・モデルと大差ない。荷室の容量は526Lで、床下には充電ケーブルをしまうのに丁度いい空間がある。フロント側にも、それと同等の収納が用意されている。

それでは、出発してみよう。パワーの発生は線形的で予想しやすい。388psの数字通り速く、一般的なSUVユーザーが力不足を感じることはないだろう。

リアモーターの方が、フロント側よりパワフル。ダイナミック・モード時は、積極的にトルクがリアへ割り当てられる。低速のヘアピンカーブで、その事実を体感できる。

0-100km/h加速は、SQ6 e-トロンの方が1.6秒も鋭い。517psが開放されるのはローンチコントロール時のみで、通常は489psへ制限されるが。

極めてシームレスな乗り心地 航続距離は613km

回生ブレーキは、ステアリングホイール裏のパドルで数段階から任意に強さを選べ、周囲の交通状況で自動的に変化するオート・モードもある。シフトセレクターをBにすれば、ワンペダル・ドライブにもなる。

ブレーキペダルの感触は、安定し一定。予想より効きが弱く、踏み増しするような場面はなかった。もちろん車内は静か。開発時に注力したことの1つだそうで、駆動用モーターやタイヤからのノイズは最小限といえる。


アウディQ6 e-トロン・クワトロ(欧州仕様)

試乗車のQ6 e-トロンにはエアサスペンションが備わったが、荒れた路面による動揺は皆無。車重がかさむ電動SUVにありがちな、不安定さは排除されている。アスファルトの剥がれた穴を通過しても、平然としていた。

アルミホイールは21インチと巨大ながら、乗り心地は極めてシームレス。ドライブモードで重み付けが変化するステアリングホイールは、適度に軽く操縦性も好ましい。感触が豊かとはいえないにしろ。

今回の試乗での電費は、高速道路や一般道を複合的に走らせて、Q6 e-トロンで約4.8km/kWh。さほど高効率とはいえないだろう。カタログ上の航続距離は613kmだ。

急速充電能力は、最大270kWまで。電動パワートレインは電圧800Vで制御され、最短21分で駆動用バッテリーを残量10%から80%へ補充できる。

VWグループ内の従来のEVとはまったく異なる

新しいプラットフォームを採用した、アウディQ6 e-トロン。これまでのフォルクスワーゲン・グループのバッテリーEVとは、まったく異なる印象を受けた。

インテリアの技術水準は高く、実際に押せるハードボタンも有効。運転体験は素晴らしく、現実の航続距離がカタログ値に近ければ、クラス最高の1択になるといっていい。少なくとも、マカン・エレクトリックに劣らない訴求力がある。


アウディQ6 e-トロン・クワトロ(欧州仕様)

SQ6 e-トロンは、もう少し差別化されても良かった。追って登場する、600馬力以上と噂されるRS Q6 e-トロンには期待がかかる。マカン・エレクトリック・ターボとパワートレインを共有し、専用のドライブモードとボディキットが与えられるはずだ。

◯:高度なインフォテインメント・システム エアサスペンションの乗り心地
△:ベーシックなQ6 e-トロンでも高価 SQ6にはもっと違いが欲しい

アウディQ6 e-トロン・クワトロ(欧州仕様)のスペック

英国価格:約6万7000ポンド(約1353万円/予想)
全長:4771mm
全幅:1939mm
全高:1648mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:5.9秒
航続距離:613km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2325kg
パワートレイン:非同期モーター(前)+永久磁石同期モーター(後)
駆動用バッテリー:100kWh(グロス)
急速充電能力:270kW
最高出力:388ps
最大トルク:59.0kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)